ヤンデックス・タクシー、CIS圏外にも積極展開へ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年11月16日

ロシアのIT大手ヤンデックス・グループ傘下で、オンラインのタクシー配車サービスを手掛けるヤンデックス・タクシー(Yandex.Taxi)は11月9日、フィンランドの首都ヘルシンキで営業を開始した。同社にとっては、旧ソ連圏を含め13カ国目の国外事業となる。

初期段階ではヘルシンキ市内でサービスを提供するが、今後は市外近郊の居住区にもエリアを拡大する方針。最低利用料金は3ユーロ。また今回の営業開始に当たり、国際ブランド「ヤンゴー(Yango)」の名称を冠したアプリを本格的に導入した。

同社公式ブログの説明によると、ブランド名は「Yandex Go」の略称で、将来的にはタクシー配車のみならず、ヤンデックス・グループの多様なサービスを提供する可能性を視野に入れ、ロシア語圏外のユーザーを意識したネーミングを採用したという。同アプリは2018年10月初めに、西アフリカのコートジボワールの首都アビジャンで試験運用を開始した。従来のアプリ「ヤンデックス・タクシー」とは互換性があり、どちらか一方のアプリをインストールしていれば、もう一方のサービス利用も可能となるため、旅行者など一時滞在者にとっても利便性が高い。

ヤンデックス・タクシーは、ロシア国内やCIS諸国の一部で事業基盤を固めた後、2018年3月以降にバルト3国やセルビアでサービスの提供を開始(「ベドモスチ」紙11月8日)。5月には、アフリカ市場進出の可能性にも言及していた。また2月には、同業の米大手ウーバーとの合弁企業をロシアで設立し、6月には同国内の技術基盤を統合する(2018年6月19日記事参照)など、積極的に事業を国内外で拡大している。

一方で、ロシアIT企業の海外進出に伴い、情報セキュリティーを警戒する見方もある。バルト3国のうち、リトアニアの国家サイバーセキュリティーセンターは、ヤンデックス・タクシーが同国内ユーザーの個人情報を不正に収集している恐れがあるとして、国民、特に公務員の利用自粛を要請した。これに対し、ヤンデックス・タクシー側は「EU規制に従ったデータ処理・管理を行っている」(グローバル戦略担当のアラム・サラグシャン氏)とし、リトアニア当局の主張を否定している(ブルームバーグ7月31日)。

(市谷恵子)

(ロシア)

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