トルコの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年のGDP成長率は3.6%と堅調。
  • 消費者物価指数上昇率は30.9%、2021年以降最も低い伸び率に。
  • 輸出は4.4%増、輸入は6.2%増。貿易赤字は12.0%増と拡大。
  • 直接投資は対内、対外ともに高い伸び。EUやアジアとの投資が好調。
  • 日本のトルコ向け輸出は微減、トルコからの輸入は4.1%増加。

公開日:2026年9月3日

マクロ経済

2025年は3.6%の堅調な経済成長、インフレ率も低下

トルコ統計機構(TUIK)の発表(2026年3月2日付、注1)によると、2025年のトルコの実質GDP成長率は前年を0.1ポイント上回る3.6%で、1人当たりGDPは16.7%増の71万2,200トルコ・リラ(以下、リラ、約272万円、2026年3月2日の換算レートで1リラ=約3.8円)となった。GDPの54.4%を占め最大の需要項目である民間最終消費支出は、前年比4.2%増と引き続き堅調に推移した。トルコでは、物価高騰や通貨リラの下落を見越して「今が最も安い」と考える消費者心理が根強く、購買意欲が維持されやすい。トルコ経済が成長基調にある中、2025年の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比30.9%だった。前年の44.4%から低下し、2021年以降で最も低い水準となった。

(注1)
統計データは過去にさかのぼって修正が入ることがある。正確な数値を確認する場合は、各機関の最新データを参照のこと。

トルコ中央銀行(以下、中銀)は、政策金利(1週間物レポ金利)を2025年4月に一時46.0%に引き上げた後、段階的に引き下げ、2026年4月時点で37.0%としている。一方で為替市場ではリラ安が続き、2025年は対ドルで前年比17.0%の下落となった。トルコ政府は物価上昇への対応として、2026年1月1日付で最低賃金の月額グロス額を前年比27%増の3万3,030リラに引き上げた(2025年12月25日付ビジネス短信参照)。

2026年2月末以降の中東情勢の悪化などを背景に、トルコを取り巻く経済環境は大きく変化している。市場の動揺やエネルギー価格の高騰がリラの下押し要因となり、中銀は通貨防衛や流動性確保のため金準備を取り崩した。中銀の発表によると、2026年3月の1カ月間で金準備は約367億7,800万ドル減少した。ただし、4月以降は回復傾向に転じている。こうした中、トルコは地域のエネルギーおよび貿易回廊において安定的な中核拠点としての地位を再確立するとともに、金融・製造・物流拠点としての地位強化を目指している。その一環として2026年4月には税制優遇を含む大規模な直接投資促進策を打ち出した(2026年5月7日付ビジネス短信参照)。優遇措置の具体的な条件などは、2026年7月時点では明らかになっていない。また、最大の貿易相手であるEUとの関係では、EU産業加速法(IAA)の「Made in EU」(EU原産地要件)の枠組みにトルコが含まれるか否かが今後の焦点となっている(2026年3月6日付ビジネス短信参照)。

中銀は2026年2月、同年年末のCPI上昇率の目標を16.0%に設定したが、中東情勢の悪化などを踏まえ達成は困難との見方が強いことから、5月14日、26%に上方修正した。なお、IMFは2026年4月の世界経済見通しで、原油・ガス価格の上昇が経済活動の重荷になるとして、トルコの同年のGDP成長率の見通しを3.4%へ下方修正するとともに、インフレ率は28.6%と依然として高止まりが続くとの予測を示した。格付け会社では、フィッチ・レーティングスが4月10日、外貨準備の減少などを背景にトルコの信用格付け「BB−」を据え置きつつ、見通しを「ポジティブ」から「安定的」に引き下げた。2026年末の成長率は3.6%、インフレ率は27%と予測している。S&Pグローバルも4月17日、格付けを「BB−」、見通しを「安定的」に据え置きつつも、成長率を3.4%、インフレ率29.3%とより厳しい見通しを示した。

