ラトビアがユーロ導入、円滑に進む通貨切り替え

(ユーロ圏、ラトビア、欧州)

ブリュッセル事務所

2014年01月06日

ラトビアは1月1日、18ヵ国目のユーロ導入国となった。2009年秋のギリシャ危機に端を発する欧州債務危機以降では、2011年1月に導入したエストニアに続き2ヵ国目。また、ユーロ圏拡大は3年ぶりであり、構造改革による経済調整下にあるユーロ圏諸国の関係者にとっても励みになるものとなった。

<ユーロ導入は18ヵ国目>
ラトビアは2014年1月1日からユーロを導入し、ユーロ圏は18ヵ国に拡大した。1999年のユーロ誕生から15周年を迎え、ユーロ圏の人口は3億3,300万人に達した。

ラトビア中央銀行は2013年12月10日から、通貨切り替えのためのユーロ硬貨キットを一般向けに80万キット、小売店向けには7万キット用意し、準備を進めてきた。中銀は2014年1月からラトビア通貨を、1ユーロ=0.702804ラトビア・ラッツ(LVL)で無制限に交換するとしている。また、商業銀行では2014年6月30日まで、郵便局では3月31日まで、手数料なしで無制限に現金の両替を行う。

<便乗値上げの監視措置も>
商品の価格表記については、2013年10月1日からユーロとLVLの両方での表示を義務付けてきたが、同措置は2014年6月30日まで行うこととしている。なお、ユーロへの切り替えに伴う便乗値上げに対する消費者の懸念に対処するため、2013年7月に「公平なユーロ導入」キャンペーンを立ち上げ、小売店や金融機関、インターネットショップなどの産業界に対して、切り替え期間を乱用せず、切り替えルールを尊重しながら、顧客に必要な支援を提供するよう求めた。価格の二重通貨表示や「公平なユーロ導入」キャンペーンの導入状況については、特に消費者権利保護センターが監視を行う。「公平」と認められない企業については「ブラックリスト」に掲載して公開するほか、罰金を科す可能性があるとしている。

ラトビア政府は2013年3月5日に、欧州委員会に対し2014年1月からのユーロ導入を正式に申請(2013年3月11日記事参照)。欧州委は同年6月5日、ラトビアがユーロ導入基準を満たしていることを認定し、2014年1月からのユーロ導入を勧告(2013年6月14日記事参照)。EU経済・財務相(ECOFIN)理事会が7月9日、ラトビアのユーロ導入を正式に決定した(2013年7月11日記事参照)。そのため、約半年かけて、LVLからユーロへの通貨切り替え作業を準備してきた。また、ラトビア当局による通貨切り替えのための包括的な情報提供に加え、欧州委や欧州中央銀行がラトビアの準備努力を支えた。

<国民は切り替え前にユーロを所持>
2014年1月2日までの時点で、店頭での支払いの30%がユーロのみで行われ、94%の顧客がユーロでお釣りを受け取ったと、欧州委による同日の調査で報告されている。また、最初の2日間で、財布の中身はユーロ通貨のみか、ほとんどがユーロ通貨になったと25%のラトビア国民が回答している。銀行や小売店でも問題はみられないという。

なお、欧州委による2013年12月30日の調査では、ユーロへの切り替えの2日前の時点で、52%のラトビア国民がユーロ紙幣を、64%がユーロ硬貨を、銀行や郵便局での両替や海外旅行からの持ち帰りにより所持しており、こうしたことがユーロへの切り替えを円滑にしているという。

欧州委のバローゾ委員長は18ヵ国目のユーロ導入国となったラトビアを歓迎するとともに、深刻な経済危機の余波がある中でのラトビア当局と国民の努力と確固たる決意に敬意を表した。また、困難な経済調整下にある他のユーロ圏諸国への励みになるとした。

(田中晋)

(ラトビア・ユーロ圏)

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