為替管理制度

最終更新日:2024年01月11日

管轄官庁/中央銀行

中央銀行(CBRT、TCMB)、資本市場評議会(CMB、SPK)、銀行調整監視機構(BRSA、BDDK)

中央銀行(CENTRAL BANK OF THE REPUBLIC OF TURKEY:CBRTまたはTürkiye Cumhuriyet Merkez Bankası:TCMB外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、トルコ語)

Hacı Bayram Mah. İstiklal Cad. No:10 06050 Ulus Altındağ Ankara, Turkey
Tel:+90-312-507-50 00
Fax:+90-312-507-56 40

中央銀行は、株式会社の形態をとり、通貨発行権を有する唯一の機関である。

資本市場評議会(Capital Markets Board of Turkey:CMBまたはSPK外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

Mustafa Kemal Mahallesi, Dumlupınar Bulvarı (Eskişehir Yolu) No:156, 06530 Çankaya / ANKARA, Turkey
Tel:90-312-292-9090
Fax:90-312-292-9000

資本市場評議会は、トルコ資本市場の規制・監督権限を有する機関であり、2012年新資本市場法(Law No. 6362)に基づき、資本市場の規制ならびに資本市場制度・機関の構築を行う。
資本市場評議会の主たる使命は、トルコ資本市場を公正かつ秩序正しく機能させること、投資家の保護である。主な業務としては、仲介業者やポートフォリオ・マネジメント会社等の資本市場参加者に対する許認可、証券の登録、ならびに手形交換所、証券取引所、金属取引所の監督等がある。

銀行調整監視機構(Banking Regulation and Supervision Agency:BRSAまたはBDDK外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、トルコ語)

Büyükdere Cad. No:106 Şerbetçi İş Merkezi Esentepe Şişli/İSTANBUL -Turkey
Tel:90-212-214-5000

銀行調整監視機構は、銀行業の主要規制当局である。1999年6月に設立され、2000年8月より業務開始し、行政・財政面において自律性を有する公的機関である。銀行以外の金融機関(債権買取会社、ファイナンス・リース会社、アセット・マネジメント会社、融資会社等)の規制当局でもある。

為替相場管理

変動相場制

2001年以前は、様々な形で為替相場が管理されていたが、2001年の国内金融危機以降、変動相場制が採用されている。

2023年12月に中央銀行が公表した「2024年度金融政策に関するレポート(Monetary Policy for 2024PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(851KB))」において、中央銀行は2023年に謳われたリラ化戦略について言及していない。インフレ・ターゲットとともに変動相場制を継続して採用し、これらの政策を通じて外国為替市場の円滑な機能を確保し、中央銀行は如何なる為替変動の水準および方向性にも関与せず、外国為替の売買取引を行うことはない旨を表明した。インフレは政府と共同で設定した5%を目標とし、中期的に目標インフレ率を達成するための金融政策を設定するとした。

貿易取引

決済手段、決済通貨

  1. 決済手段
    貿易取引において用いられる決済手段としては、前払い、プレファイナンス、後払い、D/P(Documents against Payment)、D/A(Documents against Acceptance)、信用状(Letter of Credit、L/C)等がある。実務上使用される信用状の種類としては、取消可能、取消不能、スタンド・バイ、確認、不確認、譲渡可能、回転、見返り、後日払い、レッド・クローズ付、グリーン・クローズ付等がある。
  2. 決済通貨
    外貨為替に関する事項は、主に、通貨価値保護法(Law No. 1567)、通貨価値保護令(Decree No. 32)、外国直接投資法(Law No. 4875)、中央銀行通達(Circular No. I-M)および中央銀行資本移動通達により規制されている。かつては通貨価値保護令に基づき、中央銀行によって決済可能通貨が指定されていたが、2009年の同法令改正により(2009年3月10日付官報27165号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、トルコ語)、金融機関は自由に決済通貨を選択できるようになった。

