ヤンデックスの2018年通期、非広告部門の売り上げ拡大

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年02月25日

ロシア検索エンジン大手「ヤンデックス」の100%親会社「ヤンデックスN.V.(オランダ登記)」が2月15日に発表した2018年通期の連結決算(米国会計基準)によると、売り上げは前年比35.7%増の1,276億5,700万ルーブル(約2,170億1,690万円、1ルーブル=約1.7円)だった。純利益(同社帰属分)は前年比5.4倍の475億8,700万ルーブルを計上したが、2018年4月に国有の銀行最大手ズベルバンクと電子商取引(EC)事業部門「ヤンデックス・マーケット」を統合しており、同部門を除いた純利益は2.5倍の184億3,200万ルーブルだった。

ヤンデックスは、1997年創業以来の主な収益源として依存してきたオンライン広告以外の事業の多角化を図っている。セグメント別の売り上げ構成比率は、非広告収入の割合が初めて20%に達し、特にタクシー部門が前年比3.9倍と高い増加率を示した。同部門では、2018年6月に米ウーバーの技術基盤を統合した配車サービスをロシア国内で開始し、国外10カ国以上でも事業を展開中(2018年11月16日記事参照)。さらに、2018年2月に開始したカーシェアリングや、同年10月の無人タクシーの試験導入(2018年10月18日記事参照)など、新規事業や技術開発にも積極的だ。アルカジ・ボロジュ最高経営責任者(CEO)も「現在のヤンデックスは、もはや『検索エンジン』だけにとどまらない」として、新事業の成長に自信を見せる。ただし、これらの新規部門の投資がかさみ赤字を計上しているため、投下資本の回収が今後の課題だ(「ベドモスチ」紙2月17日)。

またロシアでは、政権や国有企業による民間介入への警戒心が強い。政府が外国資本比率の規制を2016年から国内メディアに、2017年にはマルチメディア・インターネットサービスに課したほか、2018年12月にはニュースアグリゲーター(注)に対する外資規制法案が下院に提出され、審議中だ。法案が成立した場合、ニュースポータルサイトも運用する外資企業ヤンデックスに対する圧力につながるとの懸念がある(「ベドモスチ」紙2月12日)。2018年10月にズベルバンクがヤンデックスの大株主になるとの憶測が報じられた際も、国有銀行の影響が民間IT企業に及ぶことを恐れた投資家が証券市場で警戒売りに転じた一幕があった(2018年11月1日記事参照)。

(注)インターネット上のニュースを収集し、ウェブサイトで提供する事業者。

(市谷恵子)

(ロシア)

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