米国・メキシコが不法移民対策で合意、米国は追加関税導入を無期限停止

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2019年06月10日

米国とメキシコ両国政府の不法移民対策に関する協議が6月5日に開始され、6月7日に合意に達した。トランプ米大統領が欧州訪問からの帰国後に、合意に向けて進展したとみられる。マイク・ポンペオ国務長官のプレス・ステートメントが7日に発表され、5月30日にトランプ大統領が発表した6月10日から予定されていたメキシコからの全輸入品目への5%の関税賦課は(2019年5月31日記事参照)、無期限で停止されることとなった。米国務省とメキシコ外務省の共同宣言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに記載された具体的な不法移民対策は次のとおり。

  1. メキシコ政府は、国内に流入する不法移民数を抑制するため、メキシコ全土へ国家警備隊を展開する。また、不法な移動や往来、不正な金融および輸送を行う組織には断固とした行動をとる。両国政府は国境保守と安全確保のため、情報共有と調和ある行動で協力関係を強化する。
  2. 米国政府は、メキシコから越境して亡命申請する移民を速やかにメキシコに送還し、亡命申請を裁定する。メキシコ政府は人道的理由から国際的な義務に沿い、それらの人々の裁定待機期間のメキシコ入国を認め、就業機会、健康管理、教育を提供する。他方、米国政府は亡命申請の裁定を速やかに実施する。
  3. 両国政府は、講じる措置が期待する効果を見せない場合、追加の行動を講じる。必要に応じて、両国政府は不正移民流入および亡命申請への追加的対策について協議を続け、90日以内に完了、発表する。
  4. 両国政府は、メキシコ南部の開発促進と経済成長が中米の繁栄、グッドガバナンスおよび治安とつながっていることを認識する。これらの目的を達成するために、メキシコ政府がエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス政府と共同で開始した包括的開発計画を、両国政府は歓迎する。中米がより繁栄し、安全になるために国際的なパートナーなどと協働してリーダーシップを果たしていく。

米国産農産品の購入については両国間の認識に隔たり

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は6月8日、「メキシコは中米移民の人権を侵すことは絶対にしない。中米3カ国との開発計画をすぐに実行に移す」と発表した。なお、トランプ大統領は、「メキシコは、米国産の農産物を大量に購入することに合意した」と6月8日にツイッターで発信したものの、メキシコ政府はこれについて肯定を避けた(「エル・フィナンシエロ」紙6月8日)。

(注)上述の国家警備隊は、6月6日午前の時点で6,000人がグアテマラ国境へ展開が明らかにされていた。

(稲葉公彦)

(メキシコ、米国)

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