貨物の船積前検査:ミャンマー向け輸出

ミャンマー向け貨物の船積前検査について教えてください。

ミャンマー連邦共和国は、国内経済や自然環境、国民の健康安全の保護などを目的に、2014年7月1日、韓国から輸入される特定品目に対する出荷国での船積前検査を開始しました。日本からの輸出に関しては船積前検査は中古設備機械を除き義務付けられていません。

I. ミャンマー向け貨物の船積前検査概要

2011年の経済開放宣言以来、ミャンマー連邦共和国への貿易量は急激に増加しました。しかし自由化政策の制度や管理体制が十分に整備されない状況下、粗悪品や不良中古品なども無分別に輸入され、輸入業者の経済的損失やミャンマー政府の処理費用問題の他、国民生活の安全性にまで影響が出るなど社会問題化しました。ミャンマー政府は商業省傘下の国営検査会社(Myanmar Inspection & Testing Services Ltd.: MITS)を介して輸出地における船積前検査(PSI: Pre-Shipment Inspection)を実施することを決定しました。

日本における船積前検査については、ミャンマー政府指定機関によるもの(Governmental PSI)と、売買当事者間の取引契約や銀行信用上取引によるもの(Private PSI)の2種類があります。しかし、2017年1月15日現在、ミャンマー政府指定検査機関(MITS)による運用実態や船積前検査の実施状況は公表されていません。最新情報については輸出前に必ず現地にご確認ください。

II. 中古機械設備に課される船積前検査

ミャンマーに輸入される中古機械設備に関しては輸入目的に応じた2種類の輸入規則が存在し、各々で船積前検査が義務付けられています。

  1. ティラワ経済特区認可事業への中古設備の輸入

    2014年ミャンマー経済特別区法にもとづき、ティラワ経済特別区(Thilawa Special Economic Zone)管理委員会から2015年5月27日付けで「認可事業に使用される中古機械設備の輸入及び使用に関する指示書(Instruction relating to the Import and Use of Used Machinery to be Used in the Authorized Operation)」(Instruction No.01/2015)が公示されました。これにより、以下の条件を満たさない中古機械設備の認可事業への使用及び輸入できません。

    1. 国際的信頼のある機械性能検査可能な第三者機関の船積前検査を受検し、同機関が発行する機械性能証明書(Mechanical Performance Certificate)を取得していること。
    2. 最低残存耐用年数(Minimum Residual Durability)が10年以上と評価されること。
    3. ティラワ経済特別区管理委員の承認(事前輸入登録)を得ること。

    この機械性能証明書には、以下の情報及び評価/報告が含まれている必要があります。

    1. 現在の状態評価または修理後/改修後の状態及び基準への適合評価
    2. 製造年
    3. 機能評価/確認のための完全な試験運転(機能試験)及びその評価結果
    4. 残存耐用年数(適合条件は10年以上)
    5. エミッション及び安全性に関する評価及び適合/不適合判定
    6. インボイス価格の妥当性評価
    7. 検査日時、場所及び検査報告書発行日

    証明書を発行する『国際的信頼のある第三者機関』は同指示書内に日本海事検定協会、日本検査会社、ビューロベリタス、SGS、インターテックが例示されていますが、検査機関の指定制度はなく、またこれら5社に限定されません。

    この「機械性能証明書」は、ティラワ経済特別区管理委員会への事前輸入登録の際に提出する必要があります。また、登録認可された中古機械設備は機械性能証明書の発行日から1年以内にミャンマー国内に輸入する必要があります。

  2. ティラワ経済特別区以外での中古機械設備輸入の場合

    ティラワ経済特別区以外で中古機械設備の輸入が認められる条件は、下記のとおりです。

    1. 使用可能で修理履歴がない機器であること。
    2. 海上輸送されて輸入される機器であること。
    3. 経年数10未満の機器であること。
      1. 商標名(Brand Name)
      2. 能力 (Capacity)
      3. 製造年 (Model Year)
      4. 製造国 (Country of Origin)
      5. 使用される動力源・燃料 (電気、蒸気、ガソリン、軽油、天然ガス)
    4. 輸入許可申請に以下の項目が全て提示できること。
    5. 新品に対して70%以上の残存品質が評価できること。
    6. 輸入に関する関係政府機関の同意書を得ていること。
    7. 国外における(即ち、出荷地での)動作状態(Running Condition)に関する船積事前検査証明書(Pre-Inspection Certificate)を提出すること。
    8. 工業先進国の技術で製造された機械であること。
    9. 状況に応じて、申請内容と一致しているか関係政府機関の検査を受けなければならない。

    輸出国に関わらず、日本から輸出される中古機械設備の一部機器や技術が安全保障貿易管理規制の対象となる場合があります。詳しくは、ジェトロ貿易相談Q&A「安全保障貿易管理とコンプライアンス・プログラム(CP)」および「安全保障貿易管理におけるキャッチオール規制」をご参照ください。

関係機関

在日ミャンマー連邦大使館外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ミャンマー連邦共和国商業省(Ministry of Commerce)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ミャンマー国営検査会社 Myanmar Inspection & Testing Services Ltd (MITS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ティラワ経済特別区管理委員会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ミャンマーナショナルトレードポータル外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係法令及び規則

ティラワ経済特別区管理委員会:
通達 Instruction No.01/2015(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(163KB)

参考資料・情報

MITSの企業パンフレット(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.6MB)

ジェトロ:
貿易・投資相談Q&A
「中古車の現地輸入規則および留意点:ミャンマー向け輸出」
「安全保障貿易管理とコンプライアンス・プログラム(CP)」
「安全保障貿易管理におけるキャッチオール規制」

調査時点:2017/1

記事番号: F-170103

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