不法移民対策の全体評価会合を開催、メキシコ側は好結果を強調
(メキシコ、米国)
メキシコ発
2019年09月13日
メキシコのマルセロ・エブラル外相は9月10日、米国ワシントンにおいてペンス米副大統領およびマイク・ポンペオ国務長官と会談し、不法移民問題について協議した。これまでに、6月7日に両国間で不法移民対策に関する具体策で合意し(2019年6月10日記事参照)、7月21日にはポンぺオ長官がメキシコを訪問して同対策への中間評価が行われており(2019年7月23日記事参照)、今回が効果測定としての位置付けとなった。
会談においてエブラル外相は、トランプ米大統領がメキシコの不法移民対策の不備を理由に、全メキシコ産品に追加関税を課す考えを発表した2019年5月から、8月までの期間にグアテマラ国境への治安部隊派遣などの効果で、米国への不法入国者数が56%減少したことを強調した。なお、実際の不法入国者数を捕捉することは不可能だが、米国税関国境警備局(CBP)が国境地帯で検挙した不法入国者をみると、5~8月に55.6%減少しており(図参照)、外相の発言はこの検挙者数の減少を指したものだとみられる。
このほか、メキシコ有力テレビ局テレビサのインタビューにおいて、マルタ・バルセナ駐米メキシコ大使は「米国によるメキシコ産品への追加関税措置については、今回の会談のテーマとならなかった」と述べたが、エブラル外相は会談後の記者会見で「両国の対立危機は日々薄くなっており、米国によるメキシコへの追加関税措置発動の可能性は低い」と述べた。
他方、本会談では米国からメキシコへ不法輸入される武器類に関しても協議され、武器流入に歯止めをかけるため、両国で対策を講じることに合意した。
「安全な第三国」への指定をあらためて拒否
2国間会議前日の9月9日、CBPがメキシコを「安全な第三国」に指定すること示唆した発表を受け、エブラル外相は自身のツイッターで、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領やメキシコ議会はそれを断固拒否することをあらためて公表した。「安全な第三国」とは、難民認定申請手続きを安全に行うことができる、難民の出身国と受け入れ希望国(この場合は米国)以外の第三国のこと。メキシコが「安全な第三国」に指定されると、米国への移住を目指す中米など諸外国の希望者がまずメキシコに入国し、メキシコにおいて米国への難民認定申請を行うことになる。7月26日にグアテマラが米国と「安全な第三国」協定に署名をしたが(2019年7月30日記事参照)、メキシコは当初からの姿勢を崩していない。
(志賀大祐)
(メキシコ、米国)
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