炭素繊維を輸出する際の規制:日本

質問

炭素繊維(植物性、炭化繊維)を日本から米国に輸出する際の輸出規制について教えてください。

回答

炭素繊維はほとんど炭素だけからできている繊維です。現在工業生産されている炭素繊維には、原料別の分類としてPAN系、ピッチ系およびレーヨン系があります。炭素繊維は貨物等省令第1条第22項、第3条第15項等に記載されているため、安全保障貿易管理の対象品目です。

I. 日本の安全保障貿易管理規則

国際的な平和および安全の維持の観点から大量破壊兵器等の拡散防止や通常兵器の過剰な蓄積を防止するために、国際条約やワッセナー・アレンジメント(WA)などの国際的輸出管理の枠組み(レジーム)に基づき、各国で輸出の管理・制限を行っています。日本では外国為替及び外国貿易法(外為法)を根拠法と定め、貨物の輸出については輸出貿易管理令(輸出令)で、役務(技術)の提供については外国為替令(外為令)で規制品目や役務(技術)の内容を規定し、さらに具体的な規制値や仕様などの詳細を輸出貿易管理令別表第1および外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令(貨物等省令)や通達等で規定しています。許可を要する貨物等・対象国をリスト規制とキャッチオール規制の2段階で規制しています。

II. リスト規制

輸出しようとする貨物または提供しようとする役務(技術)が輸出令別表第1または外為令別表1~15の項に該当する場合であって貨物等省令で定める仕様で該当するものは必ず経済産業大臣の許可が必要です。これをリスト規制といいます。輸出しようとする貨物、または提供しようとする役務(技術)が法令で規制されているものであるか否かを判定することを該非判定といいます。該非判定の具体的な確認方法としては、経済産業省の安全保障貿易管理のウェブサイトに掲載されている「貨物・技術のマトリクス表」で確認します。同表には、品目毎に、輸出令、貨物等省令、解釈が記載されていますので、輸出する製品または役務(技術)提供の詳細な仕様とこの表の定義に照らして、該当か否かを確認します。

炭素繊維は輸出貿易管理令(輸出令)別表第1および外国為替令別表の規定に基づき貨物または技術を定める省令(貨物令)(経済産業省令第49号)の、原子力、先端素材等の項目に含まれ、要輸出許可品目になっています。

III. キャッチオール規制

リスト規制以外のものであっても、輸出しようとする貨物や提供しようとする役務(技術)が、大量破壊兵器等の開発、製造、使用又は貯蔵もしくは通常兵器の開発、製造又は使用に用いられるおそれがあることを輸出者が知った場合、または経済産業大臣から許可申請をすべき旨の通知(インフォーム)を受けた場合には、輸出又は提供にあたって経済産業大臣の許可が必要です。この制度は通称「キャッチオール規制」と呼ばれています。キャッチオール規制では、木材・食料品を除くほぼすべてが規制の対象となっており、指定された26カ国(輸出令別表第3の地域)※を除いた地域への貨物の輸出や技術の提供が対象です。

※「輸出令別表第3」の地域

アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国

キャッチオール規制は、「大量破壊兵器キャッチオール」と「通常兵器キャッチオール」の2種類からなり、客観要件とインフォーム要件 の2つの要件により規制されています。

炭素繊維(リスト規制に該当するものを除く)は輸出令別表第1、16項に含まれるので、規制に該当しますが、輸出先が米国(輸出令別表第3の地域)であれば非該当です。ただし、以下の要件に該当する場合は、経済産業大臣の輸出許可が必要となります。

  1. インフォーム要件

    当該貨物が大量破壊兵器の開発等(または軍事用途)に使用されるおそれがあるものとして経済産業大臣から許可申請をすべき旨の通知を受けたとき。

  2. 客観要件

    契約書の記載事項等や貨物の輸入者および貨物の需要者による輸出者への連絡等の客観的な事実に基づき、用途確認と需要者確認を行った結果、大量破壊兵器の開発等(または軍事用途)に使用されるおそれがあるとして輸出者が判断した場合。

    貨物・技術のマトリクス表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

IV. 輸出者等順守基準

安全保障貿易管理の執行強化のため、経済産業大臣の定めた「輸出者等遵守基準」が導入されました(2010年4月1日施行)。リスト規制品等、安全保障上機微な(sensitive)貨物の輸入や技術の提供等を反復継続して行う者は、この基準にしたがい社内体制を整備し、適正な貿易管理を行わなければなりません。下記ジェトロ貿易・投資相談Q&A「安全保障貿易管理とコンプライアンス・プログラム(CP)」をご参照ください。

V. 輸出許可申請窓口

上記Iに対する許可申請窓口は各地経済産業局です。IIからIVに対する許可申請窓口は経済産業省貿易経済協力局貿易管理部安全保障貿易審査課です。輸出許可申請には個別許可申請と包括許可申請があります。

関係機関

経済産業省貿易経済協力局貿易管理部安全保障貿易審査課外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
(財)安全保障貿易情報センター外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係法令

外国為替および外国貿易法(外為法)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸出貿易管理令(輸出令)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
外国為替令(外為令)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

ジェトロ貿易・投資相談Q&A:
安全保障貿易管理とコンプライアンス・プログラム(CP):日本
輸出における安全保障貿易管理規則該非の確認方法:日本

調査時点:2012年9月
最終更新:2020年3月

記事番号: A-010116

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