表1 トルコの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注1〕四半期の伸び率は前年同期比 〔注2〕統計データは過去にさかのぼって修正が入ることがある。正確な数値を確認する場合は、各機関の最新データを参照のこと。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 5.0 3.5 3.6 3.0 4.4 3.6 3.4
民間最終消費支出 30.1 6.5 4.2 △ 0.3 1.6 2.6 6.6
政府最終消費支出 2.2 △ 0.8 0.9 3.4 △ 0.9 2.5 △ 0.9
国内総固定資本形成 7.3 2.7 7.0 1.8 8.9 11.5 5.4
財・サービスの輸出 △ 2.3 0.1 △ 0.3 0.2 2.0 △ 0.8 △ 2.3
財・サービスの輸入 11.8 △ 3.8 4.7 4.6 6.9 3.5 3.9

〔注1〕四半期の伸び率は前年同期比
〔注2〕統計データは過去にさかのぼって修正が入ることがある。正確な数値を確認する場合は、各機関の最新データを参照のこと。

〔出所〕トルコ統計機構(TUIK)

貿易

輸出、輸入ともに増加、貿易赤字は前年比12%増

2025年のトルコの輸出は前年比4.4%増の2,732億9,600万ドル、輸入は6.2%増の3,654億3,100万ドルで、貿易赤字は12.0%増の921億3,500万ドルとなった。

2025年の輸出を品目別に見ると、最大の自動車・同部品は前年比13.2%増の367億2,700万ドルと輸出全体の伸びを牽引した。2位の一般機械(1.4%増)、3位の電気機器(7.9%増)、5位の貴金属類(2.6%増)も堅調だった。また、近年の防衛産業の急速な発展に伴い、武器および銃砲・同部品が79.7%増と大きく伸びた。他方、構成比4位の鉱物性燃料(7.9%減)や8位の鉄鋼製品(1.2%減)のほか、生産コスト上昇に直面する衣類ではニット衣類が4.9%減、非ニット衣類が8.3%減となった。

国・地域別の輸出では、EU向けが前年比7.7%増で輸出全体の42.8%を占め、首位だった。EU向けでは、国別で首位のドイツ(8.5%増)、2位のイタリア(2.2%増)、3位のフランス(11.5%増)が好調だった一方、オランダは4.6%減だった。EU以外では、国別2位の英国(9.7%増)が伸び、規模は小さいものの、シリア向け輸出が60.0%増と急増した。これに対して3位の米国(0.1%減)、4位のイラク(4.8%減)はそれぞれ減少した。

2025年の輸入を品目別に見ると、鉱物性燃料は首位だったが、前年比4.7%減となった。次いで、一般機械(5.3%増)、自動車・同部品(16.4%増)、電気機器(10.1%増)、貴金属類(13.0%増)など主要品目は増加した。鉄鋼の輸入は6.2%減だった。

国・地域別の輸入では、国別で首位の中国が前年比10.3%増で全体の13.6%を占めた。ロシアが3.6%減(構成比11.6%)と減少したが2位を維持し、前年の主な順位に変動はなかった。EU諸国を見ると、ドイツ(11.2%増)、フランス(2.8%増)は増加したが、イタリア(18.5%減)は減少し、EU全体では4.8%増にとどまった。

表2-1 トルコの主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
自動車・同部品 32,437 36,727 13.4 13.2
一般機械 25,553 25,914 9.5 1.4
電気機器 16,448 17,754 6.5 7.9
鉱物性燃料 16,551 15,250 5.6 △ 7.9
貴金属類 13,030 13,367 4.9 2.6
プラスチック製品 10,920 11,215 4.1 2.7
鉄鋼 10,182 10,730 3.9 5.4
鉄鋼製品 9,812 9,696 3.5 △ 1.2
ニット衣類 10,106 9,615 3.5 △ 4.9
非ニット衣類 7,384 6,774 2.5 △ 8.3
果実・ナッツ類・豆類 6,295 6,210 2.3 △ 1.4
アルミニウム・同製品 5,225 5,583 2.0 6.9
家具 5,072 5,169 1.9 1.9
武器および銃砲・同部品 2,617 4,703 1.7 79.7
合計(その他含む) 261,778 273,296 100.0 4.4

〔出所〕トルコ統計機構(TUIK)

