牛肉の輸入規制、輸入手続き
シンガポールの食品関連の規制
1. 食品規格
調査時点:2025年8月
食肉の食品規格は、食品規制(Food Regulations)の第59条~第70条(Meat and Meat products)において規定されています。なお、2025年から段階的に食品安全および食料安全保障法(Food Safety and Security Act:FSSA)に移行していく予定です。
肉(Meat)は、と畜された時点で健康であった動物や鳥の食用部分を指し、生のままか冷凍、冷蔵、塩蔵といった加工方法にかかわらず、通常はヒトの食料として使用されます。
生肉または冷蔵肉(Fresh or Chilled meat)とは、部分的にも冷凍されることがなく、健全な衛生状態に維持された肉を指します。
冷凍肉(Frozen meat)とは、衛生状態と品質を維持するために設計された工程を経て冷凍され、冷凍庫の除霜サイクルあるいは、配送車両から冷凍肉を扱う店の陳列棚へ移動する時間を除いて、マイナス18度以下の温度で衛生的な状態に保たれた肉を指します。なお、いかなる時もマイナス12度を上回ってはなりません。
塩漬け/缶詰肉(Corned, Cured, Pickled or Salted meat)とは、ハムやベーコンなど、加熱処理の有無にかかわらず、塩や砂糖、酢、香辛料を用いて加工された肉のことです。なお、水溶性の無機リン酸が含まれている場合、五酸化二リンは0.3%以下でなければなりません。
くん製肉(Smoked meat)は、加熱処理の有無にかかわらず、衛生的な状態に保たれ、かつ塩による処理が施され、塗料または木材防腐剤を含まない木材から発生した煙の作用を受けた肉、または天然のくん液や抽出物、同一の合成物によって処理された肉のことです。砂糖が含まれる場合もあります。
ひき肉(Minced or Chopped meat)は、生肉か冷蔵肉かにかかわらず、カットやチョップ、ミンチの処理がなされた肉のことを指します。保存料や塩を含むいかなる物質も含んではいけません。また脂肪分が30%を超えてはならず、「赤身(lean)」と表示される場合は、脂肪分は15%以下であることが求められます。
ハンバーガーやビーフバーガー(Hamburgers or beef burgers)については(パンなどを除くパテの部分)、シリアルや調味料、塩、香辛料、ハーブ、砂糖、酢、カゼインナトリウムやその他の食品の有無にかかわらず、最低でも90%以上の肉を含むひき肉でなければならず、また15%以上のたんぱく質を含む一方、脂肪分は30%以下に抑える必要があります。またビーフ以外のひき肉を使用した、ハンバーガーやビーフバーガーに類似した製品については、「〇〇(肉の種類)バーガー」とラベル表示することが求められます。
ソーセージ肉はひき肉を指し、砂糖や塩、香辛料、ハーブ、でんぷん質が含まれている可能性がありますが、でんぷん質は6%以下でなければなりません。また豚ソーセージ肉の場合は肉含有率が65%以上、牛ソーセージ肉の場合は50%以上、またいずれの場合も脂肪分は40%以下と定められています。
ソーセージは、中華風ソーセージを含め、皮やケーシングにより包まれている状態を指します。人体に害を及ぼさない程度の乳酸菌や乳酸を含んでいても問題はなく、調理の有無やくん製、酢漬けといった加工の有無については問われません。
各種肉由来のエキス、肉汁などは、濃縮された状態であるかないかにかかわらず、生肉のたんぱく質を含有する必要があり、塩と無害なハーブ以外はイースト菌などの添加物を含んではいけません。なおグリセリンについては、ラベルに含有率が表示されている場合のみ、認められます。鶏を除くすべての肉エキスは、たんぱく質の含有率が3%を下回ってはなりません。
鶏エキスは肉から抽出され、たんぱく質の含有率が7%以上である必要があります。また「2倍濃縮(double strength)」とうたう場合は、たんぱく質の含有率もそれ相応でなければなりません。また「濃縮(concentrated)」とうたう場合には、たんぱく質含有率が9%以上であることが求められます。
スプレッドを含む、ペースト状の肉やパテは、肉の割合が70%以上、さらにそのうち60%以上が赤身の肉でなければなりません。
2. 残留農薬および動物用医薬品
調査時点:2025年8月
シンガポールでは、国内販売に供される食品全般の残留農薬をはじめ、残留抗生物質、残留エストロゲン、マイコトキシン、3-MCPD(3-モノクロロプロパン-1,2-ジオール)、メラミン、細菌などの偶発混入成分に関する基準を食品規制(Food Regulations)で規定しています。
食品規制第9付表では、食品に残留する農薬の種類が列挙され、農薬ごとに対象となる食品と使用が認められている農薬の最大残留基準(MRL値)が明記されています(ポジティブリスト方式)。この残留農薬基準を満たさない食品の輸入、販売、広告などは禁じられています。本規定で明示されていない農薬については、原則としてコーデックス委員会(国際食品規格委員会:CODEX)の勧告に準じ、同委員会が設定した基準値を超えてはならないと規定されています。
