欧州中小企業連合会、加盟国のデジタル化支援策の事例集公表

(EU)

ブリュッセル発

2019年07月22日

欧州中小企業連合会(SMEunited)は7月19日、傘下にあるEU加盟国の中小企業団体による会員企業向けデジタル化支援策のベスト・プラクティス概要をまとめ、事例集PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)として公開した。同連合会は各団体の支援策を総括して、(1)技能開発、(2)財務支援、(3)人材育成、(4)インフラ整備、(5)技術標準化の5項目を中小企業のデジタル化を促す環境整備のための中核と位置付け、知識・技能共有のための「デジタル情報センター」などの活用も有効と指摘している。

さまざまな施策で中小企業デジタル化の底上げ狙う

今回の公開に向けてコメントを寄せた欧州委員会のマリヤ・ガブリエル委員(デジタル経済社会担当)は、EU域内の中小企業の高度デジタル化の現状について、デンマークやオランダのように対応企業の割合が40%に達した国がある半面、全体では依然として20%程度にとどまると指摘。「EUは『デジタル大陸』になり切れておらず、ロンドン、パリ、ベルリン、ストックホルムなどの大型クラスターがホット・スポットのように点在する『デジタル多島海』の状態」と分析し、全体的な底上げが必要との認識を示した。

事例集では、EU加盟国のうち14カ国の16団体と、4つの欧州横断の関連団体からベストプラクティスが報告されている。例えば、ドイツ手工業中央連盟(ZDH)は各企業のデジタル化のレベルに対応した技能習得を支援する「手工業IT開発センター」の活用を提唱すると同時に、サイバー攻撃に備えて、ドイツ連邦情報セキュリティー庁(BSI)による中小企業支援も重視している。「手工業IT開発センター」はドイツ連邦経済・エネルギー省(BMWi)が設立した国の機関で、地方にもネットワークを持ち、中小企業の要望に応じてIT専門家を派遣し、実地で指導・技術提供を行う。また、訪問した中小企業の生産プロセスに自動化やデジタル技術導入による改善の余地があれば、そうした提案も積極的に行う。ZDHは、こうした個別に取得した技能・情報の流出対策として、BSIと連携して中小企業へのセキュリティー技術の指導・教育も行い、「攻め」と「守り」の両面からの支援に力を入れている点が特徴的だ。

また、オランダ中小企業協会(MKB)は「データ経済」の重要性に着目。データ解析などの専門教育機関と提携して、中小企業がビジネスを通じて収集したビッグデータを適切に処理・活用するノウハウの確立を目指す。マルタ中小企業商工会議所(GRTU)はeコマース導入が遅れている中小企業が電子商取引システムを構築する場合にEU基金などを活用し、プロジェクト資金の半額相当(上限:5,000ユーロ)を供与する、GRTUとマルタ政府による共同支援制度を整備したという。

(前田篤穂)

(EU)

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