表2-2 トルコの主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料 65,590 62,530 17.1 △ 4.7
一般機械 39,558 41,644 11.4 5.3
自動車・同部品 31,670 36,855 10.1 16.4
電気機器 27,223 29,986 8.2 10.1
貴金属類 24,873 28,110 7.7 13.0
鉄鋼 23,659 22,203 6.1 △ 6.2
プラスチック製品 15,626 15,627 4.3 0.0
有機化学品 9,453 8,935 2.4 △ 5.5
光学・精密機器 6,789 7,733 2.1 13.9
銅鉱・同製品 6,013 7,494 2.1 24.6
アルミニウム・同製品 6,113 7,096 1.9 16.1
医療用品 5,429 6,501 1.8 19.7
航空機器・同部品 4,403 5,422 1.5 23.1
鉄鋼製品 4,162 4,222 1.2 1.4
合計(その他含む) 344,010 365,431 100.0 6.2

〔出所〕トルコ統計機構(TUIK)

表3-1 トルコの主要国・地域別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕EUは、加盟27カ国のうちキプロスを除く26カ国
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 108,501 116,856 42.8 7.7
ドイツ 20,431 22,166 8.1 8.5
イタリア 12,947 13,231 4.8 2.2
フランス 10,043 11,195 4.1 11.5
スペイン 9,781 10,416 3.8 6.5
ルーマニア 7,780 8,549 3.1 9.9
オランダ 8,567 8,171 3.0 △ 4.6
ポーランド 6,262 6,481 2.4 3.5
ブルガリア 5,150 5,574 2.0 8.2
ギリシャ 4,817 5,360 2.0 11.3
ベルギー 4,362 5,025 1.8 15.2
スロベニア 2,578 3,214 1.2 24.7
英国 15,289 16,776 6.1 9.7
米国 16,351 16,328 6.0 △ 0.1
イラク 13,001 12,378 4.5 △ 4.8
アラブ首長国連邦(UAE) 8,296 9,281 3.4 11.9
ロシア 8,562 6,725 2.5 △ 21.5
モロッコ 3,441 4,333 1.6 25.9
エジプト 4,176 4,078 1.5 △ 2.3
ウクライナ 3,538 3,972 1.5 12.3
サウジアラビア 3,985 3,807 1.4 △ 4.5
シリア 2,183 3,493 1.3 60.0
合計(その他含む) 261,778 273,296 100.0 4.4

〔注〕EUは、加盟27カ国のうちキプロスを除く26カ国

〔出所〕トルコ統計機構(TUIK)

表3-2 トルコの主要国・地域別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕EUは、加盟27カ国のうちキプロスを除く26カ国
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 110,399 115,721 31.7 4.8
ドイツ 27,084 30,113 8.2 11.2
イタリア 19,311 15,735 4.3 △ 18.5
フランス 12,500 12,856 3.5 2.8
スペイン 9,363 10,167 2.8 8.6
ポーランド 5,575 6,030 1.7 8.2
オランダ 5,021 5,159 1.4 2.7
ルーマニア 3,984 4,818 1.3 20.9
ベルギー 3,874 4,237 1.2 9.4
チェコ 3,823 4,096 1.1 7.1
中国 44,928 49,576 13.6 10.3
ロシア 44,018 42,438 11.6 △ 3.6
米国 16,226 18,080 4.9 11.4
スイス 11,174 15,738 4.3 40.8
韓国 9,246 10,261 2.8 11.0
アラブ首長国連邦(UAE) 7,363 9,674 2.6 31.4
英国 6,846 7,255 2.0 6.0
インド 7,021 6,082 1.7 △ 13.4
日本 4,737 5,029 1.4 6.2
マレーシア 4,667 5,029 1.4 7.8
カザフスタン 3,386 4,664 1.3 37.7
ブラジル 3,864 4,547 1.2 17.7
合計(その他含む) 344,010 365,431 100.0 6.2

〔注〕EUは、加盟27カ国のうちキプロスを除く26カ国

〔出所〕トルコ統計機構(TUIK)

対内・対外直接投資

対内直接投資は44.7%増と大幅に伸長、オランダが首位

中銀の発表によると、2025年の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比44.7%増の96億5,700万ドルと大きく伸びた。地域別に見ると、EUからの投資が前年比49.6%増で全体の構成比の73.0%を占めた。北アフリカからの投資は2.8倍、アジアからは3.3倍とそれぞれ著増した。