また、2種類以上の農薬が残留している食品については、それぞれの農薬について、実際の残留量を当該農薬の最大残留基準値で割った数値の合計が1を超えてはならないとされています。
残留抗生物質および動物用医薬品については、食品規制(Food Regulations)第32項および33項に記載されているほか、第18付表に動物用医薬品の最大残留限界値が詳細に規定されています。検知可能な抗生物質やその変質した物質が含まれた乳製品、肉・肉製品やいかなる食品も、輸入および販売、広告、製造などを行うことが禁止されています。エストロゲンもほぼ同様の扱いになります。
関連リンク
- 関係省庁
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シンガポール食品庁(SFA)(英語)
- 根拠法等
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食品規制 (Food Regulations)(英語)

第Ⅲ部(General Provisions)第30、32~33項(残留農薬、抗生物質、動物用医薬品 )および第9付表に農薬の最大残留基準、第18付表に動物用医薬品の最大残留値が記載 - その他参考情報
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シンガポール食品庁(SFA)食品および食品製品の輸入要件(英語)
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シンガポール食品庁(SFA)食品中の動物用医薬品の残留(英語)
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シンガポール食品庁(SFA)食品中の汚染物質の規制値(Regulatory Limits for Contaminants in Food)(英語)
3. 重金属および汚染物質
調査時点:2025年8月
牛肉は、重金属規制の対象となります。食品に含まれる重金属の残留基準は、食品規制(Food Regulations)において定められています。牛肉における重金属の最大残留基準値は次のとおりです。
- ヒ素:1 ppm
- 鉛:2 ppm
- 水銀:0.05 ppm
- スズ:250 ppm
- カドミウム:0.2 ppm
- アンチモン:1 ppm
関連リンク
- 関係省庁
-
シンガポール食品庁(SFA)(英語)
- 根拠法等
-
食品規制 (Food Regulations)(英語)

第Ⅲ部(General Provisions)第31項(Heavy metals, arsenic, lead)および第10付表(Maximum Amounts of Arsenic, Lead Permitted in Food)に重金属の最大残留基準値が掲載 - その他参考情報
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シンガポール食品庁(SFA)食品中の重金属(英語)
(347KB)
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シンガポール食品庁(SFA)食品および食品製品の輸入要件(英語)
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シンガポール食品庁(SFA)食品中の汚染物質の規制値(Regulatory Limits for Contaminants in Food)(英語)
4. 食品添加物
調査時点:2025年8月
牛肉は食品添加物規制の対象です。シンガポールでは食品に使用することが認められる食品添加物は、14の機能に分類されており、食品規制(Food Regulations)で規定されている規準に従っている場合、食品への使用が認められます。シンガポール食品庁(SFA)では、その使用が認められている物質をポジティブリスト形式で規定していますが、風味増強剤など一部については、使用が認められていない物質をネガティブリストとして掲げています。食品規制で明示されていない食品添加物については、原則として、コーデックス委員会(CODEX)による国際食品規格に関する勧告に準じるものとされています。認可食品添加物および最大使用基準値は食品規制第3付表~第8付表および第13付表に掲載されています。また、SFAが提供する「食品添加物検索ツール(Food Additives Search)」も随時参照してください。INSナンバー(食品添加物に割り振られた国際的コード)もしくは食品添加物の英語名を入力することで、各添加物についてシンガポールでの規制を調べることができます。
関連リンク
- 関係省庁
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シンガポール食品庁(SFA)(英語)
- 根拠法等
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食品規制 (Food Regulations)(英語)

