2014年1月からのユーロ導入を正式申請
ブリュッセル事務所
2013年03月11日
政府は2013年3月5日、欧州委員会に対し2014年1月からのユーロ導入を申請した。欧州委は、ラトビアがマーストリヒト条約が規定するユーロ導入のための5つの収れん基準を満たしているかどうかを評価する報告書を、5月下旬〜6月上旬に発表する予定。ラトビアが収れん基準を満たせば、EU加盟国としては18ヵ国目のユーロ導入国となる。
<経済不況を克服し、EUの中で最も高い成長率を達成>
ラトビアのアンドリス・ビルクス財務相は3月5日、欧州委に対しユーロ導入のための収れん報告書の作成を正式に申請した。2014年1月1日から自国通貨ラトに代え、単一通貨ユーロ導入を目指す。2012年5月下旬に欧州委が発表した収れん報告書(PDF)では、ラトビアは下記の(1)財政赤字と(3)消費者物価上昇率の基準を満たしていなかった。同報告書によると、2010年の財政赤字はGDP比8.2%だったが、2011年には3.5%、2012年と2013年には2.1%まで下がると予測している。消費者物価上昇率も、2008年の15.3%という急激な上昇後は落ち着きをみせ始めている。
マーストリヒト条約が規定する収れん基準は、以下の5つ。
(1)財政赤字がGDP比3%以下
(2)政府債務残高がGDP比60%以下
(3)過去1年間、消費者物価上昇率が消費者物価上昇率の最も低い3ヵ国の平均値を1.5ポイントより多く上回らないこと
(4)欧州通貨制度の為替相場メカニズムの通常の為替変動幅を2年間維持すること
(5)過去1年間、長期金利が消費者物価上昇率の最も低い3ヵ国の平均値を2%より多く上回らないこと
欧州委のオッリ・レーン副委員長(経済・通貨問題担当)は、今回のラトビアのユーロ導入の申請は、同国の2008〜2009年の不況からの回復ぶりを証明していると声明で指摘した。ラトビアは資産バブル崩壊により、2009年は実質GDP成長率がマイナス18%となる厳しい経済状況に直面した。EUとIMFから2008年に75億ユーロの融資を受けたが、不況脱却の道筋がみえたことで、2012年1月に財政支援は終了している。
現在、ラトビアは経済不況を乗り越え、EUの中でも実質GDP成長率が最も高い。2013年2月発表の欧州委の冬季経済予測によると、2012年の実質GDP成長率は5.3%に達している(2013年2月25日記事参照)。2013年のGDP成長率の予測値は3.8%と他のEU加盟国よりも高い。また、失業率は依然として高いが、確実に毎年低下している。レーン委員は、ラトビアがマクロ経済の不均衡(インバランス)を克服し、財政支援によって再生が実現できた好例であることを強調した。
<2013年下半期に最終決定の見通し>
欧州委は今後、欧州中央銀行(ECB)と共同で、ラトビアの収れん基準達成状況を評価するレポートをまとめ、2013年5月下旬〜6月上旬に発表する。ポジティブな評価だった場合は、欧州委が加盟国の財務相に対し、ラトビアのユーロ導入を提案する。ユーロ加盟国から特定多数決で賛同が得られれば、2013年下半期のEU議長国(リトアニア)の期間中に、ECBや欧州理事会での決議を経た後に、EU閣僚理事会(理事会)によりラトビアのユーロ導入に関する最終決定がなされる見通し。
EU情報誌「ユーラクティブ」(3月4日)によると、ラトビアのバルディス・ドムブロフスキス首相は、ユーロ導入が決定すれば、投資が増えて為替コストが低下するなどの利益をもたらし、社会不安を軽減するとの見方を示している。また、国民もユーロ加盟に賛同するだろうとの期待を表明した。
(小林華鶴)
(ラトビア・ユーロ圏)
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