電力大手ルスギドロが決算発表、極東事業での政府補助金依存続く

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年03月19日

ロシアの電力大手で、ロシア極東での発電・送電・配電・熱供給事業も行うルスギドロは3月14日、2018年通期決算(国際会計基準)を発表した。売上高は前年比5.7%増の4,004億1,800万ルーブル(約6,807億1,060万円、1ルーブル=約1.7円)、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前の利益)が5.3%増の1,096億7,300万ルーブル、純利益は28.5%増の318億3,700万ルーブルとなった(調整後利益ベースでは7.6%増の707億5,700万ルーブル)。純利益増加に貢献した営業利益は11.1%増(910億200万ルーブル)で、ボルガ・カマ川水系の貯水池への流入量増加による発電量の拡大(2018年6月19日記事参照)や、ロシア極東での地熱プラントの発電量増加などを理由として挙げている。

電力生産量はグループ全体で前年比2.9%増の1時間当たり13万615ギガワットだったが、ロシア極東での熱供給事業は0.9%減の2,965万ギガカロリーだった。2018年冬の異常な暖冬などが原因としている。

このほか、同社のバランスシート上の負債構成が大きく変化した。流動負債が前年比20.6%減(1,200億7,800万ルーブル)となった一方、固定負債が73.7%増(1,579億4,800万ルーブル)と大きく増加した。設備投資の資金調達のため、2018年2月のユーロ債発行や8月の外国貿易銀行との融資契約(ともに200億ルーブル)、11月のユーロ元債の発行(約150億ルーブル)(2018年11月19日記事参照)などが影響している。

政府の方針を受けて同社が担っているロシア極東の電力の発電・送電・配電事業も、政府補助金に頼る状況が続いている。同事業を実施するルスギドロ子会社「東エナジー・システムズ」の損益では、売上高が前年比5.4%増の1,778億7,700万ルールとなったが、営業費用も10.0%増の1,955億3,500万ルーブルと増加。政府から交付される補助金413億7,800万ルーブルにより事業の黒字化が図られたもようだ。2018年の営業費用増加の主たる理由は、発電燃料となる石炭価格やカムチャツカでの発電に使用される石油製品(重油など)の価格高騰(注)によるもの、とルスギドロでは説明している。

(注)ルスギドロのニコライ・シュリギノフ社長は、ロシア極東での同社の発電・熱供給事業の採算性向上のため、燃料の輸送費が高くなるカムチャツカをはじめロシア極東地域での天然ガス供給網整備を強く要望しており(2018年1月17日記事参照)、カムチャツカでは液化天然ガス(LNG)積み替え基地建設に付随する事業として、同地方での天然ガス供給網の整備が予定されている(2018年8月15日記事参照)。

(高橋淳)

(ロシア)

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