攻防続く英国議会、メイ首相は妥協案目指し労働党首と協議

(英国、EU)

ロンドン発

2019年04月04日

英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐり、英国議会での攻防が一段と激しさを増している。野党・労働党のイベット・クーパー元雇用・年金担当相ら超党派は4月2日、合意なき離脱(ノー・ディール)を回避するため、EUに離脱延期を求めることを政府に義務付ける法案を提出した。通常、この種の動議は審議に回らないが、3月25日以降、連日のように議会が政府に代わって議事進行を管理しており(2019年3月26日記事参照)、4月3日の議会では同法案を審議することが賛成312票、反対311票の1票差で可決された。

同法案が法制化されると、メイ首相は直ちに離脱延期をEUに求める動議を、希望する延期の期限を示して議会に提出することを義務付けられる。議会が延期の期限を修正することも可能で、さらにEUが異なる期限を提案すれば、首相は議会に諮らなければならない。

議会には、政府に離脱延期の要請を義務付ける試みが1月にもあったが、その際は否決された(2019年1月30日記事参照)。しかし今回は激しい議論の末、法案が賛成313票、反対312票と再び1票差で可決され、下院を通過した。上院も通過すれば、政府は重要な権限を議会に譲り渡す異例の事態となる。

しかしその議会も、ノー・ディール回避のための権限を手繰り寄せつつも、ブレグジットの代替案は決められないままだ(2019年3月28日記事4月2日記事参照)。4月3日の議会では、離脱延期義務付けの法案の審議に先立ち、4月8日にも議会主導で3度目の代替案採決を行う動議の採決が行われたが、賛成310票、反対310票の賛否同数となり、慣例を踏襲して反対票を投じた議長の1票で否決された。

議会が方向性を決められない中、テレーザ・メイ首相は4月3日午後、野党・労働党のジェレミー・コービン党首ら幹部と、ブレグジット合意の妥協案について約2時間にわたり協議した。協議はメイ首相が前日の声明で新たに示した打開策によるもので、同党首は会談後、メディアに「非常に良かった」とコメント。ただ、「会談は有意義だったが、結論には至っていない」とも述べ、翌日も協議を続けることを明らかにした。メイ首相は最初に離脱協定案が否決された後にも、超党派での議論を呼び掛けたが(2019年1月16日記事参照)、何の妥協も見いだせなかった。労働党内にも複数の主張があり、今回も妥協案がまとまるかは不透明だ。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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