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ASEANと中国南部との貿易が緊密化
中国内陸部の発展で新たな物流形態も

2019年5月28日

ASEANと中国の貿易は、両地域にまたがるサプライチェーンの構築、自由貿易協定(FTA)、最近は「一帯一路」を通じた政治経済関係強化が拡大に寄与している。中国の中でも、ASEANとの貿易は中国南部との貿易が盛んだ。現在は輸出入ともに、船舶を使った物流形態が主流であるものの、中国の内陸部の発展によって、今後は物流の在りかたも変わってくるとみられる。

中国の対ASEAN貿易は10年前の2.5倍

中国とASEANの貿易額は、拡大の一途をたどっている。中国側からみた貿易統計では、2018年の対ASEAN貿易額は5,774億ドルと、10年前の2008年比で約2.5倍に拡大した。同期間の中国と世界との貿易額の増加が1.8倍であることを考えると、中国とASEANの貿易関係の緊密化は明白だ。中国の対世界貿易に占めるASEANの位置付けをみると、主要国・地域と比較すると、ASEANのシェアのみが一貫して右肩上がりで拡大し、2018年のシェアは12.6%となった(図参照)。背景には、第1に、中国の人件費の上昇や労働・環境はじめ各種規制が強化される中、各国企業が代替地としてのASEANへの進出を拡大することで、中国-ASEAN間のサプライチェーンがより厚く構築されてきたことがある。

図:中国の貿易総額における構成比の推移(主要国・地域別)
ASEANのシェアのみが一貫して右肩上がりで拡大し、2018年のシェアは12.6%となった。EU、米国、日本のシェアは低下、あるいは頭打ち感が強い。

出所:Global Trade Atlas(IHS Markit)から作成

第2の理由としては、2005年に発効したASEAN中国自由貿易協定(ACFTA)の利用が挙げられる。2011年にはACFTAが仲介貿易、移動証明書の発行を認めるように改良され、使いやすさが増したことで、利用率が拡大している。第3の要因として、2013年に中国が提唱した「一帯一路」構想がある。これによって、例えば、マレーシアと中国はそれぞれの国内に相手国側企業が運営する工業団地(パハン州のマレーシア・中国クアンタン工業団地と広西壮族自治区・欽州工業団地)を整備した。また、ミャンマーと中国は、ミャンマー西部のラカイン州にある港町チャオピューと中国雲南省瑞麗へ771キロに及ぶ天然ガス・パイプラインを敷設するなど、ASEAN-中国の政治経済関係の緊密化が貿易額を押し上げている。

ASEANの中でも、どの国が、どういった品目で、中国との貿易を拡大させているのか。2018年の貿易額を2008年比でみると、ベトナム(2018年貿易額:1,379億ドル、伸び率:7.1倍)の寄与度が最大で、以下、マレーシア(1,093億ドル、2.0倍)、タイ(880億ドル、2.1倍)、インドネシア(774億ドル、2.5倍)と続いた。これらの国の2018年の対中貿易品目をみると、ベトナムの対中輸出では電気機械(341億ドル、89.5倍)や綿および綿織物(22億ドル、28.1倍)、中国からベトナムへの輸出では電気機械(233億ドル、12.3倍)や一般機械(84億ドル、3.3倍)が輸出されている。また、マレーシアの対中輸出では電気機械(340億ドル、2.0倍)や鉱物性燃料(124億ドル、7.1倍)が、中国からマレーシアへの輸出では電気機械(126億ドル、2.4倍)、一般機械(61億ドル、1.4倍)の伸びがそれぞれ目立った。

中国南部との貿易が急増

中国のASEAN貿易を港湾別にみると(表1参照)、輸出入両面ともに上海港経由が最大だ。輸出総額の22.3%(627億ドル)、輸入総額の19.3%(424億ドル)を同地経由が占める。以下、深セン、南京、青島の貿易額が大きい。10年前との比較では、表内のすべての港の利用率が拡大する中、特に南部の港の伸びが目立つ。輸出では南寧(207億ドル、8.0倍)、厦門(157億ドル、5.6倍)、広州(134億ドル、4.8倍)からの増加幅が目立つ。輸入面でも、南寧(49億ドル、3.1倍)の増加率が最大で、以下、青島(174億ドル、2.6倍)の次に、広州(83億ドル、2.4倍)と続いた。総じて、ASEANの対中貿易は、上海港経由を最大としつつ、中国南部との貿易が近年は活発化している。

表1:中国の地域別ASEAN貿易(2017年)(単位:100万ドル、%、倍)
地域 輸出 輸入
金額 構成比 2007年比 金額 構成比 2007年比
上海 62,743 22.3 2.3 42,414 19.3 1.7
深セン 39,747 14.1 3.0 42,026 19.1 2.1
南京 16,370 5.8 2.1 27,023 12.3 1.4
青島 16,267 5.8 3.1 17,371 7.9 2.6
黄浦区 14,841 5.3 2.9 16,080 7.3 1.7
南寧 20,705 7.4 8.0 4,855 2.2 3.1
広州 13,406 4.8 4.8 8,284 3.8 2.4
廈門 15,719 5.6 5.9 5,403 2.5 2.2
天津 13,604 4.8 2.2 6,086 2.8 1.6
寧波 11,261 4.0 2.9 3,818 1.7 1.9

