日本からの輸出に関する制度健康食品の輸入規制、輸入手続き

品目の定義

調査時点:2023年9月

本ページで定義する健康食品のHSコード

フィリピンには健康食品の正式な定義がなく、それに特化したHSコードは存在しません。健康食品は、フィリピン共和国法第9711号に基づき、その使用する目的に沿って「栄養補助食品」と「健康製品」に分けられます。本ページでは、このうち「栄養補助食品」について記述します。

原則として、加工食品の中でも食事を補助する意味合いを有する製品で、次に該当するものを含む、通常はカプセル、錠剤、液体、ゲル、粉末、丸薬の形態をしているものは「栄養補助食品(Food/Dietary Supplement)」と定義されます。

  1. ビタミン
  2. ミネラル
  3. ハーブ(Herb)
  4. その他植物物質、アミノ酸、栄養物質など

このうち、次の要件を満たすもの

  • フィリピン政府が摂取を推奨する栄養成分を含む製品
  • 国際的に取り決められた一日に最低限摂取すべき成分を含む製品

一方、次に該当するものは「健康製品(Health Product)」と定義されます。

  • 食品や薬、化粧品、装置(Devices)、生物錠剤、ワクチン、対外診断用医薬品(in-vitro diagnostic reagents)および家庭や都会に害を及ぼしうる物質(household/urban hazard substances)
  • 食品医薬品管理局(Food and Drug Administration)による規制を必要とする健康に影響を与えうる製品

また、本ページで定義する栄養補助食品には次のHSコードを含みます(薬としての漢方薬やビタミン剤などは除く)。

  • 2106.90.69~2106.90.72 : その他補助食品
  • 2936:(自然もしくは人工的に複製されたものかを問わず)プロビタミン、ビタミンおよびそれらの派生品

フィリピンの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2023年9月

日本からフィリピンへの栄養補助食品の輸出は可能です。

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2023年9月

日本から栄養補助食品を輸出する場合にフィリピン政府に対して輸出者側で行う手続きは特別ありません。
一方、輸入者はフィリピン食品医薬品管理局(FDA)から(1)営業許可(License to Operate: LTO)と(2)製品登録証明(Certificate of Product Registration: CPR)を取得する必要があります。また、その他補助食品(HSコード:2106.90.69~2106.90.72)の輸入に際しては、砂糖規制庁(SRA)から(3)砂糖規制庁許可書(Premix Commodity Release Clearance: PCRC)を取得する必要があります。
輸入者が(2)製品登録証明の申請手続きを行うにあたり、次の書類の提出が求められており、輸出者側での取得支援が必要になります。また、輸入者は輸入商品のラベルや写真などもフィリピン食品医薬品管理局(FDA)に対して提出する必要があり、これらの作成・取得についても輸出者は輸入者を支援する必要があります。

  1. 次の書類のうちいずれか一点を提出
    • 適正製造規範(Good Manufacturing Practice: GMP)の規定を順守していることの証明書
    • 植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate)または衛生証明書(Health Certificate)
    • 国際標準規格ISO 22000の要求事項を順守していることの証明書
    • 原産国で発行されたHACCP適合証明書
    • 原産国の管轄規制官庁が発行した、または商工会議所など公認の組織が発行し輸出国のフィリピン領事館が公証した自由販売証明 (Certificate of Free Sales)
  2. 分析証明書(Certificate of Analysis)
    食品分類ごとに求められる分析証明書を提出します。
    なお、試験場所について特に規定はなく、日本でもフィリピンでも可能です。また、日本で行う試験について具体的な試験項目などは規定されていません。
  3. 食品のラベルや広告において栄養や健康面の効果などに関する訴求(Claim)をする場合、当該内容を裏付ける書類(関連する研究や報告書など)
  4. 砂糖規制庁許可書(PCRC)を申請するための書類
    • 船荷証券
    • 商業送り状
    • パッキングリスト

また、輸入通関にあたり、フィリピン政府が日本からの輸出者に対して提出を求める書類は特別ありませんが、輸入手続きの「2.輸入通関手続き(通関に必要な書類)」に記載する輸入者が提出する書類の作成を適宜支援する必要があります。

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2023年9月

日本から栄養補助食品を輸出する場合、動物/植物検疫の証明は求められていません。

フィリピンでの食品関連の規制

1. 食品規格

調査時点:2023年9月

一部の栄養補助食品に対する食品規格は次のとおり定められています。また、フィリピンにおいて規格が定められていない製品については、コーデックス委員会(CODEX)が定める規格値が参考情報として参照されます。

