トヨタが特別投資契約を申請へ

(ロシア)

サンクトペテルブルク発

2019年04月01日

日刊紙「コメルサント」などは3月29日、トヨタ自動車ロシアが特別投資契約(SPIC)の申請をロシア産業商務省に行ったと報じた。

内容の詳細は明らかになっていないが、「コメルサント」紙によると、特別投資契約の対象は同社サンクトペテルブルク工場への追加投資で、規模は10年間で200億ルーブル(約340億円、1ルーブル=約1.7円)に上るとしている。この投資は、自動車の生産設備の増強・近代化やサプライヤー向けの教育センターの新設に充てられるもようだ。また、SPICの枠組みでパワーウインドー、エアバッグ、ガソリンタンク、排気システムといった部材の現地調達(ロシア製の採用)を進めるとみられる。

ロシア政府は、SPICを締結した企業にエンジンや変速機などの基幹部品の現地調達を求めるが、投資銀行VTBキャピタルのウラジーミル・ベスパロフ氏は、ロシアにおけるトヨタの売り上げを踏まえて、エンジンや変速機の現地調達に同社が踏み切ることに懐疑的な見通しを示している(「コメルサント」紙3月29日)。外資系自動車製造業のエンジン調達をめぐっては、米国自動車大手のフォードがロシアで生産しているエンジン工場の閉鎖を3月に発表している(2019年3月28日記事参照)。

SPICは、投資家(企業)と連邦政府(契約内容によっては連邦構成主体も加わる)が締結する契約。投資家が行う生産施設の創設や改良などに対し、行政側は税制や規制面の優遇措置を適用する一方で、投資家は構成部品の現地調達率向上などの目標を課される。最近では、2018年末にアフトワズ・ルノー・日産・三菱連合がSPICを連邦政府(産業商務省)などと締結した(2019年1月21日記事参照)。

トヨタ自動車ロシアは2007年12月にサンクトペテルブルクに工場を設立し、現在は「カムリ」「RAV4」を製造している。欧州ビジネス協会によると、2018年の販売台数はカムリが3万3,700台、RAV4が3万1,155台。同社の2017年末時点での現地調達率は約30%とみられる(自動車産業情報サイト「KOLESA」)。

(一瀬友太)

(ロシア)

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