貿易外取引

トルコはOECD加盟国として、貿易外取引自由規約をはじめとする貿易外取引の自由化に関するガイドライン等に準拠している。

  1. ロイヤルティー
    外国投資奨励法(Law No. 6224)は外国直接投資法(Law No. 4875)第5条によって廃止されたが、外国直接投資法では、特許権やノウハウといったロイヤルティー契約に関する規制は設けられていない。
  2. 貿易取引に関する保険

    保険法(Law No. 5684)第15条により、トルコ居住者は原則として、自己の被保険利益に保険を掛けるためにはトルコの保険会社を利用しなければならない。ただし、輸出入貨物に対する輸送保険については、海外において外国の保険会社を利用することが認められている。

    貿易取引の当事者は、輸送保険料をどちらが負担するかについて自由に合意することができるが、国際貿易取引においては、国際商業会議所(International Chamber of Commerce: ICC)が策定したインコタームズ(Incoterms)に基づき、保険料を負担する当事者を明示するのが通常である。

  3. 中央銀行もしくは貿易省への報告義務
    次の場合、トルコ通貨保護法第32号および中央銀行の資本移動に関する通達により、中央銀行もしくは貿易省への報告が義務付けられている(トルコ通貨保護法第32号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます中央銀行の資本移動に関する通達外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、トルコ語)。
    1. トルコ投資家が外国に資本を移転した場合
      当該取引について3カ月以内に、貿易省のウェブサイトにある所定のフォームを使用して貿易省および国庫・財務省(Ministry of Treasury and Finance)に報告しなければならない(トルコ通貨保護法第32号の10-1および2)。
    2. トルコ居住者が外国の金融機関から融資を受けた場合
      トルコ国内の銀行は中央銀行に対し、当該取引を報告しなければならない。ただし、トルコ居住者が海外での業務用に受けた融資は除く(中央銀行の資本移動に関する通達の17-1)。
    3. トルコ居住者が、トルコ政府が保証するプロジェクトのために、外国の金融機関から365日以上にわたって融資を受けた場合
      当該トルコ居住者およびトルコ側の銀行は国庫・財務省に対し、30日以内に当該取引について報告しなければならない(トルコ通貨保護法第32号の12-1および2)。
    4. 5万ドル以上に相当するトルコ・リラまたは外国通貨の送金については、トルコ国内の銀行は30日以内に中央銀行に対し、当該送金について報告しなければならない(通貨価値保護令)。ただし、輸出入取引および貿易外取引にかかる送金は除く(トルコ通貨保護法第32号の3-8)。
    5. 5万ドル以上に相当するトルコ・リラまたは外国通貨の海外からの入金については、中央銀行に対し、入金額および入金理由を書面により通知する必要がある(中央銀行の資本移動に関する通達の19-6)。

資本取引

1. 対内および対外直接投資に関する規制・許認可、2. 証券投資に関する規制・許認可、3. 対外借入・貸出に関する規制・許認可、4. 預金勘定取引、5. 利子、配当、利益など対外送金に関する規制・許認可

