電力大手ルスギドロがユーロ元債発行、ロシア企業で初

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年11月19日

ロシアの電力大手ルスギドロは11月15日、ロシア企業では初めてとなる人民元建てのユーロ債を起債したと発表した。金融分野での米国による対ロシア制裁の影響低減を狙った試みとなる。

同社プレスリリースによると、発行したのは3年満期の年利率6.125%の同社債15億元で、中国本土以外で発行・流通するオフショアの人民元建てユーロ債券(ユーロ元債)となる。米証券取引委員会(SEC)への登録義務を免れるReg S(レギュレーション・エス)に依拠して行われた。幹事会社はVTBキャピタル、JPモルガン、ガスプロムバンクの3社。ブックビルディング(証券会社による事前の需要調査)の結果は25億元で、82%がアジアの投資家からのオファーとなった。ルスギドロは今回発行したユーロ元債は現在のルーブル市場レートに固定されているため、為替変動リスクを会社側で負うことはないと説明している。

ロシア政府は米国による金融制裁の影響を軽減するべく、2国間・多国間対話の中で自国通貨(ドル以外)での決済促進を呼び掛けている(2018年10月2日記事10月15日記事参照)。ロシア政府は2018年6月30日現在、ルスギドロの株式の60.56%を所有。同社は政府の意向を受けて中国と国境を接するロシア極東地域の発電・送電・配電整備事業を一手に担っている(2018年1月17日記事参照)。同社のニコライ・シュリギノフ社長は今回のユーロ元債の発行について、ロシアと中国両政府が合意した経済関係拡大の実現であり、同社への海外投資家の信頼と取引への関心の高さを表すもの、とコメント。今回の調達は現在の地政学的状況(対米関係)の中で非常に重要であり、ロシア極東の電力開発戦略に新しく有望な資金調達源となり得ると評価した。他のロシアの国有企業も同社に追随する可能性がある。

(高橋淳)

(ロシア)

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