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2020年の貿易は輸出入ともに大幅減、貿易黒字は拡大(スイス)

2021年8月10日

2020年のスイスの貿易は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受け、輸出入ともに記録的な落ち込みとなった。輸出は最大貿易品目の医薬品に牽引され、2021年第1四半期にはコロナ以前の水準に戻った。2020年の対日貿易は輸出が減少し、黒字幅は縮小した。

輸出入ともに記録的な落ち込み、2021年は回復の兆し

2020年の貿易は、輸出が前年比7.0%減の2,252億9,100万スイス・フラン(約27兆349億円、CHF、1CHF=約120円)。輸入は11.1%減の1,823億1,200万CHFだった。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、ともに記録的な落ち込みだ。貿易収支は429億7,900万CHFの黒字で過去最高額を更新。黒字幅は2019年より57億8,500万CHF拡大した。

輸出を品目別にみると(表1参照)、最大輸出品目である化学品・医薬品(構成比51.7%)を除き、全品目で前年よりも減少した。構成比が2番目に大きい精密機械・時計・宝飾品(17.9%)は特に落ち込み、前年比20.1%減だった。中でも時計(7.5%)が21.7%減、宝飾品・貴金属製品(3.4%)が34.3%減と大きく落ち込んだ。スイス時計協会によると、時計の輸出は、全世界的にロックダウンが続いていた第2四半期に前年同期比61.6%減と大きく落ち込んだ。その後、第3四半期以降に最大の輸出先である中国市場が急速に回復したことに伴い、第4四半期は4.3%減に下げ幅を縮めた。

国・地域別にみると(表2参照)、EU(構成比48.3%)、アジア大洋州(18.4%)、米国(17.5%)の3主要経済圏とも、輸出が軒並み減少した。個々の国でみても、多くに向けて減少した。その中で、中国(6.5%)は化学品・医薬品と時計に牽引され、前年比10%増を確保した。特に中国向けの時計は、第3四半期に前年同期比61.5%増、第4四半期に前年同期比41.6%増と大きく伸びた。

輸入を品目別に見ると(表1参照)、ほぼ全ての品目で減少した。例外は、農林水産品(構成比8.2%)の前年比1.7%増、繊維・衣料製品(6.8%)の3.1%増だ。最大輸入品目の化学品・医薬品(28.1%)は、医薬品と免疫学的製品が伸びたものの、製剤用有効成分と原材料がそれを上回るペースで縮小し、2.7%減となった。

国・地域別に見ると(表2参照)、輸入全体の66.3%を占めるEUが8.9%減となった。欧州では、最大の輸入元であるドイツ(構成比27.1%)が8.1%減となった。英国(2.8%)からも、同国からの最大輸入品目の化学品・医薬品が大きく落ち込んだことを受け、45.8%減と大幅に縮小した。欧州以外では、米国(6.3%)が16.5%減となった。一方、アジア大洋州(18.4%)では、繊維・衣類の増加によって中国(8.8%)が8.1%増。化学品・医薬品などに牽引されて日本(2.0%)が9.9%増となり、全体で6.9%増加した。

2021年に入ると、輸出は「新型コロナ危機」以前の水準に回復。第1四半期の輸出は、化学品・医薬品の増加が大きく貢献した。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年第4四半期を上回り、四半期ベースで過去2番目に高い581億1,000万CHFとなった。一方で、輸入は468億3,000万CHFで、2019年第4四半期に37億6,300万CHF及ばなかった。

