欧州商工会議所、持続可能な成長と産業競争力確保に向けEUへ提言

(EU)

ブリュッセル発

2019年10月15日

欧州商工会議所(ユーロチェンバース)は10月8日、同会議所が目指す持続可能な成長と欧州の産業競争力の維持に関する次期欧州委員会および欧州議会向けの提言を公表した。

FTA利用率向上のためにEUと企業の政策対話を提言

同提言は、欧州商工会議所が10月7~8日、会員であるEU加盟国の商工会議所や地方組織の代表を集めて、ローマで開催した経済フォーラムでの議論をとりまとめたもの。

提言は次の6項目から成る。

  1. 持続可能な脱炭素経済への移行に必要な、中小企業への財政支援
  2. 単一市場におけるビジネス障壁の削減
  3. デジタル化に向けた支援
  4. EU域外へのビジネス機会の創出
  5. 社会経済にダメージを与える技能ミスマッチへの取り組み
  6. 起業家精神の支援

この中で、1.の「財政支援」(2019年10月1記事参照)、2.の「ビジネス障壁の削減(行政手続き効率化)」(2019年9月13日記事参照)、3.の「デジタル化支援」(2019年7月22日記事参照)、5.の「技能ミスマッチ」解消(2019年6月20日記事参照)については、既に同会議所や他の経済・産業団体から指摘が行われてきた。今回、4.「EU域外へのビジネス機会の創出」について、同会議所としての新たな提案を行った。

具体的には、EUが域外の国・地域と締結する自由貿易協定(FTA)のルールについて、EUの中小企業の競争力向上のためにはシンプルで分かりやすいものであるべきと指摘し、交渉時の内容と各加盟国の運用の整合性を高める必要性が増しているとした。このほか、FTAを活用しようとする中小企業に対する効果的な支援体制の拡充や、FTAの活用を促進するための欧州ワイドでの取り組みも必要とした。

また、欧州ブランドの強化のため、欧州委など政策当局と、EU域内および第三国に所在するEU企業関係者との定期的な対話の機会が必要だとしている。

同会議所の開催した今回の経済フォーラムには、EU加盟国の各商工会議所代表ら約300人が参加したが、その傘下には中小企業を中心に約2,000万社、合計1億2,000万超の従業員が属する巨大ネットワークを形成する。なお、10月9日に開かれた同会議所総会では、クリストフ・ライトル会頭の続投(2018年1月の就任以降、2期目)が決定した。

(前田篤穂)

(EU)

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