注:順序は2017年時点で対ASEAN貿易額の多い地域順に並べた。
資料:図1に同じ

ASEANとの貿易で取り扱い金額の多い上海、深センに加えて、増加率の大きい南寧がASEANのどの国との貿易額が大きいかをみると(表2参照)、輸出は3地域ともに、ベトナム、シンガポールとの貿易が盛んだ。シンガポールについては、同国がハブ港ゆえに、そこからASEAN各国あるいはその他の地域にさらにモノが輸出されているとみられる。輸出面では、地理的な近接性から南寧のベトナムへの輸出比率が9割超となっている点が特徴的だ。輸入面では、各地域はマレーシア、タイ、ベトナムとの取引が目立つ。次に、財別にみると(表3参照)、ASEANとの貿易は互いに電気機械、一般機械が主品目となり、サプライチェーンが両地域間で構築されている。その他の品目としては、中国からASEANへは衣類、家具類の輸出、ASEANから中国へは鉱物性燃料や果実なども一定程度の割合が取引されている。

表2:中国3地域の主要ASEAN貿易相手国

輸出(2017年)(単位:100万ドル、%)
地域 順位 相手国 金額 構成比
上海 1 ベトナム 13,944 22.2
2 シンガポール 11,337 18.1
3 タイ 10,979 17.5
深セン 1 シンガポール 11,927 30.0
2 マレーシア 8,613 21.7
3 ベトナム 5,297 13.3
南寧 1 ベトナム 18,798 90.8
2 シンガポール 527 2.5
3 タイ 400 1.9
輸入(2017年)(単位:100万ドル、%)
地域 順位 相手国 金額 構成比
上海 1 マレーシア 12,416 29.3
2 タイ 7,420 17.5
3 ベトナム 7,285 17.2
深セン 1 ベトナム 12,906 30.7
2 マレーシア 10,675 25.4
3 タイ 7,692 18.3
南寧 1 ベトナム 2,680 55.2
2 インドネシア 626 12.9
3 タイ 567 11.7

注:構成比はASEAN輸出あるいは輸入総額に占める当該国の割合。
資料:図1に同じ

表3:中国3地域のASEAN貿易における主要輸出入品目

輸出(2017年)(単位:100万ドル、%)
地域 順位 商品 金額 構成比
上海 1 電気機械 15,011 23.9
2 一般機械 13,057 20.8
3 繊維 2,853 4.5
深セン 1 電気機械 12,575 31.6
2 一般機械 3,767 9.5
3 家具類 3,616 9.1
南寧 1 電気機械 4,016 19.4
2 一般機械 1,567 7.6
3 衣類 1,372 6.6
輸入(2017年)(単位:100万ドル、%)
地域 順位 商品 金額 構成比
上海 1 電気機械 18,081 42.6
2 一般機械 4,031 9.5
3 プラスチック類 2,582 6.1
深セン 1 電気機械 28,935 68.9
2 一般機械 5,614 13.4
3 精密機器 1,014 2.4
南寧 1 電気機械 1,446 29.8
2 鉱物性燃料 584 12.0
3 果実 482 9.9

注:構成比はASEAN輸出あるいは輸入総額に占める当該品目の割合。
資料:図1に同じ

船舶を使った物流のウエート大

2017年の統計から物流形態をみると、中国からASEANへの輸出については、船舶での割合が72.5%と大部を占める。以下、トラック等の自動車(14.0%)、航空機(12.9%)、鉄道等その他(0.6%)と続く。一方、輸入については様相が変わってくる。船舶の割合は49.0%と5割弱にとどまる中、航空機(25.4%)、自動車(25.0%)、その他(0.6%)となり、航空機や自動車の割合が輸出との比較では高くなる。航空機を使った輸入はマレーシア、シンガポールからが、自動車の場合は、陸送が可能なこともあって、ベトナム、マレーシアからの輸入が目立つ。ASEANから中国への輸出は半導体など航空機や自動車で運送するに適した物品である一方、中国からASEANへの輸出は一般機械、鉄鋼などの船舶を必須とする物品も比較的多いためとみられる。ASEAN・中国間の物流形態は、比率に違いはあるものの、総じて船舶の割合が最も多い。時間を要するデメリットはあるものの、船舶は大量輸送が可能ゆえに、スケールメリットが働いて、コストが安価で済む利点がリードタイム面での不便さをしのぐ。

中国の内陸部に輸送する場合、例えば重慶に物資を運ぶ際には、上海港経由の長江を活用するかたちで、内航船が主役となる。中国の内陸部、特に西部地域は政府の発展計画もあって、急速に成長が進んでいる。重慶も対ASEAN貿易額そのものは全体の中では小さいものの、2017年時点の貿易額は2007年比20倍弱にも達している。中国、シンガポールは重慶市とシンガポールを結ぶ新たな海陸複合輸送ルート「新国際陸海貿易通道」(2月26日付記事「整備進む中国西部地域からの陸海新ルート」参照)の運用を2017年から本格化させている。中国の内陸部が急成長する中、本ルートは時機に適したプロジェクトといえよう。特に、重慶と上海をつなぐ長江の水量が低下した場合には、代替輸送ルートしての機能が大きく高まる、との声が進出日系企業からも聞かれている。内陸地域の発展が進めば、さらにASEAN-中国の貿易は拡大が期待できるとともに、今は割合の少ない鉄道の存在感も増すかたちで、新たな物流のかたちが形成されてくるだろう。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課課長代理
新田 浩之(にった ひろゆき)
2001年、ジェトロ入構。海外調査部北米課(2008年~2011年)、同国際経済研究課(2011年~2013年)を経て、ジェトロ・クアラルンプール事務所(2013~2017年)勤務。その後、知的財産・イノベーション部イノベーション促進課(2017~2018年)を経て2018年7月より現職。

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