医薬品の現地輸入規則および留意点:中国向け輸出

質問

中国向けに医薬品を輸出する際の現地規制と留意点について教えてください。

回答

中国での薬品の輸入に関しては、主に「薬品管理法」、「薬品輸入管理弁法」、「薬品登録管理弁法」等の法律に規定されています。

Ⅰ. 薬品の輸入

  1. 有効な登録と輸入証明の取得

    薬品を輸⼊するには、国家薬品監督管理局(NMPA)が認可発⾏した「輸⼊薬品登録証」を取得しなければなりません。⿇薬・向精神薬品は、さらにNMPAが認可発⾏した「輸⼊許可証」が必要です。
    輸入薬品の登録について、「薬品登録管理弁法」は下記のとおり定めています。

    1. 登録機関
      国家薬品監督管理局(NMPA)
    2. 申請者
      中国国外の申請者は、国外の適法な薬品製造業者(製造販売承認保有者)でなければなりません。
    3. 輸入薬品登録手順
      1. 申請者が薬品登録申請を提出する
        申請は医薬品の承認申請に用いる技術文書(CTD)を電子的に提出するための国際標準フォーマット(電子共通技術文書方式)で提出する必要があります(紙での申請は原則廃止)
      2. NMPAが形式上の審査を行う
        提出書類の整合性・完全性を確認
      3. 中国薬品検定機関が登録検査します
        中国薬品生物検定所などが、サンプルの品質検査を実施
      4. 薬品審査評価センターが技術審査評価を行う
        有効性、安全性、品質管理、臨床試験計画などを評価
      5. 申請者が臨床試験を実施する
        中国国内での臨床試験が必要な場合、NMPAが「薬物臨床試験批准書」を発行する。日本・米国・EUなど医薬品規制調和国際会議加盟国で承認済みの薬品は、臨床試験免除の対象となる可能性あり
      6. 薬品審査評価センターが、臨床試験結果を含めた総合的な技術審査の再評価を行う
      7. NMPAが「輸⼊薬品登録証」を発⾏する。登録証には有効期限(5年)があり、更新申請が必要
  2. 指定輸入港

    薬品は中国国務院が許可した以下の輸⼊港を経由して輸⼊しなければなりません
    北京市、天津市、上海市、大連市、青島市、成都市、武漢市、重慶市、廈門市、南京市、杭州市、寧波市、福州市、広州市、深圳市、珠海市、海口市、西安市、南寧市など19の都市に所属する直轄税関が管轄するすべての港湾および蘇州工業園区港湾、済南航空港湾、長沙航空港湾、鄭州航空港湾、瀋陽航空港湾、無錫航空港湾、江陰港湾、長春空港港湾、中山市中山港湾、合肥空港湾

  3. ⼀般薬品は、上記の所轄輸⼊港で輸⼊することができますが、NMPAが定める⽣物製品、初めて中国国内で販売する薬品および国務院が定めるその他薬品は、北京市、上海市、広州市の3都市の所轄輸⼊港でしか輸⼊できません。
  4. 輸入届出

    輸入届出手続きを行う検査申請業者は「薬品経営許可証」を持つ法人でなければなりません。

    【薬品輸入届出手続きの際に通常提出する資料】

    1. 「輸入薬品登録証」または「医薬製品登録証」コピー、麻薬・向精神薬品の場合は、さらに「輸入許可証」コピー
    2. 検査申請業者の「薬品経営許可証」(または「薬品生産許可証」)と「企業法人営業許可証」コピー
    3. 原産地証明書コピー
    4. 購買契約書コピー
    5. インボイス・パッキングリスト・貨物引換証コピー
    6. 製造メーカーの検査報告書コピー
    7. 薬品の説明書および包装・ラベルの表示形式(原薬剤や製剤中間体は除外)
    8. 製造検査記録の概要と⽣産国または地区薬品管理機関が承認する許可証明書の原本(NMPAが承認する⽣物製品の場合)
    9. 薬品輸入管理弁法第10条に規定した薬品以外のものを輸入する場合は、最も新しい「輸入薬品検査報告書」と「輸入薬品通関書」コピー

