南アでもアニメキャラが描かれたTシャツに関心高まる
製品化は版権獲得までの交渉と契約までのスピードがカギ

2023年12月15日

ジェトロでは、南アフリカ共和国(以下、南ア)のコンテンツ市場の関係者にインタビューを実施し、市場調査を行っている。今回はキャラクタービジネスを展開するパワーハウス・クロージングにインタビューした。同社は版権を取得し、キャラクターが描かれた衣料品を製造、複数の大手小売店に卸している。近年は日本の「ナルト」がデザインされたTシャツを製造した。版権獲得交渉を担当する副社長のナディーン・ホーウッド氏に聞いた(取材日:2023年9月15日)。

質問:
パワーハウス・クロージングと自身の業務内容は。
答え:
当社は長年、ディズニーやワーナー・ブラザースなどのキャラクター物の衣料品を製造し、南アの衣料品店に卸している。私はこの仕事に28年携わっており、キャラクターの版権獲得までの交渉、契約業務を行っている。
質問:
衣類にプリントするキャラクターはどう選ぶか。
答え:
常に新しいトレンドをつかむため、私は年に6~7回は世界各地に出向き、市場調査を行っている。最近は英国・ロンドン、オランダ・アムステルダム、米国、オーストラリア、スペインの主要都市を訪問した。展示会に参加する場合もあるが、消費者の目線で店舗を回りながら、消費者の購買動向、最新の服飾トレンドをつかんでいる。小売店側から製造依頼がある場合もあるが、ほとんどは当社からトレンドに乗っ取った提案を行っている。
質問:
なぜ日本アニメが描かれた衣料品を製造するようになったのか。次に取り組みたいアニメ作品はあるか。
答え:
市場調査の過程で、2年ほど前から日本アニメに関する衣料品を各国の店舗で見かけるようになった。その中でも「ナルト」が多いと感じ、そのキャラクターが描かれた衣料品を販売するに至った。ミスタープライス(注)だけでなく、他の小売店でも販売したが、売り上げは当初想定していた以上に好調だった。次は「ワンピ―ス」の商品化権を獲得したい。最近は各国の店舗で「ワンピース」関連アイテムを見かけるようになった。
質問:
「ナルト」や「ワンピース」製品は少年向けか。少女向けのアニメのキャラクターについてはどうか。
答え:
それらの製品のターゲット層は7歳から14歳の少年だが、購買層は青年男性も含まれるので、サイズ展開は多い。少年向け衣類に比べ、少女向けアニメは難しいかもしれない。ただ、その中でも絵が非常に美しい「美少女戦士セーラームーン」には可能性を感じる。
質問:
南アで日本アニメの版権を獲得する上での困難は。
答え:
日本アニメだからといって特別な困難はないと思うが、あえて言うならば、どのような版権をもったステークフォルダーがいて、誰にアクセスすべきか分かりづらい。どのような製品であっても、版権獲得までに非常に長い時間がかかる。われわれはできるだけ中間エージェントを通さずに版権を持つ会社と直接交渉したい。交渉先を見つけるまでに時間がかかり、さらに門戸を開いてもらうには信頼を積み上げるための時間が必要だ。われわれの会社は世界に名が通っているわけでないので、信頼を獲得するまでの努力は惜しまない。日本アニメのキャラクタービジネスはまだ始めたばかりだが、アクセスまでの困難は少しずつ解消されることに期待する。現在、日本のテレビ局と取引しているが、彼らにアプローチできたのは、信頼のあるロンドンのエージェントの紹介がきっかけだった。日本の業界にアクセスするにはネットワークが非常に重要だと感じた。
質問:
南アで今後、日本アニメのキャラクター衣類の人気をさらに高める上で、何が必要か。
答え:
版権を有している会社との交渉をスピーディーに行い、トレンドが過ぎ去る前にタイムリーに次の衣類を展開することが大事だと感じている。現在、日本のあるアニメの版権獲得に取り組んでいるが、既に4カ月を費やしていて非常に難航している。権利を獲得できても、その時には既にそのアニメのブームが過ぎ去っていれば、製品は売れない。オンラインやEメールでは限界を感じる場合、できるだけ担当者と直接会って交渉するよう心がけている。われわれは「ナルト」商品で南ア消費者に日本アニメの衣類に関心をもってもらうことができた。その関心が覚める前に、次のアニメキャラクター衣類を展開したい。

注:
衣料品や生活雑貨などを取り扱う大手小売店。
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
堀内 千浪(ほりうち ちなみ)
2014年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ浜松などを経て、2021年8月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
新田 直子(にった なおこ)
2022年からジェトロ・ヨハネスブルク事務所勤務。2023年から執筆業務に従事。