第Ⅲ部(General Provisions)第15項~第28項(Food additives)、第3~8付表および13付表に食品添加物の最大基準値が掲載 -
シンガポール食品庁(SFA)シンガポール食品規制下で許可されている食品添加物(英語)
(709KB)
- その他参考情報
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シンガポール食品庁(SFA)食品および食品製品の輸入要件(英語)
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シンガポール食品庁(SFA)食品添加物の検索(Food Additives Search)(英語)
5. 食品包装(食品容器の品質または基準)
調査時点:2025年8月
食品に触れる容器包装は食品規制(Food Regulations)に一般規格基準が定められており、その規格基準に適合していなければなりません。個別食品に対する包装容器の規定は特に定められていません。 食品規制では、食品容器包装において、塩化ビニルモノマーの残留限度1 ppm以下を規格とし、塩化ビニルモノマーが0.01ppm以上食品中に溶出する可能性のある容器包装、あるいは発がん性、変異原性、催奇性またはほかの毒性あるいは有害性のある物質であることが知られている化合物が食品中に溶出する可能性のある容器包装の使用を禁じています。塩化ビニルモノマーの残留限度を1 ppm以下とする規定は、2012年9月の食品規制改訂で新たに加えられ、かつ溶出限度は0.05ppmから0.01ppmに引き下げられました。現在もこれらの規制値が適用されています。
また、食品規制では、食品の貯蔵、準備、調理の段階で、鉛、アンチモン、ヒ素、カドミウム、その他の毒性物質で食品を汚染する可能性のある器具、容器、食器の使用を禁じています。
なお、2025年1月に新たな食品安全および食料安全保障法(Food Safety and Security Act,:FSSA)が可決され、1973年の食品販売法(Sale of Food Act)を置き換える予定です(2025年末から2028年にかけて段階的に実施)。新しい食品安全保障法の下でも、食品容器包装の安全基準は継続して適用される予定です。
関連リンク
- 関係省庁
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シンガポール食品庁(SFA)(英語)
- 根拠法等
-
食品規制 (Food Regulations)(英語)

第Ⅲ部(General Provisions)第37項(Containers for food)に容器包装・食器の規格が掲載 -
食品安全および食料安全保障法 (Food Safety and Security Act 2025)(英語)
- その他参考情報
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シンガポール食品庁(SFA)食品安全へのTipsヒント(英語)
6. ラベル表示
調査時点:2025年8月
包装済み食品のラベル
シンガポールでの販売時の表示義務は食品規制(Food Regulations)および改正食品規制〔Food (Amendment) Regulations 2025〕に規定されています。食品規制では、食品全般の一般表示義務項目として、包装済み食品のラベルに次の項目を英語で表示することが求められます。2026年1月30日より1~4の印字の高さが1.5ミリ以下であってはならないという規定はなくなりますが、引き続きはっきりと読める必要があります。食肉など包装されずに顧客の面前で計量販売されるもの、小売店で簡易包装されるものについては、個々の表示義務はありません。
- 商品名または一般分類名
- 成分(2種類以上の成分からなる食品の場合、重量の大きい順に表示)。2026年1月30日より、ブライン(塩水)、シロップ、ブロスの一部として含まれる水、製造過程で蒸発する水、完成品の5%未満の水、脱水成分の復元に使用する水については、成分リストに「水」として記載する必要がなくなりました。
- 合成着色料名(合成着色料タートラジンなどを含有する食品の場合のみ)
- 内容量(正味容量または重量)
- 原産国および輸入者(代理人)名と所在地
- アレルゲン表示〔表示義務特定原材料8分類:グルテンを含む穀類、甲殻類、卵・卵製品、魚類・魚類製品、ピーナツ・大豆類・それらの製品、乳・乳製品(ラクトース含む)、ナッツ類・ナッツ類製品、亜硫酸塩濃度10mg/kg以上の食品〕。2026年1月30日からは、「グルテンフリー(Gluten-Free)」(グルテン含有量20mg/kg以下)、「低グルテン(Reduced Gluten)」(同100mg/kg以下)を表示する場合、それらの基準値を満たす必要があります。
- 人工甘味料アスパルテームを含有する食品の場合の記載(“PHENYLKETONURICS: CONTAINS PHENYLALANINE.”)