  1. 対内および対外直接投資に関する規制・許認可
    1. 会社設立のための最低投資額
      外国人投資家は、トルコの商法が定める形態の会社、または責任関係法が定めるパートナーシップを設立することができる(外国直接投資規則第9条)が、同時にトルコの商法は、会社設立に必要な最低資本金について、次のとおり定めている。最低資本金の金額は2023年の11月に改訂された(2023年11月25日付官報32380号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(90KB)
      1. 株式会社(Joint Stock Company)の場合:25万トルコ・リラ以上
      2. 有限責任会社(Limited Liability Company)の場合:5万トルコ・リラ以上
    2. 産業技術省による投資許可
      外国直接投資法の目的は、[1]対内直接投資の促進、[2]外国人投資家の権利保護、[3]投資環境の国際標準化、[4]許可に代えて届出を基本とする制度の構築、[5]政策および手続きの合理化による外国からの直接投資の増進、である。
      トルコ国内への対内投資については、特定の業種を除き、産業技術省による許可は不要。
    3. 資本移転に関する報告義務
      外国投資を規制する主たる法律は、外国直接投資法および外国直接投資規則であり、資本移動に関しては通貨価値保護令および中央銀行資本移動通達で要件が定められている。トルコの会社の株式を取得する外国人または外国法人は、株式取得後1カ月以内に貿易省に届け出なければならない。また、株式を取得した会社の事業および資本の内容について、毎年5月末日までに、所定フォーム(FDI Operations Data Form Annex I)を使用して産業技術省に届け出なければならない。
      さらに、外国人投資家がトルコへの対内直接投資を行う場合は、外国直接投資法に従わなければならない(通貨価値保護令第12条)。
      外国からトルコ国内に投資資金を移動させる場合、トルコ国内の銀行その他の金融機関が資金を受領することが必要である(中央銀行資本移動通達第1.2条)。
      資本移転に関する報告義務(SERMAYE HAREKETLERİ GENELGESİ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(547KB)、トルコ語)
    4. WTO、TRIM、TRIPS等
      トルコは、1995年3月26日にWTOに加盟して以来、TRIMやTRIPS等の国際条約に従い、外国投資の奨励策を整備して積極的に運用している。商品や市場によって異なるが、外国投資奨励策として、法人税の軽減、土地割当、関税免除等の措置が認められている。
  2. 証券投資に関する規制・許認可
    1. 証券取引
      通貨価値保護令によれば、非居住者は居住者に対し、証券の売却を自由に行うことができる。ただし、売却する証券が外国証券である場合は、資本市場評議会に登録しなければならない。
      また非居住者は、資本市場評議会に認可された仲介業者または銀行を通さなければ、証券を売買することができない。トルコの証券を取得する資金の海外からの受け取り、および売却益の海外送金については、トルコ国内の銀行を利用して行わなければならない。
    2. キャピタルゲイン
      証券貸借によって得られた利益については、トルコ国内の銀行、証券ブローカーまたはカストディアン銀行が取引を仲介した場合には、源泉徴収税が課税される。2010年10月1日より、個人投資家と法人投資家が区別されるようになり、これにより、法人および一定の非居住機関投資家には源泉徴収税が課されないこととなった。個人投資家に対する源泉徴収税の扱いは、居住者または非居住者の区分に応じ、0~10%の税率で課税される。
    3. 対外借入・貸出に関する規制・許認可
      1. 居住者による対外借入/貸付
        通貨価値保護令によれば、対外貸付は自由に行うことができるが、トルコの銀行を通して行わなければならない。また、トルコ居住者は、商業的および専門的な目的以外では、外国為替または通貨インデックスを貸し付けることはできない。
      2. 外貨貸付
        2009年6月の通貨価値保護令改正により、トルコ国内の銀行は、次の外貨建て貸付を行うことができるようになった。
        1. 輸出入取引における商品の引き渡しに関連する貸付
        2. 投資奨励証明書により認められる貸付、または投資財に対する貸付
        3. 外国で事業を行うトルコ企業に対する貸付、および国内外の入札またはUndersecretariat of Defence Industryが承認する防衛産業プロジェクトにより事業を受注したトルコ居住者に対する貸付
        4. 商業または専門的な目的による貸付であって、借主がトルコ国内の銀行で保有する外貨預金、および借主が保有するOECD加盟国の中央政府または中央銀行が発行または保証する証券に適用される上限金額に従う貸付

        前述の2009年の通貨価値保護令改正により、トルコ国内の銀行は、商業的または専門的な目的のためにトルコの居住者に対して通貨インデックス貸付を行うことができるようになった。また同改正により、トルコ国内の個人は前述したものを除き、トルコ国内における、または外国からの外貨建て貸付または通貨インデックス貸付を受けることはできないとされた。

    4. 預金勘定取引
      銀行法(Law No. 5411)により、トルコ国内の銀行のみがトルコ国内での預金を受け付けることができる。トルコ国内で外貨またはトルコ・リラによる預金口座を開設するには、預金口座および参加口座に関する銀行調整監視機構の規制に従い、顧客確認手続きを取る必要がある。
    5. 利子、配当、利益などの対外送金に関する規制・許認可
      利益、配当、売却もしくは清算による収入、または貸付の元本および金利は、銀行を通して、トルコ国外に自由に移動させることができる。資金洗浄防止法により、疑わしい取引がある場合、銀行は金融犯罪捜査局に通知する義務を負っている。
      配当については、租税条約に別段の定めがない限り、源泉徴収税10%の課税対象となる(2021年12月22日付官報31697号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(189KB)、トルコ語)。株式の売却については、承認や許認可を取得する必要はないが、課税対象となる場合がある。
      利益は、商法に定める法定準備金を除き、配当として分配するか、会社の資金として留保するか、または資本に組み入れることができる。

