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2020年米大統領選挙における女性候補者の可能性
有権者の過半数は女性大統領に肯定的

2019年9月6日

2020年米国大統領選挙の民主党立候補者の3回目討論会を控え、ジョー・バイデン氏、バーニー・サンダース氏、エリザベス・ウォレン氏の上位3人の支持率の差が縮小してきた。女性候補のウォレン氏とカマラ・ハリス氏は、世論調査で常に上位を占める。最近の世論調査結果から読みとれる、政治的重要ポストを目指す女性候補者に対する国民の意識や、ドナルド・トランプ大統領への認識についてまとめた。

民主党各候補者の詳細については、2019年9月3日付ビジネス短信参照

世論調査で上位を占める女性候補2人

今回の大統領選挙の女性候補者は6人であったが、8月に1人撤退し5人となった(注1)。中でも、ウォレン氏およびハリス氏は世論調査での支持率が高い。両氏は、それぞれマサチューセッツ州選出、カリフォルニア州選出の連邦上院議員である。特にウォレン氏に関しては、キニピアク大学の世論調査では、2019年3月に4%だった支持率が、その後着実に上昇し、8月には19%の支持を得ている。その他の各種世論調査でもバイデン氏に続き2位を保っており(表1参照)、第2回討論会(7月30~31日実施)で一緒に登壇した参加者の中で、最も評価が高かった(2019年8月15日付ビジネス短信参照)。

ウォレン氏とハリス氏については、その政策や主張に関する国民の関心も高い。CNNの世論調査によれば、民主党候補者の中でもっと意見を聞きたいと思う候補者は誰かという問いに関しては、ウォレン氏が1位であり(20%)。2位はハリス氏(18%)と女性候補者が上位を占めた。3位以下は、順にサンダース氏(16%)、バイデン氏(15%)、ピート・ブッティジェッジ氏(13%)と男性候補者が続いた。

9月12日に開催される第3回民主党討論会は、参加者10人が一同に会し(2019年9月3日付ビジネス短信参照)、バイデン氏とウォレン氏が初めて直接意見を交わす場となる。討論会での発言が、各候補者の支持率にどのように影響するか注目される。

表1:民主党の予備選挙で誰に投票するか(単位:%)
候補者名 キニピアク
大学調査
エコノミスト、
ユーガブ調査
IBD/TIPP調査
ジョー・バイデン 32 24 28
エリザベス・ウォレン 19 20 24
バーニー・サンダース 15 14 12
カマラ・ハリス 7 8 6
ピート・ブッティジェッジ 5 5 5

出所:キニピアク大学、エコノミスト、ユーガブ、IBD、TIPP

国民の女性候補者への意識

英国「エコノミスト」紙と調査会社ユーガブが共同で実施した世論調査では、大統領、副大統領、国防長官に女性が就任することが社会的に容認されるかについて聞いているが、各役職において過半数が「容認される」と答えている。回答者の性別でみると、傾向に大きな違いが見られないが、共和党支持者の各役職における「容認される」の割合が民主党支持者を下回り、保守的な傾向を示した。共和党支持者の「容認される」の割合は民主党支持者と比較して、大統領職では25ポイント、副大統領職では17ポイント、国防長官職では22ポイント下回った(表2参照)。特に大統領職では、現職ドナルド・トランプ大統領の再選を意識しているともみられる。

また、女性大統領の誕生を重視するかという問いに対しては、過半数(53%)が重視すると答えた。性別では、女性の58%が重視すると回答した(男性は48%)。支持政党別では、民主党支持者の8割が重視すると回答(共和党支持者は25%)。

表2:米国で、各役職に女性が就任することが容認されるか

役職:大統領(単位:%)
回答内容 全体 性別 支持政党別 支持政党間の
差(a-b)
男性 女性 民主党(a) 共和党(b)
容認される 57 58 57 72 47 25
容認されない 24 23 25 15 42 -27
わからない 19 19 18 13 11 2
役職:副大統領(単位:%)
回答内容 全体 性別 支持政党別 支持政党間の
差(a-b)
男性 女性 民主党(a) 共和党(b)
容認される 69 70 69 80 63 17
容認されない 14 14 14 11 23 -12
わからない 17 16 17 9 14 -5
役職:国防長官(単位:%)
回答内容 全体 性別 支持政党別 支持政党間の
差(a-b)
男性 女性 民主党(a) 共和党(b)
容認される 55 55 55 69 47 22
容認されない 18 20 17 15 28 -13
わからない 27 25 28 16 25 -9

出所:エコノミスト、ユーガブ

同調査では、政治的重要ポストでの仕事ぶりの男女差についても聞いている。13項目について比較しているが、「思いやり、共感性」以外では、「同じ」と回答した割合が47~59%を占め、仕事ぶりでの男女の違いがないとの認識を示した(表3参照)。13項目中11項目では、女性への支持が男性を上回る結果となった。政治的重要ポストでの女性の働きが一定の評価を得ており、国民の意識が重要ポストに就任する女性を受け入れられやすい状況であると言える。