薬草製品(Herbal Food Products)の食品規格
製品 基準項目
栄養補助製品
(すぐ飲めるタイプのもの)
安息香酸ナトリウム 最大0.1%
着色 適正製造規範(GMP)基準に沿ったもの(サプライヤーから分析証明書‘CoA’が必要)
残留農薬 FAO/WHO及びコーデックス委員会によって取り決められた基準に準拠
乾燥植物を用いた製品(大人用) アフラトキシン 20 ppb
アフラトキシン B1 10 ppb
(ELISAまたは Liq Chromテストによって計測)
重金属 鉛 10 ppm (最大)
カドミウム 0.3 ppm (最大)
ヒ素 0.3 ppm (最大)
水銀 0.5 ppm (最大)
加工用に収穫された未加工の植物性製品 大腸菌 陰性(Negative)
カビ(Mould)
散布体(Propagules)
105 cfu/g (最大)
ブドウ球菌 陰性(Negative)
前処理が行われる植物性製品
(ハーブティーを作る場合のハーブ等)
好気性細菌 107 cfu/g もしくはmL (最大値)
酵母菌及び
糸状菌
104 cfu/g もしくはmL (最大値)
大腸菌 陰性(Negative)
サルモネラ spp./ 25g(25g中の値を算出) 陰性(Negative)
黄色ブドウ糖菌 陰性(Negative)
その他腸内細菌叢 104 (最大値)cfu/g
モリンガパウダー(Malunggay(Moringa) Powder)の食品規格
根拠法 PNS/BAFPS 109:2012 ICS 67.080.10
基準 含水量 8%(最大)
製品の粒度(メッシュで測定) 粗悪(Coarse):0.25mmより大きい
普通(Fine):0.25~0.048mm
良い(Very fine):0.048mmより小さい
好気性細菌 104 cfu/g もしくはmL (最大値)
酵母菌及び糸状菌 103 cfu/g もしくはmL (最大値)
大腸菌 陰性(Negative)
サルモネラ spp./25g
(25g中の値を算出)
陰性(Negative)
黄色ブドウ球菌 陰性(Negative)
その他腸内細菌叢 102 (最大値)cfu/g

2. 残留農薬および動物用医薬品

調査時点:2023年9月

栄養補助食品について残留農薬を定めた規制はなく2013年食品安全法(Republic Act No.10611)に基づきコーデックス委員会(CODEX)が定めるガイドラインを実務上参照しています。一方、食品規格が存在する一部栄養補助食品については、同規格において残留農薬などの基準が定められている場合があります。食品規格がない栄養補助食品については、フィリピン政府において残留農薬を定めた規制はありません。
フィリピン食品医薬品管理局(FDA)では「製品登録証明(CPR)」の申請手続きにおいて、原産国が発行する自由販売証明(CFS)などの提出を義務付けており、これによって該当輸入食品には残留農薬などの問題がないという証明がなされているとみなし、特にフィリピン側で厳しい残留農薬規制を課す必要はないと考えています。
フィリピンには1992年制定の消費者保護法(共和国法第7394号)があり、「人体にとって危険な物質」が発覚した場合には、保健省(DOH)などが中心となって危険物や同物質を含む食品の販売を即時禁止とし、製造業者や輸入業者を取り締まることになっています。

3. 重金属および汚染物質

調査時点:2023年9月

フィリピンでは、重金属および汚染物質に関する規制制度はなく、食品医薬品管理局(FDA) は、2013年食品安全法(Republic Act No.10611)に基づきコーデックス委員会(CODEX)が定めるガイドラインを実務上参照しています。なお、具体的な食品における重金属および汚染物質の規格値については、食品規格(Philippine National Standards)によって定められている場合があります。

4. 食品添加物

調査時点:2023年9月

栄養補助食品はFDA通達第2006-016号に基づき食品添加物規制の対象となります。フィリピンではコーデックス委員会(CODEX)の「食品添加物に関する一般規則」(CODEX STAN 192-1995)における基準を採用しており、食品添加物ごと、食品カテゴリーごとに使用可能な基準量を示しています。具体的な添加物の使用および最大基準値については、関連リンクの「食品添加物に関する一般規則GSFA」を参照してください。なお、具体的な食品における添加物の許容値については、フィリピンにおける食品規格(Philippine National Standards)が存在する場合には同規格において定められている場合があります。

5. 食品包装(食品容器の品質または基準)

調査時点:2023年9月

2023年9月現在、食品容器に関する規定はありません。フィリピン食品医薬品管理局(FDA)によると、明文化はされていないものの、輸入元が日本である場合、日本の基準に従っているものであれば問題ないとのことです。

