コロナ禍を経て化粧品市場が再拡大(コロンビア)
EC販売やライブコマースが浸透
2022年11月10日
コロンビアの化粧品・パーソナルケア用品市場(注1)が、改めて拡大している。
コロンビア産業連盟によると、2021年の市場規模は9兆4,570億ペソ(約2,932億円、1ペソ=約0.031円)。この10年で、22.6%伸びている(図1参照)。もっとも、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年は落ち込んだ(前年比9.9%減)。それが、2021年は前年比3.7%増に回復した。同連盟は、今後3年間は、年11.6%ずつ拡大すると見ている。

出所:コロンビア産業連盟
中南米3位のEC市場、その3割が化粧品・パーソナルケア用品
コロンビアの化粧品小売市場では、ディスカウントショップとともに、電子商取引(EC)が年々、存在感を増している。中南米でECプラットフォームサービスを展開するブラックシップの調査によると、コロナ禍を経た2021年、コロンビアのEC市場は急拡大した。実に前年比40%増の伸びだ。その規模39兆8,000億ペソ。中南米ではブラジル、メキシコに次いで第3位に当たる。
カテゴリー別でみると、化粧品・パーソナルケア用品は全体の31%を占め、第6位になっている。利用者の人気を集めるのは、メルカドリブレやダフィティなどの大手越境EC(注2)だ。路面店やショッピングモール内への出店を加速する国内の化粧品小売専門店も、自社のECサイトを有しているところがほとんどだ。
化粧品に限らず、コロンビアでECを利用すると気づくのが、多くのサイトがチャット機能を有していることだ。商品に関する質問や店舗の在庫確認、注文済みの商品の追跡、返品などが可能だ。さらには、サイトからチャットアプリのワッツアップ経由で店舗にコンタクトを取れるなど、非常に利便性が高い。最近では、ECとライブ配信を組み合わせた「ライブコマース」も浸透してきている。配信者と視聴者の双方向のコミュニケーションが可能。消費者は商品をより詳細に見たり、ライブコマース限定のプロモーションにアクセスしたりできる。ブイテックス(注2)は「これからのECのトレンドは間違いなくライブコマースだ」と語った(「ポルタフォリオ」紙10月4日付)。
また、コロンビア発の買い物代行アプリ、ラピ(Rappi)には多くの化粧品専門店が出店している。その利用者数は現在、800万人を超える。アプリから注文すると、宅配員が店舗で商品を受け取り、注文者に届ける仕組みだ。最短で数10分~2時間ほどで届くことから、「今すぐ使いたい」という消費者のニーズを満たすことができる。2019年には、英国の化粧品製造販売大手エイボン・プロダクツがラピと提携して宅配サービスを開始するなど(2019年2月7日付ビジネス短信参照)、大手メーカーも参入している。
こうしてみると、コロンビアで化粧品を販売しようとする際の留意点が見えてくる。すなわち、あらゆる販売チャネルを統合し、消費者がどの販路からもスムーズに購入ができる多チャネル戦略を取り入れることだ。これによって、コロンビアの消費者から選ばれやすくなりそうだ。
中国や韓国からの輸入に勢い、日本は低調
コロンビアでの化粧品・パーソナルケアの市場拡大傾向は、輸入額にも表れている。2021年の化粧品の輸入額は4億9,500万ドルで、前年比19%増(図2参照)。2019年比でも10%増になる。つまり、パンデミック前の水準を上回ったかたちで、順調な回復と言える。国別には、メキシコが最多で1億4,300万ドル。全体の29%を占めた。次いで、米国(構成比:12%)、ブラジル(12%)、スペイン(10%)、中国(7%)と続く。

出所:SICEX
メキシコからの輸入は、歯磨き粉が35%と最も多い。そのほかは、シャンプー(29%)、身体用の防臭剤および制汗剤(13%)など、パーソナルケア用品が大半だ。
注目すべきは、中国からの輸入額がこの6年で3倍に伸びたことだ。2021年の輸入額は3,623万ドル。この中で、最も多い品目は「メーキャップ用またはスキンケア調製品」だった(図3参照)。中でも、シートマスクやリキッドファンデーションが多い。輸入者としては、ユニリーバやエクシト(コロンビアでの小売り最大手)のシェアが大きく(注3)、当該品輸入総額の20%ほどを占める。加えて、中国発の生活雑貨店Minisoも約4%の144万ドルと、存在感を示している。ちなみにMinisoは、2018年にコロンビアに進出した。生活雑貨に加え、スキンケア用品やメーキャップ用品の品ぞろえが豊富で、価格帯も魅力的だ。例えば、シートマスクが1枚6,900ペソから、化粧水1万4,900ペソからと、手頃になっている。

