カナダ、2種類の鉄鋼製品に対するセーフガードの発動を正式決定

(カナダ)

米州課、トロント発

2019年05月16日

カナダ国境サービス庁(CBSA)は、5月13日から厚板とステンレス鋼線に対するセーフガード措置を正式発動外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますすることを5月10日に発表した。米国政府の鉄鋼・アルミニウムに対する追加関税賦課決定を受け(2018年6月1日記事参照)、CBSAは2018年10月25日から厚板、コンクリート補強鋼材、エネルギー用鋼管、熱延板、先塗装鋼材、ステンレス鋼線、線材の7種類の鉄鋼製品に対し、割当枠超過分に25%の追加関税を課した。その後、カナダ国際貿易裁判所(CITT)が正式発動の是非について調査を行った結果、2019年4月4日に、厚板とステンレス鋼線の2種類については輸入の増加により国内産業に重大損害の恐れが生じているとして、セーフガードの正式発動を勧告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。残り5種類への暫定セーフガード措置は4月29日で終了しており、カナダ政府はセーフガード以外の保護措置を検討するために、鉄鋼業界や労働者を交えた作業部会を開催している。

セーフガード措置は2021年10月24日まで実施され、10万トンの割当量を超える厚板の輸入に課される1年目のセーフガード関税は20%、2,800トンの割当量を超えるステンレス鋼線の輸入に課される1年目のセーフガード関税は25%となっている(表参照)。

表 厚板とステンレス鋼線に係る輸入割当量とセーフガード関税

なお、チリ、コロンビア、メキシコなど、カナダとの自由貿易協定(FTA)締結国や、報復関税をかけている米国、WTOセーフガード協定第9条(注)の条件を満たす一般特恵関税制度(General Preferential Tariff)対象国からの輸入は、適用除外としている。

今回のセーフガードの発動について、カナダ鉄鋼生産者協会(CPSA)やカナダ鉄鋼労組(USWC)は、米国の鉄鋼製品への追加関税賦課により、米国市場から締め出された外国産鉄鋼製品がカナダに流入しており、残りの5種類の鉄鋼製品についても同様のセーフガード措置を取らないと、米国はカナダ産鉄鋼製品への関税賦課を撤廃しないだろう、と指摘した(CBCニュース5月10日)。なお、カナダのクリスティア・フリーランド外相は5月15日にワシントンを訪問し、ライトハイザー米国通商代表部(USTR)代表と鉄鋼関税の撤廃をめぐり協議を行っている。

(注)WTOセーフガード協定第9条は、「開発途上加盟国を原産地とする当該産品の輸入の割合が当該産品の総輸入量の3%を超えない場合には、当該開発途上加盟国を原産地とする当該産品について(セーフガード措置が)取られてはならない」「ただし、3%を超えない輸入の割合を有する複数の開発途上加盟国からの輸入の割合の合計が当該産品の総輸入量の9%以下であることを条件とする」と規定している。

(中溝丘、酒井拓司)

(カナダ)

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