6. ラベル表示

調査時点:2023年9月

栄養補助食品のラベル表示については、共和国法第3720号(Republic Act No.3720 : Food, Drug and Cosmetics Act)、FDA行政命令第88-B(Administrative Order 88-B)、およびその改訂版にあたるFDA行政命令第2014-0030(Administrative Order No.2014-0030)などによって規定されています。これらの規制で表示が義務付けられている情報は次のとおりです。また、栄養分および健康強調表示(Health Claim)については、フィリピン食品医薬品管理局(FDA)通達第2007-02号に基づき、関連リンクのコーデックス委員会(CODEX)「栄養分および健康強調表示に関する一般規則」に準拠しています。表示言語は英語、タガログ語またはその両方での表記が義務付けられています。言語のフォントについての規定はありませんが、通常の購入や使用の際に消費者がはっきりと読み取れるように印字する必要があります。
なお、薬としての漢方薬やビタミン剤などにおけるラベル表示は食品医薬品管理局行政命令第2016-008が適用され、次のラベル表示義務とは異なる場合があります。

  1. 商品名
  2. ブランド名、トレードマーク(ある場合のみ)
  3. 原料成分(含有量の多い順)
  4. 容量(メートル法でネット表示)および固形量
    容量の許容誤差については、食品医薬品管理局通達第6-A s.1998(Bureau Circular No.6-A s.1998)を参照してください。
  5. 輸入者の会社名、住所および原産地
    外国ブランド製品もしくは外国企業の許認可に基づき製造された製品については、当該製品を製造する外国企業の名称および住所はローカル企業のそれらより小さな文字で記載する必要があります(ローカル企業名が記載される場合)。
  6. ロット識別番号
  7. 保存方法
  8. 消費期限
    消費期限は「日」、「月」、「年」の順序で記載し、「日」と「年」は数字、「月」は混乱を避けるため単語で表記することが求められています(例:Expiry date: 01 January 2012 または 01 Jan 12)。
  9. アレルギー表示(該当する場合)
    該当する場合に記載が必須のアレルゲンは次のとおりです。対象のアレルゲンについてはFDAの判断により適宜追加される可能性があり最新の情報を確認してください。
    • グルテンを含む穀物(小麦、ライ麦、大麦、オート麦、スペルト小麦、当該穀物混成品およびこれらを含む製品)
    • 甲殻類および当該製品
    • 卵および当該製品
    • 魚および当該製品
    • ピーナツ、大豆および当該製品
    • 牛乳および当該製品(ラクトースを含む)
    • 木の実および当該製品
    • 濃度10mg/kg以上の亜流酸塩
  10. 当該商品の正しい使い方(食べ方)
  11. 栄養成分表示(表形式で)
  12. 添加物に関する表示
  13. No Approved Threptic Claim (治療効果について試験を行い承認を受けたものではない)の記載

なお、一部の栄養補助食品における栄養成分表示については、FDA行政命令第2014-0030(Administration Order No.2014-0030)に基づき免除されています(グルテンフリー食品やグルテンの量が20∼100mg/kg以下の食品)。詳細はFDA行政命令第2014-0030およびコーデックス委員会グルテン不耐症者のための特別用途食品向け基準を参照してください。

また、GMO(遺伝子組換え)に関するラベル表示義務はなく、また国単位で規制する法律などは2023年9月現在存在しません。国家での取り組みとして、遺伝子組換え食品(GMO Foods)に対しさまざまな政府機関が共同・協力して監視するという規則が2016年に策定されています。

7. その他

調査時点:2023年9月

フィリピンで販売する栄養補助食品は、2013年食品安全法(共和国法第10611号)で定められた衛生基準に合致しなければなりません。また、次のすべての要件を満たす場合はフィリピン食品医薬品管理局(FDA)からの証明書なしでフィリピンに持ち込むことができます。

  1. 個人使用の目的で持ち込む場合
  2. 次に該当する場合
    1. 店頭販売型の薬 50g以下
    2. 処方箋薬
      処方箋薬については次の要件を満たす必要があります。
      • 持ち込む量が処方箋に明記された量と同じであること
      • 処方した医者の専門職規制委員会(PRC)発行のID番号が処方箋に記載されていること
      • 処方箋が外国で発行された場合には前述と同様の内容が記載されていること
    3. ビタミン剤、サプリメント、その他健康サプリメント 合計500g以下
  3. 次のいずれかの方法で持ち込まれたとき
    • 乗客の荷物として持ち込む場合
    • バリクバヤンボックス(Balikbayan boxes)で輸送する場合
    • 郵便や宅配便サービスを通して輸送する場合

その他

調査時点:2023年9月

ハラール認証についてはフィリピンでは義務ではないものの、認証を受ける場合にはムスリム・フィリピン国家委員会(The National Commission on Muslim Filipinos:NCMF)公認の団体で認証を受けることができます。