2018年のGDP成長率は6.6%に減速、政府は消費促進策を急ぐ

(中国)

北京発

2019年02月05日

国家統計局の1月21日の発表によると、2018年の実質GDP成長率は前年比6.6%となった。2017年の成長率(6.8%)からは0.2ポイント鈍化した(図1参照)。四半期ごとにみると第1四半期(1~3月)は6.8%、第2四半期(4~6月)は6.7%、第3四半期(7~9月)は6.5%、第4四半期(10~12月)は6.4%で、年末に向けて鈍化傾向がみられた(図2参照)。

図1 GDP成長率(年ベース)
図2 GDP成長率(四半期ベース)

国家統計局の寧吉●(吉2つ)局長は、外部環境が複雑で、経済は下押し圧力に直面しているものの、経済が合理区間で推移し、年度目標の6.5%前後の成長を達成したこと、都市調査失業率が5%前後を維持していることなどを挙げ、安定成長を強調した。

一方で、国家統計局が発表した主要経済指標を前年比でみると、減速傾向が目立った(表参照)。

表 2018年の主要マクロ経済指標

投資(固定資産投資総額)は前年比5.9%増で、伸びが前年から1.3ポイント縮小した。このうち、インフラ投資は3.8%増で、前年から15.2ポイントと大きく縮小した。政府の金融リスクの防止策(デレバレッジ)などを背景に、1~9月期には前年同期比3.3%増まで落ち込んだが、政府主導のインフラ投資拡大策などにより、1~12月期では3.8%増まで持ち直した(2018年10月3日記事11月9日記事参照)。なお、民間投資は前年比8.7%増で、前年から2.7ポイント拡大、不動産投資は9.5%増で、前年から2.5ポイント拡大した。

消費(社会消費品小売総額)は、前年比9.0%増で伸びが前年から1.2ポイント縮小した。日用品(前年比13.7%増)、石油およびその製品(13.3%増)、飲料(10.2%増)、家具類(10.1%増)などが好調だった半面、通信機器(7.1%増)、文化・オフィス用品(3.0%増)などの伸びが低かったことに加え、自動車が2.4%減とマイナスに転じたことが減速の要因となった。インターネット小売額は23.9%増と高い伸びが続いているものの、前年の水準(32.2%増)からは大きく減速した。

工業生産増加額〔付加価値ベース、年間売上高2,000万元(約3億2,000万円、1元=約16円)以上の企業が対象〕は前年比6.2%増で伸びが前年から0.4ポイント縮小した。主要産品の工業生産量をみると、鋼材(8.5%増)、粗鋼(6.6%増)、集積回路(9.7%増)などが好調だった一方、自動車(3.8%減)、携帯電話(4.1%減)などが減少に転じた。

貿易総額は前年比12.6%増の4兆6,230億4,000万ドルで過去最高となった。うち、輸出は9.9%増の2兆4,874億ドル、輸入は15.8%増の2兆1,356億4,000万ドルで、3,517億6,000万ドルの黒字となった。なお、米国との貿易は輸出が前年比11.3%増の4,784億ドル、輸入が0.7%増の1,551億ドルとなり、3,233億ドル(前年比17.2%増)の黒字だった(2019年1月29日記事参照)。

政府は、経済が下押し圧力に直面しているとの認識を示しており、2018年から強化しているインフラ投資促進策や減税政策、中小企業への融資の促進に加え、経済の牽引役と位置付ける消費についても促進策を打ち出した。

発展改革委員会など10部門は1月29日、「さらなる供給の最適化により消費の安定成長を推進し、強大な国内市場の形成を促進するための実施方案」を発表した。

農村住民に対する自動車買い替え時の補助金や、スマート家電購入に対する補助金の支給など6分野24項目にわたる。実施に当たっては、各地方や各部門が主体となり詳細を決めるとみられる。

国家発展改革委員会の劉宇南巡視員は、2018年の消費の減速(前年比1.2ポイント減速)のうち、0.8ポイント分が自動車販売の減速によるものとの見解を示しており、消費の回復には自動車の販売動向が重要な役割を示すとみられる。

(藤原智生)

(中国)

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