ロシア政府、自動車メーカー5社による特別投資契約申請を採択

(ロシア、フランス、ドイツ、スウェーデン)

欧州ロシアCIS課

2019年06月24日

ロシアでは、輸入代替を目的として2016年に導入された優遇制度「特別投資契約(SPIC)」に、外資系を含む自動車メーカーの申請が相次いでいる。産業商務省は6月20日、SPICに関する省庁間委員会会合(注1)で、フォルクスワーゲン(VW)、プジョー・シトロエン(PSA)、ボルボ・トラック、アフトトル(注2)、GMアフトワズ(注3)の計5社が実施するプロジェクトを採択する決定を行ったと発表した。デニス・マントゥロフ産業商務相は「SPICを通じて、エンジン、トランスミッション、電子コントロールユニット、車体部品、フレーム、シャーシ、内外装部品などの主要部品の製造現地化とロシアでの研究開発活動が実施される」と述べた。

SPICとは、ロシア国内での生産への7億5,000万ルーブル(約12億7,500万円、1ルーブル=約1.7円)以上の投資と引き換えに、最長10年間、企業利潤税(法人税)、資産税の免税などの税制面や、公共調達面での優遇を享受できる内容(注4)。日系企業では、アフトワズ・ルノー・日産・三菱連合、マツダ、いすゞが締結しているほか、トヨタもSPICの申請を行ったと報じられている(2019年4月1日記事参照)。

今回採択された5社のSPIC申請内容は表のとおり。PSAは現在、カルーガ州で出資割合がPSA70%、三菱自動車30%の合弁工場PSMAルスを運営しているが、三菱自動車がルノー・日産グループの傘下に入ったこともあり、今回はPSAが単独でSPICを申請した。産業商務省は、今回の5社によるSPIC申請は、ロシアの自動車生産の安定した長期的発展だけでなく、自動車部品製造の拡大に寄与し、連邦政府が策定した「2025年までの自動車産業発展戦略」(2018年5月11日記事参照)に沿うもので、1,000億ルーブル以上の民間投資が実施される、としている。同省のワシリー・オシマコフ次官は、「5社は7月1日までに(産業商務省などと)SPICを締結しなければならない」としている。

表 今回SPICプロジェクトが採択された5社の申請内容

なお、現行のSPIC制度では、連邦政府や産業商務省、地方自治体との間で締結された内容が非公開であるなど、透明性と競争原理の面での課題が指摘されている。連邦政府は、これらの課題の解決と最新技術の開発・導入を促進する目的で、SPIC改正法案を策定した。現在、国会で審議されている(2019年6月4日記事参照)。加えて、自動車製造に現地化基準のポイント制度を7月1日から導入する連邦政府決定を5月に発表している(2019年6月6日記事参照)。

(注1)SPIC締結に向け申請内容を審議する省庁間委員会。産業商務省、経済発展省、財務省、エネルギー省などが参加。

(注2)カリーニングラード州で、BMWと現代グループブランドの車種(現代、起亜、ジェネシスおよび商用車)を委託生産している自動車メーカー。

(注3)米国ゼネラルモーターズ(GM)とロシア乗用車最大手アフトワズ、欧州復興開発銀行(EBRD)の3社が2001年に合弁で設立した自動車メーカー。サマラ州トリヤッチ市でスポーツ用多目的車(SUV)車種「シボレー・ニワ」を生産している。

(注4)詳細は調査レポート「ロシアにおける公共調達制度および輸入代替政策を背景とする国産品調達促進措置と原産地規則の概要」(2017年3月)を参照。

(齋藤寛)

(ロシア、フランス、ドイツ、スウェーデン)

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