関連法

中央銀行法(Law No.1211)、未納金の回収に関する法(Law No. 6183)、通貨価値保護法(Law No. 1567)および関連法令

  1. 中央銀行法(Law No. 1211)
    中央銀行法は、中央銀行の効率化を目的として1970年1月14日に施行された。同法により中央銀行の法律上の地位、組織体制および権限・責任が変更された。変更の内容は、資本の増加(1,500万リラから2,500万リラに増加)、国庫・財務省による出資比率の制限(51%以下)、「理事局」の設置、理事長および副理事長による新たな意思決定機関の設置、最高意思決定機関の取締役会から中央銀行「委員会」(6人のメンバーで構成)への変更である。また、中央銀行の権限および責任が大幅に強化され、例えば金融政策手段や貨幣供給・流動性を管理する公開市場操作の実施等が、中央銀行の権限として認められた。
    2001年の国内金融危機の後には中央銀行法が改正され、中央銀行の使命は物価の安定および金融の安定にあるとされた。この範囲において、中央銀行は「手段の独立性」を与えられ、それに基づいて金融政策を実施している。
  2. 未納金の回収に関する法律(Law No. 6183)
    1. 範囲
      未納金の回収に関する法律(Law No. 6183)は、政府(特別地方行政庁および地方自治体を含む)に対する未納金に適用される。政府が私法に基づいて有する債権は、執行・倒産法の規定に従って執行・回収される。
    2. 未納金の回収に関する法律に基づく会社の責任
      有限責任会社の持分権者(株式会社の株主に相当)は、国家、特別地方行政区または地方自治体が有する未納金(制裁課税、行政上の罰金、遅延利息等)のうち、当該有限責任会社から回収できなかった未納金について、その持分の数に応じて(持分保有比率であって、発行済み持分の金額による比例ではない)直接責任を負う。行政庁は、現在の持分権者であるか過去の持分権者であるかを問わず、持分権者の一部または全員に対して、自らの裁量によって償還を請求することができる。
      また、会社の代表者(有限責任会社の執行社員、株式会社の取締役等)は、前述した有限責任会社の持分権者と同様の責任を負う。同代表者は、責任を負う持分権者の存在にかかわらず、負債全額について個人的に責任を負う。
  3. 通貨価値保護法(Law No. 1567)および関連法令
    通貨価値保護法は、外貨、株式、債券、貴金属その他の支払保証、輸出入のために用いられる商品の売買を規制する基本的枠組みを定めるものである。外貨管理規制の詳細は、通貨価値保護法に基づき制定される閣僚評議会の政令により定められている。2008年2月28日に施行された通貨価値保護令(Decree No. 32)が2017年7月の改正では、主に先物為替に関連する、レバレッジ取引やデリバティブ取引について改正が行われた。また、貴金属に関する規定が2023年に改定されている(第6条の2、3、8および9)。
    通貨価値保護令は、一般に国内への資金移動または国外への資金移動を対象とし、トルコ国内外への資金移動の自由な枠組みを定めるものである。また同令は、トルコ・リラの取引、外貨取引、トルコ居住者に対する現金その他による貸付、ならびにトルコの証券および貴金属に対する投資等について定めている。
    また、2022年4月18日より輸出業者は輸出売上高の40%をトルコ・リラに換金する必要がある(トルコ中央銀行指示書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(251KB)、トルコ語)。

その他

資金洗浄防止法、トルコの会計基準

金融犯罪調査委員会(The Financial Crimes Investigation Board:MASAK外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

公開審査・会計監査基準局(Public Oversight, Accounting and Auditing Standards Authority:KGK外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、トルコ語)