ラトビアが2014年1月からユーロ導入へ−7月の経済・財務相理事会で正式決定の見込み−

(ユーロ圏、ラトビア、欧州)

ブリュッセル事務所

2013年06月14日

欧州委員会は6月5日、ラトビアが2014年1月からユーロを導入するための5つの収れん基準を満たしていることを認定した。6月下旬の欧州理事会(EU首脳会議)、7月9日のEU経済・財務相(ECOFIN)理事会での承認を経て、最終決定される見通し。ユーロ導入は2011年のエストニア以来となる。

<2013年のGDP成長率見込みはEU27ヵ国で最高の3.8%>
ラトビア政府は2013年3月、欧州委に対し、2014年1月からのユーロ導入を申請した(2013年3月11日記事参照)。その後、欧州委はラトビアがマーストリヒト条約が定めたユーロ導入のための5つの収れん基準を満たしているかどうかを審査していた。

この結果、欧州委は6月5日、ラトビアが収れん基準を満たしていることを認定する「収れんレポート」発表した。今後、7月9日のECOFIN理事会での承認を得て、最終決定される見通し。

欧州委のオッリ・レーン副委員長(経済・通貨問題担当)は「ラトビアのユーロ導入は、同国がマクロ経済の不均衡(インバランス)を克服したことを示すものだ。ラトビアは2008〜2009年の景気後退の際にEUとIMFによる財政支援を受けたことで、景気後退から脱却し、経済成長に回帰できた」と述べた。

欧州委経済・金融総局が2013年5月に発表した春季経済予測によると、ラトビアの2013年の実質GDP成長率はEU27ヵ国の中で最も高い3.8%と見込まれている(2013年5月7日記事参照)

<過剰財政赤字手続きからの解除を加盟国へ勧告>
5つの収れん基準の1つ目には「財政赤字がGDP比3%以下」と規定されている。2010年にはGDP比で8.1%あった財政赤字を、2012年には1.2%にまで削減した。5月の春季経済予測によると、2013年も1.2%を維持する見込みとなっている。

2つ目の基準の「公的債務残高がGDP比60%以下」では、2012年の公的債務残高はGDP比40.7%となり、収れん基準を大きく下回った。

欧州委は5月29日、ラトビアの緊縮財政による財政赤字の大幅削減を評価し、ラトビアを過剰財政赤字手続き(Excessive Deficit Procedure、注)から解除することをEU加盟国に勧告した。

<消費者物価上昇率は基準値以下でも警戒が必要>
収れん基準の3つ目の消費者物価上昇率については、「過去1年間、消費者物価上昇率の最も低い3ヵ国の平均値を1.5ポイントより多く上回らないこと」と規定されている。

ラトビアの2012年5月〜2013年4月の12ヵ月間の平均消費者物価上昇率は1.3%だった。基準値の2.7%(過去1年間で消費者物価上昇率が最も低かったスウェーデン、ラトビア、アイルランドの平均値に1.5ポイントを加えた値)を大幅に下回っている。ちなみに、ラトビアの消費者物価上昇率は2008年に15.3%とピークに達し、その後低下するも、2011年は4.2%と基準値よりも高く、課題とされていた。

欧州委は、このところの消費者物価上昇率の低さが2012年7月に実施された付加価値税(VAT)引き下げなどの短期的ファクターに起因している可能性を示唆し、慎重な財政政策と持続的成長のための国内需要の喚起を通じ、消費者物価上昇率が引き続き抑制されるよう「警戒を続ける」必要があることを強調した。

<過去2年間の為替変動と長期金利は安定>
4つ目の基準の為替変動については、「欧州通貨制度の為替相場メカニズム(ERM)に加盟し、少なくとも2年間は通常変動幅(1993年以降は±15%)を維持し、通貨の切り下げを行わないこと」と規定されている。

ラトビアは2005年5月2日からERMに加盟している。直近2年間の為替変動幅をみると1%以内に収まっており、収れん基準を満たすかたちとなった。

5つ目の基準の「長期金利が過去1年間、消費者物価上昇率の最も低い3ヵ国の平均値を2%より多く上回らないこと」についても基準値を満たした。ラトビアの2012年5月〜2013年4月の平均長期金利は3.8%で、基準値の5.5%を下回った。2009年は財政悪化により長期金利が約14%まで上昇してピークに達したが、EUとIMFの財政支援による財政再建から、2010年後半から長期金利は次第に低下し、2012年以降は低水準で安定している。

また、ラトビアの経常収支も好調に推移しているほか、EU域内での貿易、投資も活発で、ここ数年で改善がみられた。欧州委は、ラトビアは広範な欧州経済の中に既に「十分に組み込まれている」と説明した。

(注)過剰財政赤字手続きは、1997年にEUで採択された「安定・成長協定」の中で規定された赤字是正のための措置。欧州委およびEU閣僚理事会(理事会)によって過剰な財政赤字を抱えていると判断された国は、GDP比で3%以内の適正水準に向けて赤字削減を実施しなければならない。

(小林華鶴)

(ラトビア・ユーロ圏)

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