表1:スイスの主要品目別輸出入(通関ベース)(単位:100万CHF、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2019年 2020年 2019年 2020年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
化学品・医薬品 114,575 116,424 51.7 1.6 52,705 51,272 28.1 △ 2.7
階層レベル2の項目医薬品 97,550 99,107 44.0 1.6 37,707 39,438 21.6 4.6
精密機械・時計・宝飾品 50,490 40,330 17.9 △ 20.1 30,297 19,264 10.6 △ 36.4
階層レベル2の項目時計 21,718 17,000 7.5 △ 21.7 3,789 2,613 1.4 △ 31.0
階層レベル2の項目精密機械 17,010 15,601 6.9 △ 8.3 8,436 7,857 4.3 △ 6.9
階層レベル2の項目宝飾品・貴金属製品 11,762 7,729 3.4 △ 34.3 18,073 8,794 4.8 △ 51.3
機械および電気・電子機器 32,064 28,452 12.6 △ 11.3 32,002 29,970 16.4 △ 6.4
階層レベル2の項目産業用機械 18,299 15,676 7.0 △ 14.3 12,580 11,290 6.2 △ 10.3
階層レベル2の項目電気・電子機器 11,214 10,161 4.5 △ 9.4 11,755 11,171 6.1 △ 5.0
金属製品 13,585 12,066 5.4 △ 11.2 14,942 13,000 7.1 △ 13.0
農林水産物 10,057 9,625 4.3 △ 4.3 14,619 14,864 8.2 1.7
階層レベル2の項目食品・飲料・たばこ 9,056 8,686 3.9 △ 4.1 10,784 11,140 6.1 3.3
輸送用機器 5,652 4,611 2.0 △ 18.4 19,503 17,409 9.5 △ 10.7
繊維・衣料製品 4,984 4,679 2.1 △ 6.1 11,975 12,350 6.8 3.1
燃料・エネルギー 2,497 1,904 0.8 △ 23.8 9,312 5,629 3.1 △ 39.6
階層レベル2の項目電力 1,786 1,547 0.7 △ 13.3 1,387 1,254 0.7 △ 9.6
階層レベル2の項目原油・石油製品 694 348 0.2 △ 49.9 6,663 3,578 2.0 △ 46.3
合計(その他含む) 242,344 225,291 100.0 △ 7.0 205,150 182,312 100.0 △ 11.1

注:貴金属・宝石、芸術品、骨とう品(加工して貨幣またはその代替品として流通可能なもの)は含まない。
出所:スイス連邦財務省関税局

表2:スイスの主要国・地域別輸出入(通関ベース)(△はマイナス値)
国・地域名 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2019年 2020年 2019年 2020年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 114,948 108,786 48.3 △ 5.4 132,805 120,936 66.3 △ 8.9
階層レベル2の項目ユーロ圏 104,815 98,790 43.8 △ 5.7 122,802 111,086 60.9 △ 9.5
階層レベル3の項目ドイツ 44,085 40,412 17.9 △ 8.3 53,821 49,471 27.1 △ 8.1
階層レベル3の項目フランス 14,312 11,829 5.3 △ 17.4 15,114 12,797 7.0 △ 15.3
階層レベル3の項目イタリア 14,069 12,983 5.8 △ 7.7 18,748 16,799 9.2 △ 10.4
階層レベル3の項目ベルギー 4,366 4,067 1.8 △ 6.8 3,574 3,017 1.7 △ 15.6
階層レベル2の項目非ユーロ圏 10,133 9,996 4.4 △ 1.4 10,002 9,850 5.4 △ 1.5
英国 9,195 7,802 3.5 △ 15.2 9,427 5,110 2.8 △ 45.8
アジア大洋州(注) 45,049 41,395 18.4 △ 8.1 31,428 33,595 18.4 6.9
階層レベル2の項目ASEAN 8,330 7,706 3.4 △ 7.5 7,564 8,560 4.7 13.2
階層レベル2の項目中国 13,392 14,734 6.5 10.0 14,894 16,096 8.8 8.1
階層レベル2の項目日本 8,080 6,953 3.1 △ 13.9 3,356 3,688 2.0 9.9
階層レベル2の項目香港 5,524 3,627 1.6 △ 34.3 1,296 1,242 0.7 △ 4.2
階層レベル2の項目韓国 3,432 2,860 1.3 △ 16.7 798 838 0.5 5.0
階層レベル2の項目インド 1,705 1,391 0.6 △ 18.4 1,960 1,655 0.9 △ 15.6
米国 41,989 39,493 17.5 △ 5.9 13,737 11,474 6.3 △ 16.5
カナダ 3,953 3,710 1.6 △ 6.2 582 660 0.4 13.4
ロシア 3,106 2,779 1.2 △ 10.5 253 204 0.1 △ 19.3
ブラジル 2,512 2,110 0.9 △ 16.0 575 593 0.3 3.1
メキシコ 1,436 1,273 0.6 △ 11.4 628 591 0.3 △ 5.8
合計(その他含む) 242,344 225,291 100.0 △ 7.0 205,150 182,312 100.0 △ 11.1

注:アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
出所:スイス連邦財務省関税局

EUとの制度的条約交渉を中止

スイスはEUに加盟していない。しかし、世界各国と個別に、または同国が加盟する欧州自由貿易連合(EFTA)を通じて自由貿易協定(FTA)を締結し、貿易条件の優位性維持を試みている(表3参照)。

一方で、FTAに関して問題提起される例もある。EFTAとインドネシアとの間で2018年12月に署名されたFTAがその一例だ。スイスの農業団体は、インドネシア産パーム油に対する関税引き下げが環境破壊などにつながるとして、当該FTA締結に反対する立場から国民投票を訴えていた。その結果、2021年3月に同FTA締結の可否を問う国民投票が実施された。その結果、51.65%の賛成票で可決され、現在批准手続きに入っている。

EUと長年、膠着(こうちゃく)状態が続いていた制度的条約(Institutional Agreement)については、スイス連邦参事会(内閣)が2021年5月26日、条約に署名しないことを発表(2021年5月26日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長宛てにその旨の書簡を提出した。スイス側はこれまで、「EU市民の自由移動の原則を保障する命令がスイスに直接適用されないこと」「スイスの賃金水準維持」「スイスの州政府補助金の維持」について明確化を求め、EUとの対話を重ねてきた。しかし、最終的に合意に至らなかったことになる。この決定により、7年間にわたる交渉は中止となった。

表3:スイスのFTA発効・署名・交渉状況(単位:%)(—は値なし)
項目 国・地域 発効日 スイスの貿易に占める構成比
(2020年)
往復 輸出 輸入
発効済み EU 1973年1月1日 56.4 48.3 66.3
中国 2014年7月1日 7.6 6.5 8.8
英国 2021年1月1日 3.2 3.5 2.8
日本 2009年9月1日 2.6 3.1 2.0
シンガポール 2003年1月1日 2.0 2.2 1.9
湾岸協力会議(GCC)諸国 2014年7月1日 1.9 2.3 1.4
香港 2012年10月1日 1.2 1.6 0.7
カナダ 2009年7月1日 1.1 1.7 0.4
トルコ 1992年4月1日 0.8 0.7 0.8
韓国 2006年9月1日 0.5 1.3 0.9
メキシコ 2001年7月1日 0.5 0.6 0.3
EFTA 1960年5月3日 0.3 0.3 0.2
合計(注1) 80.2 75.1 88.0
署名済み インドネシア 2018年12月16日 0.2 0.2 0.2
グアテマラ 2015年6月22日 0.0 0.0 0.0
交渉中 南米南部共同市場(メルコスール、注2) 0.9 1.3 0.4
ロシア・ベラルーシ・カザフスタン関税同盟 0.9 1.4 0.2
インド 0.8 0.6 0.9
ベトナム 0.8 0.2 1.4
タイ 0.4 0.4 0.5
マレーシア 0.3 0.3 0.4
アルジェリア 0.1 0.1 0.0
FTAカバー率(交渉中も含む) 84.5 79.6 92.0

