【中国・潮流】山東省の消費志向から考えるマーケティング戦略

2019年1月25日

訪日外国人の数が年を追うごとに増加している。日本の街中で出会う機会が多くなり、訪日外国人が増えるのは歓迎すべきことも多いが、一方で日本では常識と思われていることと違う行動を目にして驚き、特に「中国人のマナー問題」がニュースで報じられることも多い。この時の「中国人」というのは、残念ながら往々にしてどの地域の人だということは関係なく、ひとくくりになっている。

筆者は山東省に来て1年になろうとしているが、当地の人は礼儀や秩序を重んじる人が多いように感じる。これは、約2,600年前に孔子が生まれた地であり、それを誇りにしている人が今も多くいるからだと思う。例えば、店で食事や買い物をした後、こちらが「ありがとう」と言うと、必ず私の目を見て「どういたしまして」と返ってくる。朝の通勤時間の地下鉄の駅でホームに降りるエスカレーターから見る、一列に並んで整然と電車の到着を待つ人々の姿など、日本人の持つ「中国人」のイメージとはかなり異なる。このように一言で「中国人」といってもその実、地域によって人々の気質は異なる。

それは消費動向にも表れており、可処分所得が多いからといって、いわゆる家庭で必要な耐久品の保有数も同じように多いわけではない(表参照)。そこには広い中国の気候風土や発展度合いによる要因のほかに、各地域の消費志向も関係しているように思う。

表:中国の1人当たり可処分所得の省・直轄市・地区別上位9位と各主要耐久消費財の100戸当たり保有台数(2017年)

一人当たり可処分所得(元)・自家用車・冷蔵庫・洗濯機(―は値なし)
順位 一人当たり
可処分所得(元)
自家用車 冷蔵庫 洗濯機
省市別
順位
元 省市別
順位
100戸当たりの
保有台数
省市別
順位
100戸当たりの
保有台数
省市別
順位
100戸当たりの
保有台数
― 全国平均 25,973.8 全国平均 29.7 全国平均 95.3 全国平均 91.7
1 上海市 58,988.0 北京市 48.0 江蘇省 104.1 江蘇省 100.1
2 北京市 57,229.8 浙江省 47.9 浙江省 101.1 寧夏省 100.1
3 浙江省 42,045.7 山東省 47.7 天津市 101.0 河北省 99.2
4 天津市 37,022.3 天津市 44.0 新疆ウイグル自治区 101.0 河南省 98.5
5 江蘇省 35,024.1 江蘇省 40.2 上海市 100.4 天津市 98.1
6 広東省 33,003.3 河北省 37.3 山東省 99.8 青海省 98.0
7 福建省 30,047.7 内モンゴル自治区 36.1 遼寧省 99.7 新疆ウイグル自治区 97.9
8 遼寧省 27,835.4 青海省 33.7 福建省 99.4 甘粛省 96.2
9 山東省 26,929.9 寧夏省 33.6 重慶市 99.1 山東省 96.1
電子レンジ・カラーテレビ・パソコン・携帯電話(―は値なし)
順位 電子レンジ カラーテレビ パソコン 携帯電話
省市別
順位
100戸当たりの
保有台数
省市別
順位
100戸当たりの
保有台数
省市別
順位
100戸当たりの
保有台数
省市別
順位
100戸当たりの
保有台数
― 全国平均 40.0 全国平均 122.2 全国平均 58.7 全国平均 240.0
1 上海市 88.8 上海市 185.7 上海市 131.1 広西省 276.4
2 江蘇省 84.0 浙江省 178.2 北京市 101.1 貴州省 275.3
3 北京市 78.1 江蘇省 170.3 浙江省 80.7 寧夏省 269.0
4 天津市 68.5 福建省 141.5 江蘇省 78.7 海南省 262.4
5 福建省 53.8 江西省 134.5 広東省 75.8 湖南省 260.7
6 浙江省 53.0 安徽省 130.6 天津市 74.2 雲南省 259.6
7 重慶市 45.0 北京市 129.1 福建省 67.5 甘粛省 255.8
8 遼寧省 44.7 重慶市 122.9 山東省 63.3 青海省 252.6
9 安徽省 44.0 四川省 120.8 遼寧省 60.7 福建省 252.2
10位以下 13位
山東省
37.7 19位
山東省
108.3 ― ― 26位
山東省
225.7
出所:
中国国家統計局「中国統計年鑑2018」を基にジェトロ作成

表にあるとおり、山東省は中国の省・直轄市別の1人当たりの可処分所得が全国9位の比較的発展した地域である。自家用車・冷蔵庫・洗濯機の保有台数はいずれも上位に位置し、かつ全国平均を大きく上回る。しかし電子レンジについては、順位こそ13位ではあるものの全国平均を下回る。実際、周りの人々に聞いてみても、電子レンジがないという家庭が多い。その理由は、日本でも数十年前にまことしやかに言われていた「電磁波は身体に悪い」からだという。

これから中国市場に参入しようと考えているのであれば、これを迷信だと一笑に付してはいけない。その地域に受け入れられるためには、売り方にも工夫が必要である。例えば、パックライスは電子レンジで温められる手軽さを強調しがちだが、湯煎で温める方法を紹介する、冷凍食品もフライパンや鍋で調理できることを紹介するなど、消費者が慣れた方法で作ることができることをアピールできれば、日本食品への関心がより高まる。

また、山東省はカラーテレビの保有台数も低い。しかしながら、当地でも若者をはじめ徐々にスマートフォンやタブレットで動画を見る人が多くなっており、今後、劇的にテレビの保有率が高まることは考えにくく、広告のツールとしての活用に適していないとの見方がある。

パソコンの保有については、現段階ですでに発展している地域が上位にあり、携帯電話は発展途上にある地域の保有が多い。これは、過去から現在までの通信インフラ整備の差を、如実に反映した結果といえる。

一言に「中国人」といっても、その数は日本人の10倍を超える13億9,000万人。日本でも、例えば関東と関西で気質が違うといわれるように、「中国人」も地域によって消費者の志向が異なる。中国でのビジネスを考える時、「中国人」の各地域の消費志向を考慮に入れたマーケティング戦略を立てることが重要である。

執筆者紹介
ジェトロ・青島事務所長
松村 淑子(まつむら としこ)
1993年、ジェトロ入構。その後退職し、タンザニア(1998~2001年)、上海(2009~2012年)在住を経て、2012年、ジェトロに再入構。2018年2月から現職。