英国議会、またもブレグジット代替案を決められず

(英国、EU)

ロンドン発

2019年04月02日

英国議会は4月1日夜、英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる一連の代替案を採決。議会主導による2度目の代替案採決となった今回も、4案の全てが否決された(添付資料参照)。テレーザ・メイ首相のブレグジット合意案を批判し続けてきた議会は、自らも決定できないことを再び露呈する結果となった。

EU離脱強硬派も、アイルランド・北アイルランド間の国境管理の安全策(バックストップ)から英国が一方的に抜けられるよう離脱協定を修正する案と、合意なき離脱(ノー・ディール)で4月12日に離脱する案を提出していた。しかし、ジョン・バーコウ下院議長は、前者にはEUが合意する可能性がなく、後者は合意が見いだせない場合の既定のシナリオであるため、いずれも採決の対象に採用しなかった。この結果、穏健離脱派とEU残留派の超党派議員らが推す代替案4つが採決にかけられたが、いずれも否決。EUとの恒久的な関税同盟の実現を求める案はわずか3票差だったが、2度目の国民投票実施や離脱撤回を望む残留派議員の支持は集まらなかった。北アイルランドの民主統一党(DUP)議員10人は全ての案に反対した。

採決結果を受け、議会では手詰まり感が強くなっている。単一市場残留と事実上の関税同盟を組み合わせた「共通市場2.0」を推した与党・保守党のニック・ボールズ議員は採決後の議会での声明で、妥協を拒否し続ける自党議員らを非難し、離党を表明。議場にどよめきが起こった。関税同盟や共通市場2.0の代替案と2度目の国民投票を組み合わせることで過半数を確保できるとの主張も出ているが、実現するかは不透明だ。議会は4月3日にも3度目の代替案採決を行う可能性がある。

どの代替案も、政府の離脱協定案の3度目の採決が獲得した286票の賛成票(2019年4月1日記事参照)を上回ることができなかったのは、窮地のメイ首相にはせめてもの救いとなった。スチーブン・バークレーEU離脱担当相は採決後、「議会が今週、(政府の)合意案を承認すれば、5月の欧州議会選挙に参加しない(で円滑な離脱を実現する)こともまだ可能だろう」と述べ、週内にも4度目の政府合意案採決を行う可能性を示唆。政府は、4月2日朝から異例の5時間におよぶ閣議を予定しており、今回の代替案否決を踏まえた対策を協議する。しかし、政府合意案への支持も広がっておらず、政権はこれまで以上に重要な判断を迫られている。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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