英国議会、ブレグジット代替案めぐり政府から主導権を奪う

(英国、EU)

ロンドン発

2019年03月26日

英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐり混乱が続く英国議会で3月25日夜、当面の政府方針と修正動議の採決が行われ、3月27日の議事進行を政府に代わって議会が管理することを求める親EU超党派議員の修正動議が賛成329票、反対302票で可決された。議会が主導権を握ることを狙った修正動議はこれまでにも複数回提出されており(2019年1月30日記事3月15日記事参照)、政府はいずれも僅差で退けてきたが、政界の混乱が高まる中、遂に議会に主導権を明け渡す異例の事態となった。与党・保守党の造反議員は30人に上り、政権内部からも3人の閣外相が辞職と引き換えに修正動議を支持した。求心力が著しく低下しているテレーザ・メイ首相にとって、新たな打撃となった。

離脱日(3月29日)に先立ち、合意なき離脱(ノー・ディール)や再度の離脱延期について審議する十分な時間を議会に与えることを求める、野党議員らによる別の修正動議は、賛成311票、反対314票の3票差で辛うじて退けられた。

今回可決された修正動議に法的拘束力はないが、従わなければ議会が空転することは必至だ。このため3月27日の議事進行は議会が主導し、過半数の支持を得られるブレグジットの代替案を探る見通し。EUとの関税同盟や単一市場を目指すものや、カナダ型自由貿易協定(FTA)を追求するもの、さらにノー・ディールでの離脱や、離脱撤回・EU残留などが選択肢になるとみられ、それぞれ法的拘束力を伴わない採決が行われる見込み。

メイ首相は採決に先立って議会で演説し、こうした議会の採決結果を実現することは政府として確約できないとコメント。その上で、政府主導のまま議会がさまざまな代替案を検討する時間を確保することを提案していたが、結果として受け入れられなかった。3月26日にも行われる可能性があった3度目のブレグジット合意案の採決については、「今なお議会の十分な支持が得られていない」と述べ、先送りした。

親EU派が多い議会で、関税同盟や単一市場を志向する代替案が、議会の過半数の支持を得る可能性もある。スチーブン・バークレーEU離脱担当相は、こうした結末はEUとの関税同盟・単一市場から離脱することを記した2017年総選挙の保守党マニフェストに反するもので、解散総選挙の可能性を高めることになると、強く牽制していた。にわかに解散の可能性も増しつつ、政府・議会では駆け引きが続いている。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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