国別では、オランダからの投資が最も多く、前年比76.5%増の28億6,300万ドルとなった。次いでルクセンブルクが14.9倍の11億6,400万ドル、3位のカザフスタンが49.5倍の11億3,800万ドルと、それぞれ増加が際立った。

オランダが首位を占める背景は、同国が多国籍企業にとり欧州最大級の投資・持株会社拠点であるため、同国を経由した対トルコ投資が多いことに関係している。例えば、オランダの投資会社プロサス(Prosus)が傘下のトルコのフィンテック企業イージーコー(iyzico)を通じて、2025年2月にトルコの電子決裁企業ペイネット(Paynet)を8,700万ドルで買収した。プロサスはこれまでにも、傘下の金融決済プラットフォーム、ペイユー(PayU)を通じてイージーコーを1億6,500万ドルで買収(2019年)し、さらにトルコのフードデリバリー大手イェメキセペティ(Yemek Sepeti)の親会社であるデリバリーヒーロー(Delivery Hero)の主要株主になるなど、トルコのデジタル分野への投資を拡大している。

3位のカザフスタンは、電子商取引(EC)最大手カスピ・ケーゼット(Kaspi.kz)が、トルコのEC大手ヘプシブラダ(Hepsiburada)の過半数(65%以上)の株式を約11億2,700万ドルで取得することで合意し、支払いは2025年第1四半期に完了する予定とされた(2024年10月24日付ビジネス短信参照)。その後、カスピ・ケーゼットによるヘプシブラダ株式の取得(譲渡手続き)が完了した。また、カスピ・ケーゼットは2025年3月にはラボバンク(Rabobank)のトルコ子会社の買収契約を締結し、12月にはヘプシブラダに対し41億7,000万リラの増資を実施するなど、トルコ市場での事業基盤、特に金融分野における地位を強化した。

2位の投資国ルクセンブルクは、国際的な金融センターとしてファンド資金が集まるため、同国を経由してトルコに投資資金が流入するケースが多いとみられる。

表4 トルコの国・地域別対内・対外直接投資〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕EUは、加盟27カ国のうちキプロスを除く26カ国
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 4,716 7,053 73.0 49.6 2,811 4,040 47.3 43.7
オランダ 1,622 2,863 29.6 76.5 969 1,554 18.2 60.4
ルクセンブルク 78 1,164 12.1 1,392.3 111 64 0.7 △ 42.3
ドイツ 877 779 8.1 △ 11.2 447 482 5.6 7.8
フランス 203 419 4.3 106.4 156 125 1.5 △ 19.9
アイルランド 484 197 2.0 △ 59.3 5 7 0.1 40.0
スペイン 191 184 1.9 △ 3.7 87 501 5.9 475.9
ベルギー 46 156 1.6 239.1 18 27 0.3 50.0
オーストリア 66 153 1.6 131.8 39 129 1.5 230.8
デンマーク 22 145 1.5 559.1 3 2 0.0 △ 33.3
イタリア 89 119 1.2 33.7 196 271 3.2 38.3
英国 390 313 3.2 △ 19.7 733 818 9.6 11.6
スイス 478 347 3.6 △ 27.4 103 197 2.3 91.3
北アフリカ 16 45 0.5 181.3 219 131 1.5 △ 40.2
リビア 5 38 0.4 660.0 0 0 0.0
エジプト 11 7 0.1 △ 36.4 37 113 1.3 205.4
北米 740 536 5.6 △ 27.6 1,390 1,631 19.1 17.3
米国 738 536 5.6 △ 27.4 1,334 1,619 19.0 21.4
アラブ首長国連邦(UAE) 313 367 3.8 17.3 578 825 9.7 42.7
アジア 453 1,516 15.7 234.7 276 476 5.6 72.5
日本 55 133 1.4 141.8 1 12 0.1 1,100.0
カザフスタン 23 1,138 11.8 4,847.8 66 92 1.1 39.4
ウズベキスタン 0 2 0.0 全増 97 123 1.4 26.8
シンガポール 68 120 1.2 76.5 1 113 1.3 11,200.0
合計(その他含む) 6,672 9,657 100.0 44.7 6,596 8,541 100.0 29.5