期限表示義務のある食品に関しては、食品規制第2付表に記載されています。期限表示は次のいずれかの方法によるとされています。日付印は明白に表示しなければならず、文字サイズは3ミリ以上とされています。なお、食品規制では、消費期限と賞味期限は同義と定義されています。
- 「消費期限日(USED BY 日・月・年)」
- 「販売期限日(SELL BY日・月・年)」
- 「有効期限日(EXPIRY DATE 日・月・年)」
- 「賞味期限日(BEST BEFORE 日・月・年)」
低温保存が要求される食肉・肉製品については、賞味期限の表示が義務付けられています。賞味期限が保存条件に依拠する場合には、その保存条件をラベル上に記載しなければなりません(例:「BEST BEFORE: 31 Dec 25, Store in a cool, dry place」)。なお、生鮮品(raw produce)が包装済み食品として販売される場合は、消費期限ではなく、包装日を記載すればよいことになっています。ここでいう生鮮品とは、生肉、生のひき肉・細切れ肉、生の臓物を指しており、塩漬け肉、酢漬け肉、燻製肉、ハンバーガー用の肉、ソーセージ用の肉といった加工・製造された商品は含みません(食品規制第10項)。
肉・同製品の品目別食品規格および個別ラベル表示要件については、「食品規制」の第Ⅳ部 第59項~第70項(Meat and Meat Products)を参照してください。また、包装済み食品の表示要件の詳細は、関連リンクのSFA「食品ラベルと広告のガイド」を参照してください。
輸入時の梱包容器に対する表示規定
食肉・魚介類法の付属規定である食肉・魚介類(輸出入・積み替え)規則では、輸入される食肉の基本包装単位および梱包容器に次の項目の表示規定が定められています。
- 食肉の分類名
- 原産国
- ブランド名(もしあれば)
- 食肉が処理された事業所名、事業所識別番号および処理日
- 肉製品が由来する牛がと畜された事業所名、事業所識別番号およびと畜日
- 食肉が梱包された事業所名、事業所識別番号および梱包日
- バッチ番号、食肉が缶詰めされる場合の缶詰コード番号
- 各基本包装単位および各梱包容器に含まれる食肉の正味重量
関連リンク
- 関係省庁
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シンガポール食品庁(SFA)(英語)
- 根拠法等
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食品販売法(Sale of Food Act)(英語)
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食品規制 (Food Regulations)(英語)

第Ⅲ部(General Provisions)第5項(General requirements for labelling)および第2付表(Date-marking of prepacked food)に食品全般の一般表示要件、第10項(Date marking)に日付の表示要件、第IV部(Standards and Particular Labelling Requirements For Food)第59項~70項(Meat and Meat Products)に個別ラベル表示要件が掲載 -
シンガポール食品庁(SFA)食品(修正)規制 2025〔Food (Amendment) Regulations 2025〕(英語)
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シンガポール食品庁(SFA)包装食品の表示要件の改正(英語)
(1.5MB)
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食肉・魚介類(輸出入・トランシップメント)規則〔Wholesome Meat and Fish (Import, Export and Transhipment) Rules〕(英語)
- その他参考情報
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シンガポール食品庁(SFA)食品輸入業者および製造業者向けのラベル表示ガイドライン(英語)
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シンガポール食品庁(SFA)食品ラベルと広告のガイド(英語)
(582KB)
-
シンガポール食品庁(SFA)食品および食品製品の輸入要件(英語)
-
農林水産省 証明書や施設認定の申請 シンガポール
7. その他
調査時点:2025年8月
食品安全管理システム(FSMS)
シンガポール食品庁(SFA)は、食品事業者の安全性向上を目的として「食品安全管理システム(Food Safety Management System: FSMS)」を推進しています。この認定を受けたシンガポール国内の大手スーパーマーケットなどは、食品の仕入れ先選定にあたり、HACCP 認証取得企業を優先しています。
なお、2003年7月にAVA(農食品・獣医庁)が導入した「食品安全パートナーシップ制度(Food Safety Partnership Scheme)」は、2019年4月のSFA設立に伴い廃止され、前記の新しい制度体系に統合されています。2025年1月に成立した食品安全および食料安全保障法(Food Safety and Security Act:FSSA)により、食品関連の規制が一本化され、より効率的で現代的な食品安全管理体制が確立されています。




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