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輸出価格の算定方法

質問

国内で行われる海外バイヤーとの商談会に参加します。海外バイヤーと商談する際に必要な輸出価格の算定方法を教えてください。

回答

海外バイヤー向けの価格の設定は国内卸価格とは異なります。
国内取引で一般に使われる上代、下代といった提示は行いません。輸出企業が提示するのは「輸出価格」です。輸出価格の算定には以下の項目を考慮し、価格を再設定する必要があります。

最低取引数
決済条件
梱包条件
インコタームズ
決済通貨（交換レート）

商談会に参加する段階では、輸出する商品の数量、輸送ルート、輸送手段は確定していません。このため、本項では、輸送数量、輸送ルート、輸送手段の前提をおかずに算出でき、海外取引価格設定の基準となる工場渡価格（Ex-Works: EXW）での価格設定方法を記載します。EXWは、海外バイヤーから見積依頼があった場合の見積書作成の基礎となります。

I．最低取引数量

海外バイヤーと取引を行なう最低取引数を設定します。最低取引数に規定はありませんが、通常、数量ベースまたは金額ベースを基準に設定します。貿易取引には国内取引とは異なる手間がかかるため、コストに見合う一定以上の金額・数量となるよう最低取引数を設定することをお勧めします。

数量ベース
梱包単位（1個、ダンボール1箱、1パレット、1コンテナ等）をもとに取引数量を決定する方法です。例えば、ダンボールまたは1パレット（約1立方メートル）にいくつ入るかを算出し最低取引数を設定します。
金額ベース
30万円、100万円など契約希望価格をもとに算出し、最低取引数量を設定します。

II. 決済条件

決済条件では通貨と決済方法を設定します。輸出者にとって為替リスクを負わない方法は日本円建て、輸入者にとってわかりやすいのはドルやユーロなどの基軸通貨での価格提示です。

通貨
外貨で輸出用価格を提示する際には、算出時の交換レートと価格の有効期限を価格表に記載することをお勧めします。実際の契約時には輸入者との交渉で、為替レートと通貨を決定します。
決済方法
決済には大きく分けて電信送金、L/C決済の2つの方法があります。
1. 電信送金（T/T送金）
  銀行を通して送金を受ける方法です。海外口座と日本口座間の送金では、送金を受ける側も銀行手数料が差し引かれて指定口座に入金されます。銀行によって手数料が異なるため、取引銀行に事前に確認する必要があります。
  輸出者にとって代金回収リスクが最も低いのは全額前受けです。
2. L/C決済
  国際商業会議所（ICC）制定の信用状統一規則に準拠した信用状（Letter of Credit: L/C）を使用する決済方法です。L/Cを利用する場合でも銀行手数料が発生します。

その他決済に関しては以下、ジェトロ貿易・投資相談Q&Aを参照ください。

「輸出における代金回収等留意点」
「輸出代金の請求方法と送金に関する銀行諸費用の負担」

III. 梱包条件

商品によっては輸出に適した緩衝材を使うなど、日本国内の梱包とは異なる梱包材を利用することが考えられます。どのような荷姿で輸出するのかを検討の上、決定する必要があります。

IV. インコタームズ

インコタームズとは輸出者と輸入者の危険負担、費用負担を明確にするための貿易上のルールです。海外用価格提示の基礎となるEXW価格は、国内の工場渡し価格に輸出のために必要な諸費用（銀行手数料や、必要であれば特別な梱包費等）を調整した価格です。このほか、通常利用されるインコタームズはコンテナ貨物ではFCA、CPT、CIPが、在来船ではFOB、CFR、CIFがありますが、これらはすべてEXWを元に算出する価格です。

インコタームズの詳細は以下、ジェトロ貿易・投資相談Q&A 「インコタームズ2010 」を確認ください。

EXW算出の例
前提となる輸出取引条件（以下の取引条件以外は考慮しないものとする）
国内卸価格：￥1,000／1個、1箱に100個入り
最低取引数量：5箱（500個）
銀行手数料：￥5,000／1回
決済手段：T/T送金、全額前受けで、ドル（1ドル= ￥110）での価格提示
梱包：国内とは異なる梱包資材を利用（国内梱包の場合、100円、海外梱包の場合300円）

項目	単価	個数	金額
国内卸価格	￥1,000	100個	￥100,000
梱包（国内梱包資材）	−￥100	1箱	−￥100
海外用1箱の価格			￥99,900
最低取引数量	￥99,900	5箱（500個）	￥499,500
梱包（海外梱包資材）	￥300	5箱	￥1,500
銀行手数料	￥5,000	1回	￥5,000
合計			￥506,000
外貨	$1=￥110		EXW $4,600