〔注〕EUは、加盟27カ国のうちキプロスを除く26カ国

〔出所〕トルコ中央銀行(TCMB)

対内直接投資を業種別に見ると、例年通りサービス部門のシェアが高く、前年比74.4%増で全体の64.9%を占めた。サービス部門の約半数を占める卸売業および小売業(80.7%増)や情報通信業(4.7倍)が大幅に増加した。また、産業部門(構成比34.2%、13.8%増)の製造業においては、食品、飲料、タバコ製品が全体構成比の13. 7%(3.5倍)、次いでゴムおよびプラスチック製品の製造が3.7 %(3.9倍)を占めて急増した。一方、化学薬品、化学製品、基礎医薬品および材料の製造は60.3%減となった。銀行など金融機関への投資は1億2,700万ドル(1.3%)と小規模ながら、15.9倍と著増した。

M&Aに関するデロイトのレポートによると、2025年は5億ドル超の大型M&A案件が7件に増加、全体の構成比44%を占めたとの報告がある。最大の案件としては、MOIジョイントベンチャー(トルコ、米国、スペイン、アルゼンチン企業で構成)が、トルコの車両検査ステーション(車検)の建設、保守、運営事業の民営化案件を約17億ドルで落札した。米国に関しては、投資会社アポロ・グローバル・マネジメント(Apollo Global Management)が、トランスアナトリア・パイプライン(TANAP)(2019年12月16日付ビジネス短信参照)の権益を保有するブリティッシュ・ペトロリアム(BP)子会社の持分を約10億ドルで取得した案件や、ウーバー(Uber)が、トレンドヨル・ゴー(Trendyol Go、注2)の株式を7億ドルで取得した案件などがある。その他、フランス系のシーバ・ロジスティクス(Ceva Logistics)が、トルコのボルサン・ロジスティクス(Borusan Logistics)の全株式を約3億8,300万ドルで取得した案件やアゼルバイジャンの国営石油会社ソカール(SOCAR)のトルコ法人であるソカール・トルコ(SOCAR Turkey)が、中央アナトリア天然ガス複合サイクル発電所を約2億2,500万ドルで取得した案件などがあった。

(注2)
トルコの大手ECのトレンドヨル・ゴーが手掛ける食品・日用品デリバリーサービス企業。

対外直接投資は29.5%増、EUやアジア向けで拡大

トルコの対外直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年比29.5%増の85億4,100万ドルだった。地域別では、構成比47.3%を占めるEUへの投資額が43.7%増、北米が17.3%増、アジアが72.5%増とそれぞれ増加した。一方、北アフリカは前年に著増した反動で40.2%減だった。

国別の投資額では、米国向けが前年比21.4%増の16億1,900万ドルで首位、次いでオランダが60.4%増の15億5,400万ドル、アラブ首長国連邦(UAE)が42.7%増の8億2,500万ドルだった。そのほか、シンガポールが113.0倍、日本が12.0倍、スペインが5.8倍、オーストリアが3.3倍、エジプトが3.1倍と急伸した。一方、ルクセンブルク(42.3%減)、フランス(19.9%減)、デンマーク(33.3%減)は減少した。投資額を業種別に見ると、サービス部門(構成比61.0%)のうち不動産業(34.1%)が前年比15.8%増、運輸・倉庫業も8.4倍と伸びた。トルコでは、高いインフレ率を背景とした生産コスト高騰に伴い、繊維・既製服産業を中心に製造拠点の海外移転の動きがみられる。移転先は北アフリカやバルカン諸国が中心だが、現地での人材確保や品質面の課題も浮上している。

投資環境・外資誘致政策

中東情勢変化を背景に、製造・輸出・金融の地域拠点を目指す

トルコは最大の貿易相手国であるEUとの間で1996年に関税同盟を発効した(ジェトロのトルコWTO・他協定加盟状況参照)。自由貿易協定(FTA)の発効相手は欧州自由貿易連合(EFTA)および欧州や中東などの各国に拡大し、2025年にはカタールが加わり、合計24の国・地域となった(シリアとのFTAは2011年から停止中)。一方、ウクライナ、レバノンおよびスーダンとはFTAを締結済みだが、2026年7月時点でまだ発効していない。

