特別投資契約を改正へ、競争原理や最新技術導入を義務付けの方向

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年06月04日

ロシアで、輸入代替の促進を目的として2016年に導入された特別投資契約(SPIC)制度のルールを見直す動きが進んでいる。国会(下院)で5月28日、連邦法第488-FZ号「ロシア連邦の工業政策」(2014年12月31日付)のSPICに関する条項を修正する法案が第1読会を通過した。修正の目的は、SPIC締結プロセスに競争ルールを導入すること、ハイテク技術導入を伴う長期民間投資を誘致することの2点。

修正案は新しいSPICの原則・ルールやSPICに関わる連邦政府、官庁、投資家などの権限・義務などの概要を規定するもので、実施細則ではない。今回変更・追加される項目は、a.公開を前提とした競争による選定、b.連邦政府が指定する最新技術の開発・導入の義務付け(連邦政府が指定する技術は別途規定する予定)、c.民間投資家の義務に関する規定(最新技術開発・導入に伴って獲得した知財権の扱いなど)、d.投資額と有効期間〔投資額500億ルーブル(約850億円、1ルーブル=約1.7円)以下の場合、15年以内。投資額500億ルーブル超の場合、20年以内〕、e.安定した事業活動のための条件整備、f.連邦政府および産業商務省の権限の範囲の明確化、g.SPIC締結、修正、終了に関する手続き全般、h.SPICで実施するプロジェクトの報告書作成、i.投資家が負う義務の履行管理、j.SPICプロジェクトリスト登録簿の作成、k.関係機関との情報のやり取りなど。新しいSPICの締結期限は2030年12月31日。法案が成立した場合も、これまでに締結されたSPICは従来の条件が履行される。

今回の改正について、デニス・マントゥロフ産業商務相は「これまでのSPICとの違いは、最新技術の開発・移転、SPIC締結における競争と透明性を確保するもので、(これまでより長い)最長20年の優遇条件を付与することで、長期投資の誘致を図る」と述べている(インターネットメディア「RNS」5月22日)。法律会社ノルティアGSKのパートナー、ロマン・タラソフ氏は「新しいSPICは競争を重視しており、国家にとって最も好ましい条件を提示した投資家にSPICを締結できる権利を付与するもの」と指摘する(「コメルサント」紙3月25日)。

現行のSPICは、ロシア国内での生産への7億5,000万ルーブル以上の投資と引き換えに、最長10年間、企業利潤税(法人税)、資産税の免税などの税制面や公共調達面での優遇を享受できる内容(注)。日系企業では、アフトワズ・ルノー・日産・三菱連合、マツダ、いすゞが締結しているほか、トヨタもSPICの申請を行ったと報じられている(2019年4月1日記事参照)。

(注)詳細は調査レポート「ロシアにおける公共調達制度および輸入代替政策を背景とする国産品調達促進措置と原産地規則の概要」(2017年3月)を参照。

(齋藤寛)

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