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トルドー首相、ダボス会議でCPTPP交渉の妥結を表明-カナダ国内産業界の評価は分かれる-

(カナダ、日本)

米州課

2018年01月25日

カナダのジャスティン・トルドー首相は1月23日、スイスのダボスで開催されている世界経済フォーラム年次総会の特別講演の冒頭で、「包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」(いわゆる「TPP11」)について言及し、交渉が妥結したと発表した。フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ国際貿易相も談話を発表し、文化の保護や日本との自動車分野の取り決め改善、知的財産条項の凍結などの成果が確認できたことを喜んでいると述べた。経済団体はCPTPP交渉の妥結を評価したが、産業界の評価は分かれた。

CPTPPはカナダにとって「妥当なもの」

東京都内で開催された米国を除く環太平洋パートナーシップ(TPP)参加11カ国の首席交渉官会合が1月23日に閉幕した。3月8日にチリのサンティアゴでCPTPPの署名式を開くことで合意したことを受け、トルドー首相は1月23日、世界経済フォーラム年次総会の特別講演の冒頭、CPTPPについて言及した。同首相は「本日、カナダとTPP参加10カ国は東京でCPTPPの交渉が妥結したことを喜んで発表したい」と発言し、本協定が持続的成長や繁栄、そして給料の良い中間層の職の創出という目的に合致する「妥当なもの」と述べた。さらに同首相は、貿易は中産階級の強化に役立つが、それを機能させるためには貿易の利益が全市民で共有される必要があるとして、「CPTPPはその道への新たな一歩になる」と協定に合意した意義を強調した。また同首相は、TPP11カ国による交渉が良い結果をもたらしたのは最近の会合を主導した安倍晋三首相の指導力によるものと評価し、安倍首相に謝意を表明した。

トルドー政権でTPP交渉を担当しているシャンパーニュ国際貿易相も談話外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、文化の保護において著しい成果や、日本との自動車分野の取り決めの改善、カナダの利害関係者の多くが懸念を表明していた知的財産条項の凍結などの成果が確認できたことを喜んでいると述べた。

経済団体は交渉妥結を評価

カナダ政府の発表やメディアによる報道を受けて、カナダビジネス協議会(BCC)の会長を務めるジョン・マンリー元首相は「カナダは世界で最も急速に成長している地域との貿易関係強化に向けた大きな一歩を踏み出した」と述べ、トルドー首相をはじめ、シャンパーニュ国際貿易相やグローバル連携省の交渉チームの成果をたたえた。カナダ商工会議所も、カナダがCPTPPへの継続的参加を確実にする合意に達したという報道を歓迎した。同商工会議所のペリン・ビーティ会長兼CEOは「現時点では、カナダの自動車分野を含む、合意内容の詳細を待っている」と前置きした上で、「11カ国が貿易障壁の除去を約束したことは、世界貿易の将来への強力かつ肯定的なメッセージを提供することになる」と評価した。

一方、野党・新民主党のトレーシー・ラムジー下院議員(オンタリオ州)は「自由党政権は通商協定の透明性を約束したにもかかわらず、カナダ国民に対し、あいまいな情報や混乱したメッセージを与え続けている」と、トルドー政権の対応を批判した。また、ラムジー議員は、連邦議会下院の国際貿易委員会(CIIT)が6万人以上から受領したTPPに関する意見書のうち、TPP反対の意見が95%を占め、グローバル連携省に提出された1万8,000人の意見書のうち、TPP賛成は2人しかいなかったことを明らかにした。

農畜産団体も交渉妥結を歓迎

カナダの農業団体や牛肉・豚肉の生産団体は、CPTPPの発効により、オーストラリアの農畜産業者が日豪経済連携協定(EPA)で享受している特恵関税と同等の条件で対日輸出ができるようになるため、今回の交渉妥結を歓迎した。

カナダ畜牛協会(CCA)のダン・ダーリング会長は、カナダがCPTPPに参加することにより、カナダの牛肉生産者は日本やアジア太平洋地域の活力ある市場に競争力のある市場アクセスが提供されることになり、「カナダの牛肉業界全体にとって極めて積極的な進展」とシャンパーニュ国際貿易相やローレンス・マコーレー農業農産食品相の努力と指導力に感謝の意を表した。CCAの声明によると、2016年の日本の牛肉輸入額は38億ドルで、うちカナダからの輸入額は、オーストラリア(18億ドル)、米国(16億ドル)、ニュージーランド(1億6,300万ドル)に次ぐ1億1,500万ドルにとどまり、オーストラリア以外の国は38.5%の関税を支払っているという。しかし、CPTPPが発効されると、カナダ産の牛肉はオーストラリア産と同じ関税率で日本に輸入され、さらに、日本政府が2017年8月から実施している冷凍牛肉の緊急輸入制限措置に関し、自由貿易協定(FTA)締結国は対象外になるとして、CCAは協定発効のメリットを強調した。

カナダ豚肉協議会(CPC)のリック・バーグマン会長は「100カ国以上に輸出しているカナダの豚肉生産者にとって、CPTPPは極めて重要で、最新の通商協定によって主要市場へのアクセスが改善されることにより、豚肉業界で働く数千人もの生活が支えられることになる」と述べ、協定の合意を歓迎した。

酪農団体や自動車産業はCPTPPに反対を表明

一方、カナダの酪農団体や自動車産業は、CPTPP締結国の競争相手に大幅な譲歩をすることにより、カナダ国民の雇用を犠牲にするとして、協定に反対を表明した。カナダ酪農家協会(DFC)のピエール・ランプロン会長は、米国がTPPから離脱した後も、カナダ政府がTPP交渉で合意した国内市場の3.25%に相当する乳製品の輸入枠が残っているとして、カナダ政府の決定に疑問を呈した(2017年11月16日記事参照)。

カナダ自動車部品製造業協会(APMA)のフラビオ・ボルペ会長は「フィナンシャル・ポスト」紙(1月23日)のインタビューで、米国が北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉において原産地比率を引き上げて中国製部品を北米から締め出そうとしている中、TPPでは原産地比率を引き下げて中国のようなTPP非参加国の部品の市場参入を促進しており、NAFTA再交渉の第6回会合が始まる「最も重要な時期に愚かな行動を取った」と、カナダ政府を痛烈に批判した。カナダ自動車工業会(CVMA)のマーク・ナンテ会長も「カナダでの雇用や生産の維持のために数百万カナダ・ドルを投資した自動車企業にとって不利になる一方、TPP締結国には競争優位性を与えている」と指摘し、「今回の合意により、TPP市場へのアクセスが大幅には改善されていない」と懸念を表明した(「フィナンシャル・ポスト」紙1月23日)。

(中溝丘)

(カナダ、日本)

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