インフラ投資拡大で景気を下支え、中西部の鉄道建設などに注力

(中国)

北京発

2018年10月03日

国務院常務会議が9月18日に開催され、固定資産投資の伸びが鈍化傾向にあることを受け、インフラ分野への投資を増やし、投資の安定拡大を維持していく方針が示された。具体的には、「三区三州」(注1)など貧困地域のインフラおよび基幹交通ネットワークを拡充するとした。とりわけ中西部の鉄道・道路、幹線航路、ハブ・コミューター空港(注2)などの建設に注力するとした。

また同日、国家発展改革委員会の記者会見で、同委員会固定資産投資司の劉世虎副巡視員(副司長級)は、投資の効率を高めるために(1)投資案件の蓄積の増加、(2)案件の着工に向けた準備作業の加速、(3)建設中の案件への融資保証、(4)インフラ分野における民間参入の促進、(5)投融資体制改革の深化、(6)地方政府の隠れ債務リスクの防止、(7)案件の着実な実施に向けた責任の明確化、などの措置を実施すると表明した。

国家統計局によると、固定資産投資総額(農家を除く)は2018年上半期(1~6月)の前年同期比6.0%増から、1~8月は5.3%増と伸びが鈍化した。うち、1~8月のインフラ投資は4.2%増と、前年同期と比べ14.8ポイント縮小した。

投資の伸び鈍化の背景として、中央政府が地方政府の債務リスク防止に力を入れていることが指摘されている(2018年8月9日記事参照)。政府系シンクタンクの国家金融・発展実験室が発表した「デレバレッジ(債務比率引き下げ)政策は転換したか~中国のデレバレッジ進捗状況報告(第2四半期)」によると、2018年6月末の政府全体のレバレッジ比率は35.3%と2017年末の36.2%から低下しており、うち中央政府は16.2%から15.9%、地方政府は19.9%から19.4%に低下した。また、シャドーバンキングを通じた資金供給の減少などの要因により、地方政府の隠れ債務の水準は低下したとしている。

一方、9月24日に米国が対中制裁関税の第3弾を発動するなど、中米の貿易摩擦が激化しており、中国経済に及ぼす影響が大きくなることが懸念されている。劉副巡視員は「投資を安定化させることは、経済の安定成長、供給構造の最適化、長期的な総合的競争力の向上にとって重要な意義を持つ」とした上で、「限られた資金を有効な供給の増加や弱点の補強に資する分野に投じ、質の高い発展を実現させる」と述べ、景気の下支え役としてインフラ投資を拡大していく方向性を示した。なお、国家金融・発展実験室の報告も、地方政府の一般債務残高と事業目的別債務残高の上限額を適度に引き上げて、投資への支出を確保すべきだと指摘している。

(注1)三区三州:「三区」はチベット自治区、新疆ウイグル自治区南部のカシュガル地区・ホータン地区・クズルス・キルギス自治州・アクス地区、青海省・四川省・雲南省・甘粛省のチベット民族地区、「三州」は甘粛省の臨夏回族自治州、四川省の涼山イ族自治州、雲南省の怒江リス族自治州を指す。

(注2)主に近距離の地域間輸送を担う空港。

(張敏)

(中国)

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