訪日インバウンド伸び率で、メキシコ国籍者が3年連続首位
2026年2月16日
メキシコからの訪日外客数(インバウンド客数)が好調だ。2019年を基準にした伸び率をみると、メキシコ国籍者が3年連続で(2023~2025年)1位だった。
入国地点別には、成田空港(メキシコと直行便)からの入国率が相対的に下がった。対照的に、羽田空港と関西国際空港の利用が増えている。そのほとんどが、在米のメキシコ国籍保有者と想定できる。ヒスパニック系のインバウンドが伸びていることは、注目に値するだろう。
また、実質実効為替レートを比較してみると、2020年と比べ日本円の実質価値が約30%低下した。一方、メキシコペソは約34%上昇している。この開きの拡大が、日本への旅行に実質的な割安感をもたらした。
メキシコ国籍者が3年連続で伸び率最大
日本政府観光局(JNTO)は2026年1月21日、訪日外客数統計を発表した(速報値)。この統計によると、2025年の推計値は前年比15.8%増の4,268万3,600人。統計公開開始以降、過去最高になった。また、2019年(新型コロナウイルス感染拡大開始前)を基準にした国籍者別伸び率では、メキシコが3年連続で(2023~25年)国・地域別1位になった(注1)。ちなみに、中東地域(注2)が2年連続で(2024~25年)2位、米国が同じく2年連続3位だった(表1参照)。
ここで、2023年(日本が水際対策措置を通年で緩和した年)以降の訪日入国者数を比較してみる。メキシコは2023年、9万4,684人だった(2019年比32.0%増)。2024年15万1,835人(同約2.1倍)、2025年20万400人(同約2.8倍)だった。中東地域は2024年16万6,259人(同1.7倍)、2025年25万7,200人(同約2.7倍)。米国国籍者は2024年272万4,594人(同1.6倍)、2025年330万6,800人(同約1.9倍)だ。
なお、2025年の訪日外客を実数で国・地域別にみると、(1)韓国が945万9,600人で最多(前年比7.3%増)。これに、(2)中国の909万6,300人(同30.3%増)、(3)台湾676万3,400人(同11.9%増)、(4)米国330万6,800人(同21.4%増)、(5)香港251万7,300人(同7.3%減)が続いた。前年比にすると、中国はこの中で最も高かったことになる。しかし、足元では中国政府が2025年11月に訪日自粛の注意喚起を発出したことで、訪日客数が減少傾向だ。12月の訪日客数は前年同月比45.3%減と大きく落ち込んでいる。
| 国・地域 | 2019年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 人数 | 2019年比 | 2019年比伸び率順位 | 2019年比 | 2019年比伸び率順位 | 2019年比 | 2019年比伸び率順位 | 人数 | |
| メキシコ | 71,745 | 132.0 | 1 | 211.6 | 1 | 279.3 | 1 | 200,400 |
| 中東地域 | 95,160 | 115.1 | 6 | 174.7 | 2 | 270.3 | 2 | 257,200 |
| 米国 | 1,723,861 | 118.7 | 4 | 158.1 | 3 | 191.8 | 3 | 3,306,800 |
| イタリア | 162,769 | 93.6 | 14 | 141.2 | 7 | 190.1 | 4 | 309,400 |
| スペイン | 130,243 | 89.0 | 16 | 140.0 | 9 | 188.6 | 5 | 245,600 |
| カナダ | 375,262 | 113.5 | 7 | 154.4 | 5 | 183.3 | 6 | 688,000 |
| ドイツ | 236,544 | 98.7 | 10 | 137.8 | 10 | 181.6 | 7 | 429,500 |
| インド | 175,896 | 94.6 | 13 | 132.5 | 13 | 179.1 | 8 | 315,100 |
| その他 | 1,072,989 | 95.7 | 12 | 135.4 | 11 | 173.0 | 9 | 1,856,200 |
| 豪州 | 621,771 | 98.6 | 11 | 148.0 | 6 | 170.2 | 10 | 1,058,300 |
| 韓国 | 5,584,597 | 124.6 | 2 | 157.9 | 4 | 169.4 | 11 | 9,459,600 |
| ロシア | 120,043 | 35.0 | 23 | 82.7 | 23 | 162.4 | 12 | 194,900 |
| インドネシア | 412,779 | 104.0 | 8 | 125.4 | 15 | 155.2 | 13 | 640,600 |
| シンガポール | 492,252 | 120.1 | 3 | 140.4 | 8 | 147.5 | 14 | 726,200 |
| 台湾 | 4,890,602 | 85.9 | 17 | 123.6 | 16 | 138.3 | 16 | 6,763,400 |
| 北欧地域 | 141,004 | 80.1 | 20 | 106.9 | 19 | 136.8 | 18 | 192,900 |
| フランス | 336,333 | 82.5 | 19 | 114.5 | 18 | 136.1 | 19 | 457,600 |
| マレーシア | 501,592 | 82.9 | 18 | 101.1 | 21 | 126.9 | 20 | 636,600 |
| 英国 | 424,279 | 75.8 | 21 | 103.1 | 20 | 126.1 | 21 | 535,000 |
| 香港 | 2,290,792 | 92.3 | 15 | 117.1 | 17 | 109.9 | 22 | 2,517,300 |