表3:政治的重要ポストでの仕事ぶりが優れているのは男性か女性か(単位:%)
項目 男性 女性 同じ わからない
移民政策 13 16 53 18
圧力の下での任務遂行 15 15 55 15
礼儀正しさ 9 27 49 15
経済運営 12 14 59 15
妥協すること 9 26 49 16
政治的圧力に屈せず、自身の信条を貫く 11 20 53 15
国防 24 8 51 16
安全で他を尊重する職場環境作り 7 30 47 15
説得力 11 16 56 17
思いやり、共感性 5 43 37 15
子供達の模範となる 5 26 54 15
財政赤字 10 13 59 18
正直さ、倫理観 6 23 57 14

出所:エコノミスト、ユーガブ

こうした中、活躍が注目されるのは、民主党女性議員のステーシー・エイブラムス氏である。2018年のジョージア州上院議員選挙に立候補し、対抗馬の共和党議員に僅差で敗れたものの、接戦を繰り広げ全米の注目を浴びた。同氏は、自身の選挙実施の際に生じた選挙運営・管理の誤りなどを正すため、選挙終了後、「フェア・ファイト」という団体を立ち上げた。エイブラムス氏は、大統領選挙への立候補も期待されていたが、2019年8月に、2020年の大統領選挙で選挙妨害などの発生を防止するための「フェア・ファイト2020」というキャンペーンを展開することを発表した。同氏は、副大統領候補の可能性もささやかれる。

再選を目指すトランプ氏の言動の影響

トランプ氏は、8月にもイスラム教徒の民主党議員との対立やユダヤ人有権者に関する発言(注2)で物議を醸した。人種間の対立をあおるようなトランプ氏の発言が、最近頻発する銃乱射事件などの暴力性を誘発することを危惧する声もある。キニピアク大学が8月に実施した世論調査では、6割の人がトランプ大統領就任(2017年1月)から、国内の憎しみや偏見の度合いが増したと答えた。また、政治専門紙「ザ・ヒル」と調査会社ハリスXが共同で実施した世論調査では、64%の人が、政治家が公的に冒涜(ぼうとく)的発言を行うことは不適切と回答した。

また、キニピアク大学の調査では、米国の状況に満足しているかという問いには、6割が「不満足」と回答した(満足36%)。トランプ大統領の政策が経済に貢献しているのか、経済を害しているのかという問いに対しては、「貢献している」が37%、「害している」が41%で、「害している」が「貢献している」を上回った。同大統領が米国を統一しようとしているか、分断しようとしているかという問いには、62%が「分断しようとしている」と回答した(統一しようとしている30%)。

投資情報誌IBDと調査会社テクノメトリカ(TIPP)が共同で実施した世論調査では、トランプ氏と民主党候補者の直接対決を想定した結果は、バイデン氏(54%)、サンダース氏(49%)、ウォレン氏(49%)、ハリス氏(49%)への支持がトランプ氏(42~46%)を上回った。

経済紙「ポリティコ」は、差別的発言やグリーンランド購入など、トランプ氏の言動に関してニュースが次々と取り上げられる状況に国民が疲れを感じて、同氏の再選にとっては逆効果になり得るとも指摘している。トランプ氏の言動に、国民が引き続き、どのように反応するかも注目される。


注1:
8月28日にキルステン・ジリブランド氏が大統領選挙からの撤退を表明した。5人の候補者は、ウォレン氏、ハリス氏、タルシ・ガバード氏、マリアンヌ・ウィリアムソン氏、エイミー・クローブチャー氏。
注2:
トランプ氏は8月、にイスラエルに対し、イスラム教徒である民主党のイルマン・オマル議員とラシダ・トリーブ議員の入国を拒否するよう働き掛けた。またトランプ氏は、ユダヤ人の有権者が民主党に投票することは、認識不足でイスラエルへの背信行為、と発言した。
各世論調査の実施時期と対象者数
キニピアク大学調査 8月21~26日、有権者1,422人、うち民主党支持者648人対象
エコノミスト、ユーガブ調査(表1) 8月24~27日、民主党予備選挙投票予定者570人対象
IBD/TIPP調査(表1、文中) 8月22~30日、有権者848人、うち民主党支持者360人対象
CNN調査 8月15~18日、民主党予備選挙投票予定者402人対象
エコノミスト、ユーガブ調査(表2、表3) 8月10~13日、成人1,500人対象
ザ・ヒル、ハリスX調査 8月16~17日、有権者1,001人対象
執筆者紹介
海外調査部米州課 課長代理
松岡 智恵子(まつおか ちえこ)
展示事業部、海外調査部欧州課などを経て、生活文化関連産業部でファッション関連事業、ものづくり産業課で機械輸出支援事業を担当。2018年4月から現職。米国の移民政策に関する調査・情報提供を行っている。

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