中東情勢の不安定化を背景に、トルコ政府は海外からのさらなる投資誘致に乗り出している。レジェップ・タイップ・エルドアン大統領は2026年4月、対内直接投資の拡大を目的とした法的・行政的・財政的・制度的改革を包括的に進める新施策(2026年5月7日付ビジネス短信参照)を発表した。同施策には、イスタンブール金融センター(IFC)内のトランジット貿易、製造・輸出企業に対する法人税の免除や所得税の減免、トランジット貿易をはじめとする海外収益の非課税化など、大規模な税制優遇措置が盛り込まれた。同時に、会社設立やビザ取得といった投資関連手続きを一元化し、デジタルで実施可能な「ワンストップ投資窓口」の創設も含まれている。

これに関連して、メフメト・シムシェキ国庫・財務相は同月、新施策は輸出拡大、対内投資の促進、IFCを地域の中核的金融ハブとして発展させることを目的としているとし、本施策が産業の高度化と高付加価値分野への移行を中核とする包括的な構造改革であることを強調した。重点分野としては、バリューチェーン上流への移行・強化、グリーン化およびデジタル化の推進、生産性向上を目的とした投資促進に加え、鉄道をはじめとする基幹インフラの整備・強化を示した。また、高付加価値サービスの輸出については、ソフトウェア、ビデオゲーム、医療ツーリズム、教育、エンジニアリング、デザイン、設計などを挙げた。これらの施策は今後、国会で法制化される見通しだ。

トルコ政府としては、地政学リスクの高まりを受けて世界的に企業の投資先の再選別が進む中、自国を「安定した製造・輸出拠点」として再定義することを狙っている。今後、制度改革の実行力と投資環境の改善が直接投資の動向を左右する重要な要素になるとみられる。実際、進出日系企業の間では、2026年2月に始まったイランをめぐる軍事衝突時もトルコからの退避やトルコへの渡航規制を実施した企業が少なかったことを踏まえ、地政学的安定性を評価する声が多い。一方、進出にあたっては、ボラティリティ(変動性)やインフレ、コスト高などのビジネス環境に対する懸念を指摘する声もある。

対日関係

日本の対トルコ輸出は微減、輸入は増加、両国間の投資は拡大

日本の財務省貿易統計(通関ベース)によると、2025年の日本の対トルコ貿易は、輸出が34億4,600万ドルで前年比0.4%減となった一方、輸入は10億3,700万ドルで4.1%増加した。この結果、日本の対トルコ貿易黒字は24億1,000万ドルとなった。

日本からトルコへの輸出では、前年に最大の輸出品目だった一般機械が前年比1.6%減少した。特に金属加工機械の減少が目立った。これに伴い、一般機械は2位に後退し、2.0%増の輸送用機器が首位となり順位が入れ替わった。

トルコでは、輸入増による国内産業への影響を抑えるため、ECや個人輸入に対する輸入規制強化(2025年8月)、完成車への追加関税導入(9月)などの制度変更が行われた。関税同盟の対象国やFTAを発効している国・地域からの輸入については、一部製品を除き輸入関税や追加関税が除外される場合がある。日本を含む、トルコとFTAが発効していない国・地域は、こうした急な制度変更の影響を受けやすくなっている。日本とトルコは、FTAを含む広範な経済連携協定(EPA)の交渉を2014年に開始し、2026年5月時点で交渉継続中である。

トルコから日本への輸入では、食料品が最大の品目で、前年比9.5%増加し4億800万ドルだった。中でも、トラウトやマグロなどの魚介類は18.5%増となり、パスタを含む穀物類も9.5%増と堅調に伸びた。トルコの輸出業者は、日本が世界有数の食品輸入国であることや、日本の消費者の品質や健康への志向が強いことに着目している。魚介類については、日本では生鮮品から加工品、高級品まで幅広い需要があり、数量、付加価値の両面で有望な市場と認識されている。このため、トルコの食品輸出団体は中期的に日本向け食品輸出を10億ドル規模に拡大する目標を掲げている。

