欧州委、1年経過した対米通商協議の進捗を報告

(EU、米国)

ブリュッセル発

2019年07月26日

欧州委員会は7月25日、1年前のEU・米国首脳会談(2018年7月26日記事参照)で通商関係強化を掲げる共同声明を発表したことを念頭に、その後の通商協議について進捗状況の報告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を明らかにした。欧州委は、液化天然ガス(LNG)と大豆などの米国からの輸入拡大に向けたEU側の取り組みをアピールしつつ、EU・米国による次世代技術など戦略分野での国際基準形成の重要性も指摘。WTO改革では、EUと米国に日本を加えた三極主導で取り組む姿勢を示した。

対米通商摩擦収束の「落としどころ」を探るEU

両首脳合意に基づき、欧州委のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)と米国通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表を座長として、上級作業グループを立ち上げ、共同声明の具体化に向けて協議を進めている。欧州委のジャン=クロード・ユンケル委員長は「通商における米国との互恵(ウィンウィン)関係の構築を目指す」としており、LNGと大豆(2018年9月21日記事参照)の事例を取り上げ、米国からの輸入拡大に向けたEU側の取り組みを強調した。

欧州委の発表によると、LNGについては、EUの輸入が急拡大(4.7倍)し、米国のLNG総輸出の約3分の1をEU向けが占めている。大豆では、2018年7月から6月までの約1年で、EUの米国からの輸入は倍増、今や米国がEUにとって最大の大豆供給国になったという。欧州委が1月29日に米国産大豆をバイオ燃料として認定(2019年1月30日記事参照)したことで、EUでのさらなる市場拡大が期待できるとしている。

また、4月15日にはEU理事会が対米通商交渉権限(マンデート)の欧州委への付与を承認(2019年4月16日記事参照)しており、非関税障壁撤廃に向けた基準認証の適合性評価などについての協議も始まっている。国際基準形成に向けた取り組みでも、EUは3Dプリンティングやロボティクス、コネクテッド・カーなどの戦略分野での協力を米国に呼び掛けている。

欧州委は、EU原産の鉄鋼・アルミニウムに対する米国での追加関税措置の撤回に向けて働き掛けを続けるとしており、これが実現できれば、EUとしても米国に対する報復関税(2018年6月21日記事参照)を見直す方針だとしている。

このほか、EUと米国は不公正で市場歪曲(わいきょく)につながる貿易慣行への対策でも協力しており、日本とも連携して、産業補助金や国営企業をめぐるWTO加盟国の透明性向上と規律強化のための共同提案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を行ったことにも言及、WTO改革には、EUと米国に日本を加えた三極主導で取り組む姿勢を打ち出している。

(前田篤穂)

(EU、米国)

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