自動車製造の現地化基準を客観化、ポイント制を導入

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年06月06日

ロシア政府は5月30日、ロシア国内で自動車の製造を行う企業に対して政府支援を行う際に基準とする現地化の深度をポイント化する制度を発表した。7月1日以降に締結される特別投資契約(SPIC)を対象に、輸送車両(乗用車、商用車、トラック、バス)の生産量が年間90%に達した時点で、同基準で7,000ポイントをクリアしている必要がある。

新たに発表されたのは5月25日付連邦政府決定第661号「2015年7月17日付連邦政府決定第719号付属(文書)の変更について」。第719号は工作機械や自動車など特定の工業製品について、ロシア国産品としての認定するための基準・現地生産化のスケジュールを定める。今回の政府決定はこの自動車製造部分を改正し、自動車の製造工程や部品の調達などの詳細項目ごとにポイントを設定し、その積み上げで現地化の進捗度を測り、政府支援の可否や支援の度合いを決定する材料とする。

新しい基準は、シャシーの溶接・塗装、シャシー部品のプレス工程、エンジン(内燃・電気・ハイブリッド)製造、変速機、プーリー、ABS、運転支援システム、空調システム、内装(シートなど)といった多数の工程、部品・部材調達分野での現地化の内容・割合でポイントが設定されている。調査研究・開発実験については、投下した経費に応じたポイントが付与される〔詳細は添付資料(ロシア語のみ)参照〕。

政府(連邦・地方)調達の対象となる自動車についても、乗用車・商用車は1月時点から2,000ポイント、2021年1月1日から3,200ポイント、2023年1月1日から4,500ポイント、2025年1月1日からは5,500ポイントを下回らないことが調達の条件となる(トラック、バスは別基準を設定)。

自動車組み立てメーカーに対するロシア政府の支援(税優遇、補助金支給など)については、メーカーと連邦政府の個別の交渉で決定され、かつ内容は非公表のため、その判断・決定に一定の客観性を保つべく、以前からポイント制の導入が検討されていた(2018年10月3日記事参照)。今回の政府決定で、現地化の深度に関する基準が明確化・数値化され、製造企業側の予見可能性は高まった一方で、連邦政府から製造企業側への現地化推進への圧力が高まることも想定される。

なお、SPICを所管する産業商務省は6月4日、自動車製造分野の地場大手ソレルスとトヨタから出ていたSPIC締結申請が省庁間委員会で承認されたと発表した。SPIC契約期間は2028年末までが想定されている。7月1日までに同SPICが締結されれば、今回の政府決定は適用されないことなる。

(高橋淳)

(ロシア)

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