コンテナ輸送の貿易取引条件
質問
コンテナ輸送での貿易取引条件として、インコタームズのFOB、CFR、CIFではなく、それぞれFCA、CPT、CIPが推奨されています。その理由を教えてください。
回答
本来、貿易取引条件は、在来船による輸送を対象にして規定されました。これらの貿易取引条件をコンテナ輸送に適用すると売主と買主の危険の移転時期について不合理が生じるため、1960年代以降の海上輸送のコンテナ化を背景に、インコタームズ1980年版ではコンテナ取引条件としてFCA、CPT、CIPが定められました。
I. インコタームズ2010年版
従来から使用されてきた本船渡(Free on Board: FOB)、運賃込(Cost and Freight: CFR)、運賃保険料込(Cost, Insurance and Freight: CIF)の貿易取引条件は、コンテナ輸送の場合はそれぞれ、運送人渡(Free Carrier: FCA)、輸送費込(Carriage Paid To: CPT)、輸送費保険料込(Carriage and Insurance Paid To: CIP)が推奨されています。また、インコタームズ2010年版のFOB、CFR、CIFでは、売主から買主への危険の移転時期は、貨物が本船に積載されるまで(インコタームズ2000年版では本船の手すりを越えるまで)は売主の責任、貨物が本船に安全に積載されてからは買主の責任と定義されています。
コンテナ輸送の場合、貨物が運送人の管理下にあるコンテナヤード(CY)で引き渡され、FCAでは貨物が買主指定の運送人の管理下に置かれた時、CPTとCIPでは貨物が売主指定の運送人の管理下に置かれた時に貨物の引き渡しが完了し、危険負担が買主に移転します。FOB、CFR、CIFを適用すると、売主がCYから本船に積載されるまでの危険までも負担することになるという不合理が生じます。そのため、コンテナ輸送ではFOBよりもFCA、CFRよりもCPT、CIFよりもCIPを使用すべきということになります。
FCA、CPT、CIPの3つの規則は、複合輸送を含む陸上、海上、空路のいずれの場合にも適用できます。航空貨物、混載航空貨物の荷扱いは海上コンテナ貨物と同様です。他方、FOB、CFR、CIFは、本来、海上輸送および内陸水路輸送への適用に限定されています。
しかしながら、コンテナ輸送にもかかわらず、長年の取引習慣により、依然としてFOB、CFR、CIFを使用するケースが多いのが実情です。輸出を例に取ると、運送人に貨物を引き渡した後も本船に積載されるまで(インコタームズ2000年版では本船の手すりを越えるまで)の危険負担が売主に残ることを認識する必要があります。
なお、FOB、FCR、CIFでは、その次に記すべき場所は、「FOB Yokohama」など、港名(Named Port)です。一方、FCA、CPT、CIPでは、「Yokohama CFS」のように、CY (Container Yard)、CFS(Container Freight Station)など、指定地(Named Place)を記載します。
II. FCA、CPT、CIPの定義
インコタームズ2010年版での定義は下記のとおりです。
- 運送人渡(Free Carrier: FCA)
売主の契約上の義務は、船賃や保険料などを負担しないという点ではFOBと同じですが、貨物の引き渡しはFOBと異なり、売主が輸出通関を済ませ、買主によって指定された場所で、買主が指名した運送人に貨物を引き渡すことにより完了します。「運送人」とは運送契約を締結した海上、航空、鉄道、陸上などあらゆる輸送形態の輸送を行う(またはそれを請け負う)者を指します。売主・買主両者に保険契約の義務はありません。貨物が運送人に引き渡された後の貨物の減失や損傷など一切の危険を買主が負担するため、通常買主が保険を付保します。 - 輸送費込(Carriage Paid To: CPT)
売主は指定仕向地までの輸送費を負担します。危険負担はCFRと異なり、貨物が運送人に引き渡された時点で買主に移転します。保険はFCAの場合と同様に、両者に付保の義務はありませんが、通常買主が付保します。 - CIP(Carriage and Insurance Paid to)「輸送費保険料込条件」:
売主は上記CPT条件に加えて指定仕向地までの貨物保険を売主の負担で付保しなければなりません。この場合も運送人に貨物が引き渡された時点で危険負担が買主に移転します。
参考資料・情報
調査時点:2013/10
最終更新:2017/12
記事番号: A-011002
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