ハラール認証新制度、進展するも運用は不透明(インドネシア)
飲食品は2024年に、化粧品などは2026年に順次義務化

2021年7月6日

インドネシアでは2014年、ハラール製品保証法(ハラール製品保証に関するインドネシア共和国法2014年33号)が公布された。以来、ハラール義務化に向けた議論が進んできた。

同法の施行は、もともと2019年10月までを予定していた。しかし制度化に時間がかかり、スケジュールが後ろ倒しになっていた(2019年12月25日付ビジネス短信参照)。こうした中で2021年2月、ハラール製品保証の実施に関する政令2021年第39号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(3.70MB)が公布、施行された。

本稿では、最新法令と2021年5~6月に行った関連機関へのヒアリング結果を基に、ハラールの義務化や、認証主体などにかかる最新の状況について解説する。

義務化後も非ハラール品の流通・販売は可能

インドネシアでハラール認証を発行するのは、ハラール製品保証実施機関(Badan Penyelenggara Jaminan Produk Halal:BPJPH)と定められている。一方、その製品などが実際にハラールかどうかは、ハラール検査機関(LPH)が検査する。インドネシア・ウラマー評議会(Majelis Ulama Indonesia:MUI)の食品・薬品・化粧品研究所(LPPOM MUI)がその代表例だ。そこでジェトロは、BPJPH協力標準化センター長のシティ・アミナ氏と、LPPOM MUIエグゼクティブダイレクターのムティ・アリンタワティ氏それぞれに、ハラール制度に関し最新動向についてヒアリングした。

今回公布された政令は、第140条に飲食料品、第141条に化粧品・伝統医薬などについて、表1のとおり、ハラール表示義務化に向けた具体的な日程を記載している。これまでBPJPHなどからハラール義務化案について説明はあったが、具体的な期限を法令に記載したのは初めてだ。一方、同政令2条や92条には、非ハラール品は「ハラールではない」という宣言をパッケージにしなければならないとの記載があり、非ハラール品の継続的な流通・販売が可能とも読み取れる。この点について、今回ヒアリングしたシティ氏、ムティ氏とも「ハラール以外の商品も継続的に流通・販売が可能」と述べた。

表1:ハラールの義務化に関する対応期限
対応期限 主な対象物、サービス
2024年10月17日 飲食料品
2026年10月17日 化粧品、伝統医薬、医薬部外品、サプリメント、化学品、衣料品、文房具など
2029年10月17日 市販薬など

出所:ハラール製品保証の実施に関する政令2021年第39号を基にジェトロ作成

認証の実質的な発行は引き続きMUI

従来、MUIが有していたハラール認証発行の権限は、2019年に宗教省の直下に新設されたBPJPHに移管された。移管に伴い、新たなハラール認証の発行手続きに遅れが出ていたが、現時点でBPJPHを窓口としてハラール認証を取得することが可能になっている。また、 同政令88条には、BPJPHがハラールラベルを規定すると記載がある。一方、ハラール認証を最終的に発行する役割は、依然としてMUIが担っている。この点、シティ氏、ムティ氏とも「MUIが発行するハラールのラベルが継続して使用されている」ことを認めている。

従来の相互認証は継続して有効

従来、インドネシアのハラール認証を取得するには、(1)LPPOM MUIに直接申し込む、または(2)LPPOM MUIが構築した各国のハラール検査機関との相互認証制度を活用する、という2つの方法があった。政令2021年第39号などにより、今後は(1)BPJPHに直接申し込む、または(2)BPJPHが同政令119条、120条に基づき各国政府と合意書(MOU)を締結し、それに基づき認定された各国のハラール検査機関を活用しなければならない。なお、2021年6月現在、BPJPHと合意書を締結している国は1カ国だけだ。

他方、同政令169条には、従来の相互認証期限(注)が切れるまでは利用可能と記載されている。もっとも、この期限について明確な記載が見当たらない。この点、ムティ氏によると、「新しい法令が出るまでは利用可能」だ。日本との相互認証では、宗教法人ムスリム協会(The Japan Moslem Association: JMA) 、一般社団法人ムスリム・プロフェッショナル・ジャパン協会(Muslim Professional Japan Association :MPJA)、NPO法人日本ハラール協会(NPO Japan Halal Association)の3機関がLPPOM MUIと相互認証を結んでいる。これらは、現在も利用可能とされる。

認証の有効期限が4年に延長、手数料も規定

最後に、ハラール製品保証法や政令などは、BPJPHが発行するハラール認証の有効期間について、材料構成に変更がない限り4年間有効と規定。その運用が開始されている。これまでMUIのハラール認証は2年間だったことから、有効期限が伸びたかたちだ。また、インドネシア財務省は2021年6月4日、財務大臣規定2021年第57号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.90MB)を公布し、BPJPHによるハラール認証の発行に係る手数料について規定した(表2参照)。ただし、これら料金にはハラール検査機関(LPH)による監査費用、監査人の交通費などは前述に含まれていないため、注意が必要だ。

表2:BPJPHによるハラール認証の発行手数料
サービスの種類 認証ごとの取得料金
  1. 新規取得
  2. 更新
  3. 種類、製品の追加
  4. 外国での登録
30万ルピア(約2,400円)~500万ルピア(約4万円)

注:取得料金の円貨額は、1ルピア=約0.008円で換算。
出所:財務大臣規定2021年第 57 号を基に作成

2014年のハラール製品保証法の公布から7年。ようやくハラール表示の義務化に向け、認証主体などについて政府の議論が進み徐々に全貌がみえてきた。しかし、義務化後の運用や非ハラール品のパッケージへの記載の方法など、いまだ不明な点も多い。今後順次発出されるとみられる関連法令を注視する、制度運用に適応する必要がある。


注:
LPPOM MUIが定める相互認証機関リストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.02MB)は、ウェブサイトで確認可能。
執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
亀田 周(かめだ あまね)
2009年、ジェトロ入構。ジェトロ福島(2012~2015年)、企画部地方創生推進課(2015~2016年)を経て2016年より現職。