出所:SICEX
また近年では、韓国コスメも台頭してきている。韓国からの輸入額は2015年に26万6,000ドル程度に過ぎなかった。しかし、2021年には386万3,000ドル。14.5倍に拡大した。輸入の7割強はメーキャップ用または肌の手入れ用調製品だ。ヒアルロン酸入りのジェルや目元用のシートマスクなど、スキンケア用品が多く輸入されている(図4参照)。金額規模としては中国の約10分の1にとどまるとは言え、勢いはある。例えば、輸入化粧品を主に扱う専門店やドラッグストア、アジア系食材の輸入会社が、韓国コスメを取り扱うようになった。このように販売チャネルが拡大し、Kビューティーという言葉も浸透してきている。

出所:SICEX
一方、日本からの輸入は減少している。2015年に81万7,000ドルだったのが、2021年は24万2,000ドル。3分の1以下に減少したかたちだ(図5参照)。その最大の原因は、輸入の70%以上を占めていたヘアカラー剤のメーカーが、生産地を日本からインドネシアに変えたことにある。その他品目(メーキャップ用品やスキンケア用品など)の合計額は、この6年間ほぼ横ばいだ。なお、その構成を見ると、68%が目元用のメーキャップ用化粧品(アイライナーやアイブロウなど)に偏っている。

出所:SICEX
ブラッシュ・バー(注4)の店員によると、かつてのコロンビアでは化粧で美しく見せることを追求する人が多かった。しかし近年は、素肌の美しさに重きを置く人が増えてきた。そうしたことから、「肌の美しさを高める最新テクノロジーを取り入れた製品や、革新的な製品、日本独自の成分が含まれている製品などは、消費者が日本産化粧品を手に取るポイントになるだろう」と語った。同店で販売されている韓国製の化粧水やクリームなどでも、目新しく効能が優れている商品が人気だからだ。例えば、ゆず成分が配合されているものや、キャロットオイル(ニンジン根浸出油)が配合されているものが、売れ筋になっているという(2022年10月19日ヒアリング)。
化粧品販売にはNSO番号取得を
最後に、規制面に触れておく。まず、コロンビアで化粧品を販売するためには、医薬品食品監督庁(INVIMA)で必須衛生通知(NSO)を取得する必要がある。取得に際しては、成分、用法、効能・効果を示す研究結果、ラベルデザイン、容器の素材、その他必要な事項が審査される。なお、輸入品については、自由販売証明書の提出も求められる。
審査をクリアすると、NSO番号が発行される。この番号は、商品ラベルに印字されなければならない。手続きはすべてオンラインで行われる。費用は2022年時点で274万4,648ペソ、有効期限7年とされている。失効前なら更新が可能で、この場合の費用は111万8,837ペソだ。
また日本からの輸入関税は、15%になっている品目が多い(注5)。
- 注1:
- スキンケア用品、メーキャップ用化粧品、ヘアケア用品、口腔(こうくう)ケア用品、ひげそり用調製品および香水などを含む。
- 注2:
- メルカドリブレは、南米最大のeマーケットプレースと言われる。本社をブエノスアイレス(アルゼンチン)に置く。ダフィティは、アパレル・美容関連品専門を専門に扱う。本社は、サンパウロ(ブラジル)。 また、ブイテックスはクラウド型ECプラットフォーム企業で、コロンビアでシェア45%を誇る。本社は、リオデジャネイロ(ブラジル)だ。
- 注3:
- 輸入者情報の出所は貿易関連の情報を扱う民間の調査会社SICEX。
- 注4:
- ブラッシュ・バーは、コロンビアとチリで輸入化粧品店を展開している。
- 注5:
- 対象は、香水類およびオーデコロン類(HS3303)、美容・メーキャップ用化粧品・日焼け止め(HS3304)、ヘアケア用品(HS 3305)、口腔衛生用の調製品(HS 3306)、ひげそり用調整品(HS 3307)、せっけん・有機界面活性剤およびその調製品(HS3401)。

- 執筆者紹介
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ジェトロ・ボゴタ事務所
茗荷谷 奏(みょうがだに かな) - 2016年、ジェトロ入構。ジェトロ・ボゴタ事務所で管理・渉外・調査を担当。