貨物運賃の基準および運賃以外の費用:日本
基本的な貨物運賃は、何を基準にどのように決定されるのですか。また、運賃のほかに買い主の手元に貨物が届くまでにどのような費用がかかりますか。
貨物運賃を決定する主な要因としては、貨物の重量や容積、貨物の品目や内容、運送区間の3つですが、運賃の決定方式には自由運賃と表定運賃があります。海上運賃の他には、貨物海上保険料、コンテナ貨物留置料、関税、輸入諸料等がかかります。
I. 貨物運賃の基準
- 自由運賃
運送サービスに対する需要と供給により、自由競争によって決まる方式、即ち自由契約によって決まる運賃です。 国際運送における自由運賃の代表は、鉄鉱石などを傭船で運ぶ不定期航路(ばら積み船)の運賃で、通常は、貨物の運賃負担力と運送原価とを上限・下限の目安として、相場商品のように船腹への需要と供給から決まります[一般にバルク(ばら積み)貨物は運賃負担力は低く、ICなど高価格品は価格に占める運賃の割合が小さいので運賃負担力は高い]。なお、これらを示す指標としては、タンカー運賃指数であるWS(World Scale Rate)や、鉄鉱石、穀物などばら積み外航不定期船の国際的な運賃水準を示す指数としてのバルチック海運指数(1985年を1000とする)があり、資源の荷動きや景気の先行指数とされています。
- 表定運賃
運賃が公共の利益・国民生活に深く関わり、かつ深刻な影響を与える等の理由から、運送業者からの申請にもとづき、国土交通大臣など公定運賃決定権者の認可を経て決められるもので、運賃表(Tariff)として一般に公表されるものです。 定期貨物船の場合には、同一航路でのダンピング競争を避けるため、特別に容認されている海運同盟(Shipping Conference)による協定運賃(Tariff Rate)、すなわち運賃負担力をベースに、品目別運賃率を加味した表定料金が主流です。航空貨物の場合も、定期国際航空会社の協力機関である国際航空運送協会(International Air Transport Association: IATA)によって決められる航空貨物運賃表(Tariff)を各国政府機関が認可し、その表定料金によることとなります。これら表定料金をベースに基本運賃(Base Rate)、割増運賃(Additional Rate=Surcharge)、特別運賃(Special Rate)が決まり、運賃個別交渉のガイドラインとなります。 基本運賃は、ボックスレート(コンテナー1本当たりの一括運賃)または、原則、容積または重量の高い方のトン数(フレートトン=運賃計算トン)に賃率をかけて計算します。割増運賃は貨物の形状、港湾事情、経済事情等により運送コストが割高になる場合に課せられ、また、特別運賃とはサービスコントラクト(荷主が船会社に一定期間で積荷保証をすることにより割引運賃で契約)などによる特別割引運賃を言います。
しかし、自由競争の進展により、ターミナルハンドリングチャージ(THC)などの割増調整料金を含め、実際には船会社の判断による運用に任されているようです。ただし、同盟内・協会内で牽制が働くため、極端な運賃値下げは起こりにくいと考えられます。貨物運賃の算出に際しては、需給状況や経済事情により料金改定が行われますので、船会社・航空代理店に事前に料金を確認下さい。
II. 運賃以外の費用
海上運賃(Freight)以外で輸入貨物に掛かる、一般的な費用としては以下のものが挙げられます。
- 貨物海上保険料
- コンテナ貨物留置料(Demurrage)
- 輸入関税、内国消費税(個別消費税および一般消費税)
- 輸入諸掛
- 輸入通関料(通関手数料)
- 海貨業者取扱手数料
- (コンテナ船の場合)CFS チャージ(Container Freight Station Charge):混載貨物取扱料金
- 税関検査費用
- デバンニング(De-vanning=コンテナーからの取り出し)費用、解袋料
- ドレージ費用(コンテナヤードより荷主倉庫等へコンテナのまま輸送する際の費用)
- (在来船の場合)総揚げ・自家取り費用
- 割増調整料金(THC、BC、BAF、FAF、YAS、CAF、EBS、PSSなども。下記参照)
- Doc費用(D/O発行費用)
- 沿岸荷役費用
- 倉庫保管料
- 国内輸送費
- 銀行諸掛:L/C決済費用、銀行保証料、金利諸掛など
- その他、運送保険料など
- コンテナ返還遅延料(Detention Charge)
関係機関
国際航空運送協会(International Air Transport Association:IATA)(英語)
一般社団法人日本船主協会(JSA)
一般社団法人航空貨物運送協会(JAFA)
参考資料・情報
割増調整料金(Surcharge):
BAF (Bunker Adjustment Factor):燃料割増料金
BC (Bunker Charge):原油価格調整割増運賃
EBS(Emergency Bunkers Surcharge):緊急燃料割増料金
FAF(Fuel Adjustment Factor):燃料調整金
航路によって異なる名称となっていますが、この4つはほぼ同じ意味です。
CAF(Currency Adjustment Factor):通貨変動調整金
CS (Currency Surcharge):通貨調整金
YAS(Yen Appreciation Surcharge):円高調整金
この3つもほぼ同じ意味です。
Congestion Surcharge:船混み割増
PSS (Peak Season Surcharge):ピークシーズン(ある季節だけの)割増料金
THC(Terminal Handling Charge):空港やコンテナターミナル関係荷役料・保管料などの割増運賃。
仕切り条件により買主負担か、売り主負担か確認が必要です。
ジェトロ貿易・投資相談Q&A:
「BAF、CAFの意味と海上運賃の構成要素:日本」
「CIF契約輸入におけるTHC費用配分とその留意点:日本」
「本船入港時に掛かる諸掛りの種類とその内容」
調査時点:2011年10月
最終更新:2017年8月
記事番号: A-010144
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