ポンペオ米国務長官、メキシコの不法移民対策の進展を評価

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2019年07月23日

メキシコのマルセロ・エブラル外相は7月21日、メキシコ市で米国のマイク・ポンペオ国務長官と会談し、移民問題を中心に2国間の課題について話し合った。トランプ米大統領が5月末にメキシコの不法移民対策の不備を理由に、全メキシコ産品に追加関税を課す考えを発表した(2019年5月31日記事参照)後、両国政府間で6月7日に合意した不法移民対策は、合意後45日で実効性が中間評価され、必要に応じて追加的な対策が検討されることになっていた(2019年6月10日記事参照)。今回の会合は、中間評価が最大の目的だった。

メキシコ外務省の7月21日付プレスリリースによると、ポンペオ長官はメキシコの不法移民対策の重要な進展を評価した。メキシコ政府は6月7日以降、新設した国家警備隊(2019年3月15日記事参照)を中心に2万5,000人を全国に展開して不法移民を摘発し、必要に応じて強制送還している。不法移民が移動に用いることが多い長距離バスのチケットの購入に合法的な滞在許可の提示を義務付けるようになり、不法移民を米国に密入国させる違法ビジネスを展開する犯罪組織の取り締まりも強化している。

「安全な第三国」の交渉は不要とメキシコ外相

エブラル外相は、メキシコの対策が十分進展しているため、メキシコを米国への移民の「安全な第三国」に認定する交渉は現時点で一切必要ない、とポンペオ長官に指摘した。その上で、今後45日間、現在実施している不法移民対策をメキシコが継続することを約束した。

移民問題以外では、米国からの違法な武器輸入に対し、サンディエゴ-ティファナ、エルパソ-シウダ・フアレス、ラレド-ヌエボラレド、マッカレン-レイノサ、ブラウンズビル-マタモロスの重要な5カ所の米メキシコ国境税関で摘発するオペレーションをメキシコ政府と協力して実施することを米国政府に要請するとともに、2018年まで実施されていたメキシコ移民の本国送還プログラム(PRIM)への米国の支援(注)を再開するよう求めた。通商問題では、メキシコ産トマトに5月から課されている17.5%の暫定アンチダンピング(AD)税(2019年5月9日記事参照)がメキシコの100万人以上の雇用に悪影響を及ぼしていることをエブラル外相が指摘し、早期解決を促した。

(注)メキシコに送還される移民を、陸路ではなく米国政府の負担により空路でメキシコ市に輸送する。メキシコ市から移民の郷里まではメキシコ政府がバスなどを手配し、さらに食糧や就職支援などをメキシコ政府が行う。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国)

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