    詳細はジェトロ貿易投資相談Q&A「医薬品輸入に当たって提出が必要な許可証明書:中国向け輸出」をご参照ください。

  5. 国内責任者の指定

    国外製薬企業が中国で医薬品を販売する場合、医薬品上市許可保有者制度に基づき、中国国内に責任者を指定する義務があります。責任者は品質管理、リスク対応、リコールなどの法的責任を負います。

Ⅱ. 薬品の説明書とラベル

輸入薬品の説明書とラベルについては、「薬品の説明書およびラベル管理規定」の関連規定、2025年版中国薬局方に基づき原則的にすべて規範化された中国語で表示します。その他外国語の併記のある場合、中国語を最優先としています。

  1. 薬品の説明書について

    薬品の安全かつ公正な使⽤を指導するために、薬品の説明書には、以下の内容を科学的かつ専門的な表現で記載することが義務付けられています。

    • 薬品の通用名称、成分、剤型、規格(剤型、含量、包装単位)
    • 適応症、用法・用量、禁忌、副作用、注意事項
    • 製造者情報、許可番号、有効期限、保存方法
    • 臨床試験データ(必要に応じて)
    • 漢方薬の場合、すべての薬味を記載

    注射剤および非処方薬については、すべての補助剤名称を記載薬品の処⽅に重篤な副作⽤を引き起こす可能性のある成分または補助剤が含まれる場合は、その点について説明する必要があります。上記の説明書は、販売最小単位の包装に添付する必要があります。

  2. 薬品包装のラベルについて

    薬品の表示は、内装ラベルと外装ラベルに分かれます。内装ラベルは直接薬品と接触する包装ラベルを指し、外装ラベルは内装ラベルを除くその他包装ラベルを指します。
    内装ラベルは、包装が小さくスペースに限度ある場合でも、最低限、通称名・規格・生産ロット・有効期限等を表示すること、さらにスペースがあれば、この4項目以外に適応症あるいは主な効能・用法用量・生産日・メーカー名等を表示しなければなりません。
    外装ラベルは、通称名・成分・性状・適応症あるいは主な効能・規格・用法用量・副作用・禁忌、注意事項・保存方法・製造日・製造ロット番号・有効期限・許可番号・メーカー名などを表示しなければなりません。

詳細はジェトロ貿易投資相談Q&A「製品表示ラベルの要求:中国向け輸出」をご参照ください。

Ⅲ. 薬品流通の監督管理とリコール

中国における薬品の流通管理およびリコール制度は、以下の法令・制度に基づいて運用されています。

  1. 薬品流通の監督管理について

    薬品の製造、経営、使用に関わるすべての主体(製造企業、販売企業、医療機関等)は、薬品の品質、安全性、有効性に対して法的責任を負う義務があります。

  2. 薬品のリコール制度について

    薬品製造企業(輸入薬品の場合は国外製造者を含む)、販売業者、使用機関は、薬品に人身の健康や生命の安全を脅かす不合理な危険性があると認識した場合、直ちに販売・使用を停止し、法定手続きに従ってリコールを実施する義務があります。

IV. その他

中国では、多くの製薬メーカーがジェネリック医薬品を製造しています。したがって、中国向けに輸出の可能性があるのは、主に特許のある新薬または中国国内でまだ製造がないもの、もしくは製造量が⼗分でない医薬品、希少疾患用薬品、新規適応症・新製剤・新投与ルートを有する改良型新薬等が挙げられます。なお、新薬の場合、特に中国では知的所有権を守るための措置を⼗分考慮しなければなりません。
中国では、新薬に対する知的財産権保護制度が強化されつつあり、以下の制度が導入・整備されています: 新薬データ保護制度(案)

  • 創新薬:6年間のデータ保護
  • 改良型新薬:3年間のデータ保護
  • 保護期間中は原則ジェネリック薬の承認不可
    特許リンク制度(Patent Linkage)
  • ジェネリック薬の承認審査中に特許紛争処理が可能
    特許期間延長制度(Patent Term Extension)
  • 新薬の開発・審査期間に応じて最大5年延長可能

これらの制度により、輸出企業は中国での特許戦略とデータ保護対応を十分に検討する必要があります。 中国のWTO加盟後、医薬品を含め輸⼊品の関税率は年々下がり、さらに⾮関税障壁も徐々に消えつつあります。医薬品にかかる輸入関税と輸入増値税の引き下げに関してここ近年施行されている新しい規定は、主に以下の通りです。

