IT企業に国有銀行介入の報道で、10月18日の株価は急落

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年11月01日

ロシア国有企業による民間企業への資本参加が証券市場で敬遠されている。10月18日、銀行最大手の国有ズベルバンクがIT大手の民間ヤンデックス・グループの親会社「ヤンデックスN.V.(オランダ登記)」の株式30%以上を取得するため交渉中と、一部の現地メディアが関係筋の話として伝えた。ズベルバンクは報道を否定したものの、米国のナスダックとロシアのモスクワ証券取引所に上場しているヤンデックスN.V.の株価が急落した。

国有企業の介入で迅速な経営判断ができなくなるとの懸念や、欧米による制裁対象となっているズベルバンクの関連企業となることによる(制裁の)波及リスクを恐れた投資家の警戒売りが強まったものとみられる。

ロシア国有企業による民間企業の支配というスキームが証券市場で嫌気され、取引価格に影響を及ぼした例はほかにもある。最近では2月16日、食品小売り大手マグニトを創業した代表取締役が保有していた同社株29.1%を国有の外国貿易銀行(VTB)(同じく米国による制裁対象)に売却した際、モスクワとロンドンの証券取引所に上場している同社証券に売りが集中。5月には国有企業などが出資する合弁会社がインターネットサービス大手のメール・ルー(Mail.ru)グループの過半数議決権を取得した際にも、ロンドン証券取引所でMail.ru取引価格の下落を招いた。

業界関係者も国有銀行が民間IT企業への資本参加を進めることに否定的な見解を示している。資産運用会社TKVインベストメント・パートナーズの運用ディレクターは「ズベルバンクには企業家精神が欠けており、テクノロジー分野での国際競争には勝てない」と予想(「ベドモスチ」紙10月21日)。証券会社オトクリティエ・ブロケルのアナリストも「ロシア政府主導の巨額なデジタル経済事業に出資するなど、国家利益を重視した経営シフトに転換する恐れがある」(「RBK」10月19日)と指摘する。

ヤンデックスは株価急落を受け、10月22日にプレスリリースを発表。アルカジ・ボロジュ最高経営責任者(CEO)は「保有株式を売却して経営を退くことはない」としながらも、引き続き「資本構成に関するさまざまな可能性」を検討するとしている。

(市谷恵子)

(ロシア)

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