| 中国 | 9,594,394 | 25.3 | 24 | 72.8 | 24 | 94.8 | 23 | 9,096,300 |
| タイ | 1,318,977 | 75.5 | 22 | 87.1 | 22 | 93.5 | 24 | 1,233,100 |
注:2025年だけが速報値。
出所:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」からジェトロ作成
在米ヒスパニック系の訪日が増加した可能性
日本の出入国在留管理庁は、訪日外客数を入国地点(空港や港など)別に公表している。メキシコ国籍者については、2022年まで約80%が成田空港から入国していた。しかし2023と2024年は、それぞれ75.3%、73.5%にとどまった。対照的に、羽田空港や関西空港(関空)の比率が上がっている(表2参照)。
このうち、メキシコと直行便があるのは、成田だけだ。メキシコ市国際空港との間で、アエロメヒコ航空と全日空が毎日1便ずつ就航している。アエロメヒコ航空は、新型コロナ感染拡大期に運航を一時停止していたが、2023年に再開している。すなわちメキシコとの直行便自体は、増えも減りもしていない。その中で羽田と関空からの入国増が目立つのは、なぜか。
まず改めて確認しておくと、両空港にはメキシコ以外からの便しか就航していない(主に米国やカナダなど)。他方で、メキシコ人が米国に入国する場合、国際航空便を乗り換える(トランジット)目的でも、在メキシコの米国在外公館などで観光用B-1ビザを事前取得しておく必要がある。しかも、公館での領事面接を予約するだけで、半年~1年ほどを要するという。
そう考えると、両空港への入国者のほとんどが、在米ヒスパニック系のメキシコ国籍保有者と想定できる。メキシコ国籍者の入国数が増加する傾向は、今後も続く可能性がある。その際、その入国者が必ずしもメキシコ在住とは限らないことを認識しておくのも有益だろう。
| 入国地点 | 2018年 | 2019年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 入国者数 | 割合 | 入国者数 | 割合 | 入国者数 | 割合 | 2018年比 | 入国者数 | 割合 | 2018年比 | 入国者数 | 割合 | 2018年比 | |
| 成田空港 | 56,674 | 80.4 | 57,821 | 80.4 | 7,823 | 79.5 | 13.8 | 72,156 | 75.3 | 127.3 | 112,276 | 73.5 | 198.1 |
| 羽田空港 | 5,768 | 9.5 | 6,839 | 9.5 | 1,643 | 16.7 | 2.9 | 17,129 | 17.9 | 30.2 | 23,539 | 15.4 | 41.5 |
| 関西国際空港 | 3,849 | 6.4 | 4,574 | 6.4 | 303 | 3.1 | 0.5 | 4,200 | 4.4 | 7.4 | 10,056 | 6.6 | 17.7 |
| その他 | 2,599 | 3.8 | 2,725 | 3.8 | 75 | 0.8 | 0.1 | 2,307 | 2.4 | 4.1 | 6,862 | 4.5 | 12.1 |
| 合計 | 68,890 | 100.0 | 71,959 | 100.0 | 9,844 | 100.0 | 17.4 | 95,792 | 100.0 | 169.0 | 152,733 | 100.0 | 269.5 |
出所:出入国在留管理庁データからジェトロ作成
メキシコペソの強さが訪日を後押し
海外旅行者が行き先を検討する上で重要視することの1つが、コストパフォーマンスだ。特に個人旅行者(FIT)の場合、自身の予算でどれほどの体験や買い物などが旅ナカでできるかをしばしば旅マエに検討する。仮にその際に意識しなかったとしても、航空券やツアーの購入時には自国通貨の他国通貨に対するポジショニングを感じ取ることになる。
この観点から、メキシコペソ、米ドル、日本円の3通貨について、2019年1月~2025年12月の推移を確認してみる。そこで参照したのが、国際決済銀行(BIS)が発表するブロードベースの実質実効為替レートだ(注3)。2020年の期中平均指数を100とした場合、次のとおりになる。
- メキシコペソ:
136.96(2023年12月)→120.63(2024年12月)→133.72(2025年12月) - 米ドル:
106.66(2023年12月)→113.45(2024年12月)→107.44(2025年12月) - 日本円:
73.40(2023年12月)→71.85(2024年12月)→68.82(2025年12月)
一般に円安が進行すると、海外旅行者にとって日本旅行にかかる費用が安くつく。これが、日本を旅行先に選ぶ大きな要因の1つになることは間違いないだろう。他方で、メキシコペソ自体の通貨高要因も見逃せない。2023年1月~2025年12月のメキシコペソの期中平均は128.69で、日本円72.78と開きがある。メキシコ人消費者の「日本は安い」という感覚は、両者レートの開きが大きいほど強くなるだろう。そうした消費者心理が、日本への旅行を後押しした可能性が高い。
注:2020年の期中平均を100として計上。
出所:国際決済銀行(BIS)データポータルからジェトロ作成
- 執筆者紹介
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ジェトロデジタルマーケティング部ECビジネス課
志賀 大祐(しが だいすけ) - 2011年、ジェトロ入構。展示事業部展示事業課、ジェトロ・メキシコ事務所海外実習、お客様サポート部貿易投資相談課、海外調査部米州課、ジェトロ・メキシコ事務所などを経て2024年10月から現職。






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