飲食店を設立する際の留意点: 台湾
質問台湾で飲食店の開業を検討しています。どのような点に注意すべきか教えてください。
回答
Ⅰ. 法人設立
飲食店の開業にあたっては以下の手続きが必要です。
- 投資許可申請
台湾経済部工商カウンセリングセンター(旧経済部中部弁公室)にて、会社の名称および営業項目の事前審査を受け、投資許可を取得します。 - 会社設立許可
投資許可取得後、経済部投資審議司(投資審議委員会ともいう)に投資申請を行い、投資を行うことに対する認可を取得します。認可取得後は会社設立手続きを行います。会社設立手続きは台湾経済部投資審議委員会によって、公司法に沿って会社が設立されているか審査されます。設立許可書が発行されたら、資本金の送金を行うことができます。資本金送金完了後、会社登記を行います。 - 会社登記申請、営業許可証の取得
経済部投資審議司の許可取得後、会社登記を行いますが、設立する法人の資本金或いは所在地により、会社登記を行う政府機関が異なります。払込済資本金5億台湾ドル以上の場合は、経済部商業発展署が担当機関となり、5億台湾ドル未満の場合は、所在地の各県市の担当部門に行います。台北市の場合は台北市商業処が担当機関です。
飲食店の営業許可証は、各県市政府の税捐処にて申請を行います。主に店舗の建築基準の適合性、税務、衛生環境、消防安全、食品業者登記などの分野で審査・検査が行われます。
Ⅱ. 現地従業員の募集
現地従業員の採用は主に、SNS、張り紙広告、求人サイトが利用されています。
- SNSの利用
台湾ではSNSの発信力と信用度が高く、求人広告だけでなく、店舗の広告としても非常に効果的な手段です。 - 張り紙広告
主に店頭や大学などで張り紙広告を行います。店頭だけでなく、現地の大学や日本語学校などに依頼し、掲示してもらうこともできます。とくに学校では日本語が話せる従業員を採用する際に有効です。 - 求人サイトの利用
台湾には複数の求人広告サイトがあります。利用には費用がかかりますが、多くの人が閲覧をします。
求人広告を出すと、多くの応募がきます。ただし、面接時間に約束どおりに来なかったり、当日キャンセルされたりすることもあるので、注意してください。 また、応募者は給与面だけでなく社内の雰囲気や労働環境なども判断材料としてみます。例えば、社内旅行の実施や社内勉強会などを実施することで、従業員満足度の向上が図れます。短期間で退職するケースも散見されるので、労働条件だけでなく、労働環境について配慮する必要があります。
Ⅲ. 店舗準備
- 不動産物件
不動産を探す際には不動産会社や不動産検索アプリを利用して物件を探すことができます。台湾には築年数が古い物件も多くあるので、入居してからトラブルに見舞われることがあります。希望に合った物件が見つかったら、自分の目で確かめ、必要に応じて建築の専門家に確認してもらうなどして、契約を結ぶ前に物件を確認してください。家賃は借主が日本人とわかると高く設定されるケースがあるので、近隣の家賃相場を事前に調べておくことを推奨します。また、ほとんどの場合は複数年での契約となります。台湾では借主より貸主の立場が強い傾向にあるため、契約更新時に一方的に更新を断られることもあります。家賃を引き上げる可能性もあるので注意してください。 - 内装工事
現地出店者の多くは、内装工事について、現地業者に依頼します。全てを現地業者に一任してしまうと、工期が遅れ、開店時期に影響することがあります。従って、事前に仕様を詳細に定め、業者と事前共有し、仕様内容を契約に盛り込むことなどの対策を行うことで、トラブルを防ぐことができます。 - 機材道具
現地では機材や設備を日本に比べ安く仕入れることができます。一方で、日本の機材と仕様が異なる機材もあります。また、日本製品に比べると故障頻度は高く、買い替えや修理が必要になり、結果的に費用がかさむことがあります。現地製品に比べ値段は高くなりますが、日本の機材を利用するのも一つの方法です。 - 食材調達
食材の調達は原産地にこだわらなければ、ほとんどのものが手に入ります。日本産の食品や製品は一部入手することができますが、比較的値段は高く設定されています。入手が困難な食材もあるので、出店者は現地の食材を使って対応する必要があります。食材は現地業者から仕入れることは可能ですが、混入物(肉を仕入れた場合であれば小骨など)が見られる場合もあります。また、配送を依頼しても、時間どおり配送されないなどといったケースもあります。
Ⅳ. 店舗運営
- 近隣住民との関係
飲食店を展開するにあたり、近隣トラブルに気をつけてください。現地では住民の立場が強く、一度警察に通報されると繰り返し通報されることがあります。店舗運営に限らず、店外でのお客のマナーが原因で通報されることもあり、最悪の場合移転を余儀なくされることもあるので、店舗周辺に対して細心の注意を払う必要があります。
参考資料・情報
調査時点:2017年3月
最終更新:2025年8月
記事番号: J-170401
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