CPTPP実施法が成立、2019年1月にも発効へ

(カナダ)

トロント発、米州課

2018年10月29日

カナダ上院は10月25日、「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)」の実施法案(C-79号法案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を満場一致で可決。同日にカナダ総督の裁可を受けて法律は成立した。今後、トルドー政権は、CPTPP批准の手続きを経て、CPTPP寄託国のニュージーランドに通報を行う。

CPTPPは、2018年3月に正式署名され、署名した11カ国のうち6カ国以上が国内手続きを終えれば、60日後に発効となる。これまでに国内手続きを終了している参加国は、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド(2018年10月25日記事参照)の4カ国。オーストラリアは10月17日の連邦議会で可決しており(2018年10月19日記事参照)、オーストラリアとカナダの寄託国への通報が終われば、協定発効の条件を満たし、早ければ2019年1月にもCPTPPは発効となる。

CPTPP実施法案のカナダ議会での審議は2018年6月12日に下院で始まり、10月16日の本会議で可決(賛成236票、反対44票、棄権2票)した。上院での審議は10月17日に始まったが、上院の外交国際貿易委員会は、カナダ企業が競争上不利な立場に置かれないようにするためには、CPTPP批准の最初の6カ国に入ることが重要との報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行っており、わずか1週間あまりでのスピード可決となった。法案の成立を受けて、ジェームズ・カー国際貿易多様化相は声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「CPTPPはあらゆる規模のカナダ企業の好調なアジア太平洋市場へのアクセスやビジネス機会の増加に貢献するだろう」と発表した。

CPTPPはカナダの対外貿易多角化に寄与

カナダ商工会議所のフィル・テイラー戦略広報上席部長は10月25日に声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、「CPTPPの発効により、カナダの企業にとって約5億人の市場へのアクセスが容易になり、環太平洋地域でのビジネス拡大が期待できる。北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉により生まれた不透明感により、カナダが対外貿易を多角化することの必要性が浮き彫りになったことから、CPTPPの迅速な批准はカナダの対外貿易多角化に重要な役割を果たすものと期待している」とCPTPP実施法案の可決を評価した。

これまでカナダの自動車部品の業界団体などは、CPTPPにより日本を含むアジア諸国からの自動車部品の輸入が増えることに懸念を表明していたが(2018年1月25日記事参照)、オタワ大学公共・国際関係大学法学部で自由貿易協定の研究を行っているパトリック・レブロンド准教授は、10月1日に合意が発表されたNAFTAの新協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」により、自動車部品業界のCPTPPに対する懸念は若干払拭(ふっしょく)されたのではと指摘し、「CPTPPによって日カナダ間でより平等で対等な競争環境が形成され、ビジネス機会やイノベーションが創出され、生産性が向上し、全体としてプラスの効果がある」との見解を示した。

(酒井拓司、中溝丘)

(カナダ)

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