  1. 輸入関税

    国務院関税税則委員会の医薬品輸入関税の引き下げに関する公告(税委員会公告[2018]2号)の規定により、2018年5月1日より、一部輸⼊薬品・原料に適⽤される関税率が暫定的に0%にまで引き下げられました。現在では、最恵国税率が0%とされているものもあります。

  2. 輸入増値税

    輸入医薬品に対しては通常、13%の輸⼊増値税が賦課されますが、抗がん薬品増値税政策に関する通知(財税[2018]47号)の公布により、2018年5月1日から、一部の抗がん薬品の輸入増値税が3%に引き下げられています。さらに、希少薬品増値税に関する通知(財税[2019]24号)の公布により、2019年3月1日より、一部の希少薬品の輸入増値税も3%に引き下げられました。

関係法令

中国国家食品薬品監督管理局:
薬品管理法(2019年8月26日改正)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
「薬品管理法実施条例(2024年12月6日改正)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
薬品登録管理弁法(国家食品薬品監督管理局令第28号、2007年10月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
薬品輸入管理弁法(衛生部、税関総署聨合令第86号、2012年8月24日施行外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
「薬品輸入管理弁法」施行の関連事項についての通知(国食薬監注[2003]320号、 2004年1月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
麻薬・向精神薬品の輸入許可証管理に関する公告(国家薬品監督管理局2024年第33号2024年3月18日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
薬品輸入港都市に関する公告(国食薬監注[2004]489号、2004年4月30日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家食品薬品監督管理局、税関総署による南寧市を薬品輸入港都市に追加することについての公告(国食薬監注[2004]489号、2004年10月22日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家食品薬品監督管理総局弁公庁、税関総署弁公庁による蘇州工業園区輸入港の薬品輸入を認めることについての通知(食薬監弁薬化管[2013]113号、2013年10月29日施行) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家医薬品監督管理局弁公室、税関総署弁公室 医薬品輸入港湾として済南空港港湾を 追加指定する件に関する通知(薬監弁〔2018〕20号、2018年6月12日施行) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家医薬品監督管理局、税関総署「済南航空港を医薬品輸入港として追加指定する」に関する公告(国家医薬品監督管理局、税関総署公告 第36号(2018年)、2018年6月12日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家医薬品監督管理局弁公室 税関総署弁公庁 医薬品輸入港湾として長沙航空港湾を追 加指定する件に関する通知(薬監弁〔2018〕19号、2018年6月12日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家薬品監督管理局、税関総署 鄭州航空港を医薬品輸入港湾として追加指定する公告 (国家薬品監督管理局・税関総署公告第2019年第110号、2019年12月12日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家薬品監督管理局、税関総署 瀋陽航空港を医薬品輸入港として追加指定する公告(国家薬品監督管理局・税関総署公告第116号、2019年12月24日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家薬品監督管理局 税関総署 医薬品輸入港湾として無錫航空港湾、江陰港湾を追加指定する公告(国家薬品監督管理局 税関総署 2020年第97号公告、2020年9月2日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家薬品監督管理局 税関総署 薬品輸入港湾として長春空港港湾を追加指定する公告 (国家薬品監督管理局 税関総署 2021年第79号公告、2021年6月7日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家薬品監督管理局、税関総署 合肥空港を医薬品輸入港湾として追加指定する公告 (国家薬品監督管理局、税関総署2024年第12号、2024年1月23日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
薬品の説明書およびラベル管理規定(国家食品薬品監督管理局令第24号、2006年6月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家薬品監督管理局「2025年版『中華人民共和国薬局方』の実施に関する事項」に関する公告(2025年第32号、2025年10月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国家薬品監督管理局 国家衛生健康委員会 2025年版『中華人民共和国薬局方』の公布に 関する公告(2025年第29号、2025年10月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
医薬品販売及び使用の品質管理に関する監督管理弁法(2024年1月1日施行)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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中国中央人民政府:
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国家税務総局:
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中国財政部:
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財政部・税関総署・税務総局・国家薬品監督管理局による、増値税政策の適用対象とな る抗がん薬品および希少疾病用薬品の第3次リストの公表に関する公告(財務省 税関総署 税務総局 薬品監督管理局公告2022年第35号2022年12月1日施行) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2015年8月
最終更新:2025年10月

記事番号: A-031002

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