カナダ議会、セーフガード措置の2年間再発動禁止を凍結する法案が成立

(カナダ)

米州課

2019年07月02日

カナダ上院は6月20日、関税法および国際貿易裁判所法の一部を修正する法案(C-101号法案)を可決外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、6月21日にカナダ総督の裁可を受けて法律は成立した。本法案は、カナダの鉄鋼市場の安定化や、カナダの鉄鋼労働者や生産者を保護するための政策執行に柔軟性を与える措置として、財務省が6月3日に提出した。WTOのセーフガードに関する協定第7条5~6項に基づき、カナダの関税法では、適用期間が180日を超えるセーフガード措置を発動後には、対象の産品に対し、最低2年間の再発動を禁止しているが〔関税法第55条(5)~(6)〕、修正法はこれらの条項を2年間凍結し、2年後に復活させるものだ。

下院では6月19日に第3読会が開かれて採決を行い、賛成256票、反対36票の圧倒的多数で可決した。また、上院では6月20日に第1読会から第3読会まで開かれ、6月22日からの夏季休会前の即日採決・可決となった。

鉄鋼製品の輸入急増に備え

米国政府の鉄鋼・アルミニウムに対する追加関税賦課決定を受け(2018年6月1日記事参照)、カナダへの同品目の輸入増が懸念されたところ、カナダ国境サービス庁(CBSA)は2018年10月25日から、厚板、コンクリート補強鋼材、エネルギー用鋼管、熱延板、先塗装鋼材、ステンレス鋼線、線材の7種類の鉄鋼製品に対し、割当枠超過分に25%の追加関税を課した。しかし、カナダ国際貿易裁判所(CITT)が正式発動の是非について調査を行った結果、厚板とステンレス鋼線の2種類についてのみ国内産業への重大損害の恐れを認めたため、残り5種類への暫定セーフガード措置は4月29日で終了した(2019年5月16日記事参照)。暫定セーフガード措置の発動期間は180日を超えていたため、関税法では2021年4月末までの再発動は禁止されていたが、今回の法改正により、WTO協定に不整合となり得るものの、それより前の再発動が可能となる。

ジャスティン・トルドー首相は、上院が法案を可決した6月20日に米国ワシントンでトランプ大統領と首脳会談を行ったが(2019年6月21日記事参照)、首脳会談前の共同記者会見で、トルドー首相が「(米国による)鉄鋼・アルミへの追加関税撤廃に満足している」と述べたのに対し、トランプ大統領は「特定の製品の(カナダでの)積み替えが確認された場合には、トルドー首相に電話をかけ、トルドー首相が対処することを確信している」と発言していた。今後、北米自由貿易協定(NAFTA)域外からカナダへの鉄鋼製品の輸入が急増した場合には、国内産業の保護や米国向けの積み替えを防ぐために、カナダ政府はセーフガード措置の再発動を検討するものとみられる。

(中溝丘)

(カナダ)

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