食品以外でも、一般機械(前年比25.3%増)、原料品(3.1%増)、輸送用機器(15.0%増)などが順調に伸びた。一方、全体の12.3%を占める衣類・同付属品(3.9%減)のほか、原料別製品(18.5%減)、医薬品(8.7%減)など化学製品(3.3%減)は低調だった。この中で原料別製品の減少は、鉄鋼(39.7%減)や非金属鉱物製品(59.3%減)の大幅な落ち込みが影響した。トルコの輸出業者の間では、日本市場の特徴として、品質基準や要求事項が厳しく、問い合わせ対応も多い点が挙げられる一方、一度信頼関係を築くと長期的かつ安定した取引につながると考えられており、安定性の高い市場として評価されている。

表5-1 日本の対トルコ主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
輸送用機器 859 877 25.4 2.0
自動車 527 657 19.1 24.7
自動車の部分品 284 185 5.4 △ 35.0
一般機械 888 874 25.3 △ 1.6
建設用・鉱山用機械 326 328 9.5 0.6
原動機 119 123 3.6 3.2
金属加工機械 130 109 3.2 △ 16.1
電気機器 766 696 20.2 △ 9.1
電池 263 217 6.3 △ 17.4
電気計測機器 124 121 3.5 △ 3.2
重電機器 129 92 2.7 △ 29.2
原料別製品 338 373 10.8 10.3
鉄鋼 166 222 6.5 34.1
金属製品 70 62 1.8 △ 11.1
化学製品 197 182 5.3 △ 7.7
プラスチック 67 57 1.7 △ 13.8
原料品 79 91 2.6 15.3
合計(その他含む) 3,460 3,446 100 △ 0.4

〔出所〕 財務省「貿易統計(通関ベース)」をドル換算

表5-2 日本の対トルコ主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
食料品 373 408 39.4 9.5
魚介類 136 162 15.6 18.5
果実 87 87 8.4 △ 0.4
穀物類 74 81 7.8 9.5
野菜 39 35 3.4 △ 9.6
その他 176 168 16.2 △ 4.8
衣類・同付属品 133 127 12.3 △ 3.9
一般機械 120 150 14.5 25.3
原動機 61 88 8.5 43.9
原料別製品 109 89 8.6 △ 18.5
織物用糸・繊維製品 31 33 3.2 4.5
原料品 73 75 7.3 3.1
化学製品 68 65 6.3 △ 3.3
医薬品 30 27 2.6 △ 8.7
輸送用機器 47 54 5.2 15.0
自動車の部分品 22 24 2.3 9.9
電気機器 31 27 2.6 △ 10.3
合計(その他含む) 996 1,037 100 4.1

〔出所〕 財務省「貿易統計(通関ベース)」をドル換算

日本との直接投資は往復ともに増加、裾野も広がる

中銀によると、日本の2025年のトルコ向け直接投資は前年比2.4倍の1億3,300万ドル、トルコの日本向け直接投資も12.0倍の1,200万ドルと大幅に増加した。

日本企業によるトルコでの主な事業展開の動き(2026年5月上旬までの情報)を見ると、エネルギー関連では、2025年6月、日立エナジーが約7,000万ドルを投資して、電力用変圧器の生産能力拡大を目的とした新たな工場を設立すると発表した。生産能力の7割拡大のほか、二酸化炭素(CO2)排出量を約95%削減する次世代型低炭素工場として運営される予定だ。7月には商船三井がトルコのカラデニズ・ホールディング(Karadeniz Holding)傘下のキネティクス・テクノロジーズ(Kinetics Technologies)と連携し、発電船を活用した洋上データセンターの共同開発に関する基本合意を締結した。2027年の運用開始を目指しており、エネルギーとデジタルの融合事業として注目されている。2026年2月には、日立エナジーのトルコ法人である日立エナジートルコ(Hitachi Energy Turkey)が国際協力銀行(JBIC)との間で、トルコにおける変圧器製造工場の移転・増設のための1,800万ドルの貸付契約を締結した。

製造業では、ホンダが2025年8月、トルコでの需要拡大を背景に二輪車工場の設立を発表し(2025年8月8日付ビジネス短信参照)、2026年4月に生産を開始した。2025年10月には、日清食品がトルコ市場へ再参入し、即席麺の製造・販売を開始すると発表した。12月には、精密プラスチック部品メーカーのプラセスがイスタンブールに駐在員事務所を開設した。