注1:「発効済み」の合計値は、表に記載された以外で発行済みのFTAに含まれる国・地域も含めた合計。
具体的には、以下のFTAがこの「合計」に含まれている。
イスラエル、フェロー諸島、パレスチナ、モロッコ、北マケドニア、ヨルダン、チリ、チュニジア、レバノン、南部アフリカ関税同盟(SACU/ボツワナ、レソト、ナミビア、南アフリカ共和国、エスワティニ(旧スワジランド))、エジプト、セルビア、アルバニア、コロンビア、ペルー、ウクライナ、モンテネグロ、中米諸国(パナマ、コスタリカ)、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ジョージア、フィリピン、エクアドル(協定締結順)。
注2:南米南部共同市場は、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ。"
出所:スイス連邦経済省経済事務局「FTA一覧」。スイス連邦財務省関税局貿易統計

対日貿易黒字は減少

2020年の対日貿易は、輸出が前年比13.9%減の69億5,300万CHF、輸入が9.9%増の36億8,800万CHFとなった(表4参照)。貿易黒字は前年より14億5,900万CHF縮小し、32億6,500万CHFだった。

主な対日輸出品目をみると、最大品目の医薬品(構成比49.8%)が前年比6.2%減。次いで構成比が大きい腕時計(16.2%)も、26.3%減と大きく減少した。一方、輸入は、最大品目である医薬品(41.5%)が2.0倍と大きく伸びた。対日貿易に関わる最近の動きとして、2021年4月21日から新制度に移行したEUの混合食品輸入規制がある。スイスとEUは、EUとの7分野に関する第1次バイラテラル協定(1999年6月調印、2002年6月1日発効)の中で、農産物の市場アクセスを相互に保証しており、同等の輸入要件を適用することを定めている。今回のEUの混合食品規制の変更部分は、スイスでも同日に施行された。これにより、日本からスイスに混合食品を輸出する際にも、動物性加工済み原料がEU 認定施設由来であることなどを証明するため、公的機関が発行する公的証明書または事業者による自己宣誓書の添付が必要になった。

表4:スイスの対日主要品目別輸出入(通関ベース)

輸出(FOB)  (単位:100万CHF、%)(△はマイナス値)
品目 2019年 2020年
金額 金額 構成比 伸び率
医薬品 3,688 3,461 49.8 △ 6.2
腕時計 1,532 1,129 16.2 △ 26.3
宝飾品 576 307 4.4 △ 46.7
医療機器 445 456 6.6 2.4
一般機械 325 300 4.3 △ 7.8
電気・電子機器 133 120 1.7 △ 10.2
たばこ 158 67 1.0 △ 57.6
化学原材料 119 138 2.0 16.3
検査・計測機器 134 131 1.9 △ 1.7
金属部品 101 108 1.6 6.4
飲料 124 123 1.8 △ 0.3
合計(その他含む) 8,080 6,953 100.0 △ 13.9
輸入(CIF) (単位:100万CHF、%)(△はマイナス値)
品目 2019年 2020年
金額 金額 構成比 伸び率
医薬品 761 1,532 41.5 101.2
乗用車 526 472 12.8 △ 10.2
宝飾品 185 93 2.5 △ 49.7
一般機械 335 230 6.2 △ 31.4
電気・電子機器 241 209 5.7 △ 13.0
化学原材料 195 141 3.8 △ 27.7
光学機器 123 94 2.5 △ 23.6
建設機械 70 70 1.9 △ 0.7
自動車部品 59 48 1.3 △ 19.4
検査・計測機器 56 51 1.4 △ 7.7
医療機器 59 49 1.3 △ 17.9
合計(その他含む) 3,356 3,688 100.0 9.9

出所:スイス連邦財務省関税局

執筆者紹介
ジェトロ・ジュネーブ事務所
城倉 ふみ(じょうくら ふみ)
2011年、ジェトロ入構。進出企業支援・知的財産部知的財産課、ジェトロ鹿児島の勤務を経て、2018年9月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・ジュネーブ事務所
マリオ・マルケジニ
ジュネーブ大学政策科学修士課程修了。スイス連邦経済省経済局(SECO)二国間協定担当部署での勤務を経て、2017年より現職。

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