そのほか、2025年5月にはトルコの航空会社ターキッシュ エアラインズ(Turkish Airlines)が、日本の保険商品「損保ジャパン・AXIS航空ファイナンス保険(SAAFI)および航空未払い保険(ANPI)」を活用したファイナンス取引を実施した。9月には英国に本社を置く三菱重工グループの製鉄プラント大手プライメタルズ・テクノロジーズ(Primetals Technologies)が、トルコの鉄鋼大手カルデミル(Kardemir)から焼結プラント向け最適化システムの導入工事を受注した。同月、沖電気工業も、トルコ国鉄(TCDD)とモノのインターネット(IoT)を活用した防災モニタリング技術の導入に関する覚書を締結した。

2026年に入り、事業再編の動きもある。2月には富士フイルムビジネスイノベーションが、トルコのETGグローバル・インフォメーション・テクノロジーサービス(ETG Global Information Technology Services)を買収し、IT関連事業の強化を図った。3月には電池大手GSユアサがトルコの連結子会社インジGSユアサ(Inci GS Yuasa)の保有持分60%を合弁会社のインジ・ホールディング(İnci Holding)に譲渡する契約を締結し、自社製造から外部委託型のビジネスモデルへ転換する方針を示した。家電分野では4月、日立グローバルライフソリューションズとトルコ大手白物家電メーカーのアルチェリキ(Arcelik)による合弁会社の再編に伴い、家電量販大手ノジマが新会社の株式を取得して子会社化し、アルチェリキは合弁会社の持分を約2億6,100万ドルで売却した。

食品、コンテンツ分野などでもビジネス交流が活発化

今後の両国間ビジネス拡大に向けた取り組みとしては、食品分野で2025年11月、大阪でトルコの食品産業界の訪日ミッション団との商談会が開催された(2025年11月18日付ビジネス短信参照)。2026年2月にはイスタンブールで、ジェトロとトルコ最大規模の日本・アジア料理レストランチェーンのSushiCoとの共催で、日本産水産物をPRするイベントが開催された(2026年3月2日付ビジネス短信参照)。同イベントは日本からトルコへの水産物輸出に際し衛生証明書様式が明確化されたこと(2025年1月22日付ビジネス短信参照)に伴うものだ。

コンテンツ分野では2025年5月、イスタンブールで、日本のドラマのリメイクビジネスに関して、テレビ局を中心に日本から6社が参加し新規リメイク化に向けた商談が行われた(2025年6月9日付ビジネス短信参照)。また、ベイブレード(注3)の世界大会が10月に日本で開催され、オープンクラスではトルコ大会で選出の選手が優勝した(2025年9月1日付ビジネス短信参照2025年10月24日付ビジネス短信参照)。

(注3)
ベーゴマを現代風にアレンジした玩具による対戦型競技。

政治面での動きでは、中谷元(なかたに・げん)防衛相(当時)が2025年8月に日本の防衛相として初めてトルコを訪問した。ヤシャル・ギュレル国防相と会談し、双方は潜在的な協力分野として、両国の防衛装備・技術協力の可能性について意見交換を行い、装備当局間の交流の実現に向けて議論を開始することで一致した。投資関係では11月、東京でジェトロ、トルコ大統領府投資・財務局、国連工業開発機関(UNIDO)の共催による「第2回日本・トルコ投資フォーラム」が開催された(2025年11月14日付ビジネス短信参照)。

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 貿易収支:国際貿易収支ベース(財のみ)
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 5.0 3.5 3.6
1人当たりGDP (米ドル) 13,224 15,463 18,040
消費者物価上昇率 (%) 64.8 44.4 30.9
失業率 (%) 9.4 8.7 8.4
貿易収支 (100万米ドル) △ 106,339 △ 82,232 △ 92,134
経常収支 (100万米ドル) △ 41,821 △ 13,027 △ 30,153
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 92,703 90,859 n.a.
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 432,144 460,194 519,932
為替レート (1米ドルにつき、トルコリラ、期中平均) 23.74 32.81 39.53

〔注〕
貿易収支:国際貿易収支ベース(財のみ)

〔出所〕
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支:トルコ統計機構(TUIK)
経常収支、対外債務残高(グロス):トルコ中央銀行(TCMB)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF