ビジネス関連法 ハイテク企業認定管理作業手引

【法令名称】
ハイテク企業認定管理作業手引
【発布機関】
科学技術部、財政部、国家税務総局
【発布番号】
国科発火〔2008〕362号
【発布日】
2008年07月08日
【施行日】
2008年07月08日

主旨と目的

ハイテク企業認定管理作業における各関係機関の職責を明確にし、企業の研究開発活動及び費用の集計基準を確定し、各指標の内容及びその算定方法を明瞭にし、認定管理作業が規範的、効率的に行なわれることを確保すること(序文)。

内容のまとめ

本手引は、「ハイテク企業認定管理弁法」(以下、「管理弁法」という)に基づき、ハイテク企業認定作業の管理・実施機構、専門的・独立的な意見を提供する第三者としての仲介機構と専門家の要件及び職責を定めた上、企業の申請と認定機構の認定作業のプロセス、認定作業における重要な評価指標となる研究開発費の集計、及びその他指標について、具体化した。主な内容として次のものが含まれる。

指導チームと認定機構(一)
  • 中央政府に指導チーム及びその事務局を置く。(マクロ的な管理、調整)
  • 各地方には、認定機構及びその事務局を置く。(実際の認定権)
  • 上記の管理、認定機構は、科学技行政、財政、税務部門より、共同で構成される。
*詳細は「 管理弁法 」をご参考ください
申請、認定プロセス(二) 認定(新規)
  1. 企業自己評価
  2. ウェブサイトに登録
  3. 必要書類の提出
    認定機構に下記の必要書類を提出する。
    • ハイテク企業認定申請書
    • 営業許可証副本・税務登記証(コピー)
    • 直近3会計年度の研究開発費・直近1会計年度のハイテク製品(サービス)の収入に関する特別監査報告書(資格のある仲介機構の検証を経たもの)
    • 資格のある仲介機構の検証を経た企業の直近三会計年度の財務諸表
    • 技術イノベーション活動の証明資料(知的財産権証書・独占許可契約書・生産許可書類、新製品又は新技術証明(新規性の調査)資料・製品品質検査報告書、省級(計画単列市を含む)以上の科学技術計画に関するプロジェクトの承認証明書、及び他の関係証明資料)
    審査と認定
    • 認定機構が5名の専門家を選出し、ネット作業システムを通じて専門家に企業の申請資料(匿名)を送付し、評価意見を求める。
    • 認定機構が仲介機構の監査報告書と専門家の評価意見に基づき、ハイテク企業を確定する。
  4. 公示と証書の発行
    確定されたハイテク企業はネットで15営業日の公示を経て、公示に対する異議が出されない場合、「ハイテク企業証書」が発行される。
再審査
  • ハイテク企業資格の期限が満了する前の三ヶ月以内に、再審査申請を提出しなかった場合、期限が満了した時に自動的に失効とする。
  • 再審査された「ハイテク企業証書」も三年間有効であり、但し、さらに期限が満了した後、企業が再び認定申請を提出する場合、新規申請として取り扱う。
仲介機構と専門家(三) 仲介機構
  1. 仲介機構の条件
    • 独立開業資格を有し、設立してから3年間以上、直近3年間以内に不良記録がないこと
    • その年の認定作業を担当する公認会計士数は、183日以上の労働契約を締結している従業員の年間延べ人数を12で割った数(但し、20人以上とすること)に占める割合が20%を下回ってはならないこと
    • ハイテク企業の認定作業に関する政策に熟知していること
    仲介機構の職責
    企業の研究開発費とハイテク製品(サービス)収入に対して特別監査報告書を提出する。
専門家
  1. 専門家の条件
    中国公民、中国大陸に居住と就職、道徳倫理、技術高級職の称号を有すること、関係分野の専門知識・実務経験・市場状況及び産業政策に詳しいこと等
  2. 専門家バンク及び専門家の選出方法
    認定機構が専門家バンクを整備、管理する。認定作業にあたり、認定機構が無作為に関係分野の専門家を選出する。
  3. 専門家の職責
    • 独立に審査、評価を行い、認定機構に個人の評価意見を提供する。
    • 専門家チームの総合意見を認定機構に提供する。
研究開発活動の確認及び研究開発費の集計(四) 研究開発活動の確認
  1. 研究開発活動の定義
    科学と技術(人文、社会科学を含まない)新知識を習得し、創造的に科学技術新知識を活用し、又は技術、製品(サービス)を実質的に改善するために持続的に行われ、明確な目標がある活動。但し、企業の一般的な技術向上、又は、ある科学研究成果の直接的な応用等の活動は含まない。
  2. 判断の根拠と方法
    • 業界基準判断法
    • 専門家判断法
    • 目標又は結果判定法(補助的基準)
  3. ハイテクサービス業の企業開発活動
    判断基準は上記と同じ。
  4. 研究開発プロジェクトの確定
    • 研究開発プロジェクト:重複的でなく、独立した時間、財政上の割当と人員の配置を有する研究開発活動
    • 企業の研究開発費:各研究開発プロジェクトを基本単位とし、これに対してそれぞれ算定を行った上、合算されたもの
研究開発活動費の集計
集計範囲:直接研究開発活動費用と一部の間接研究開発活動費用
  1. 企業研究開発費の算定
    プロジェクト別と科目別に集計する(様式表あり)。
  2. 各科目の集計範囲
    • 賃金
    • 直接投資
    • 減価償却費と長期償却費
    • 設計費
    • 設備試験調整費
    • 無形資産償却費
    • 外部委託研究開発費
    • その他の費用
その他重要指標(五) 核心的な自主知的財産権
  1. 範囲
    発明、実用新案、及び製品の図案と形状を簡単に変更しただけではない意匠権(主に科学と工程技術の方法を利用し、研究と開発のプロセスを経て得た意匠)、ソフトウェア著作財産権、集積回路配置利用権、新種の植物。(「認定弁法」の定めにより)
  2. 要件
    中国国内で登録され、又は五年以上全世界的な独占的使用権(ハイテク企業の有効期限は五年以上の独占的使用権期間以内にあるものとする)を有し、且つ中国の法律の有効保護期間内にあるものとする。
企業科学技術者と研究開発者
  1. 企業科学技術者
    企業で研究開発活動とその他技術活動に従事し、累計実勤務期間が183日間以上の者
  2. 企業研究開発者
    研究者、技術者と補助者の三種類の者を含む企業と労働契約を締結した全日勤務者。兼職者又は臨時雇用者の場合、企業での勤務時間が年間累計183日間以上。
ハイテク製品(サービス)収入
技術譲渡収入、技術下請収入、技術サービス収入、科学研究の受託収入等を含み、イノベーション、研究開発活動を通じて、得た「重点分野」の要求に符合する製品(サービス)収入と技術的な収入の合計額
四項指標の具体的な評価方法(六)
  • 知的財産権、科学技術成果の転化能力、研究開発の管理水準、成長性等の四項目の指標について、加重得点の方法を採用し、70点以上(70点を含まない)に達しなければならない。
  • 核心的な自主知的財産権を有しない場合、ハイテク企業と認定することはできない。
  • 各指標の得点はそれぞれの加重率及び計算式に基づき、計算することができる。

日系企業への影響

中国では、外資導入の産業構造を調整するため、地域別の税収優遇政策から産業別に転換した。本手引はこの点を背景として、新『企業所得税法』及びその実施細則、『ハイテク企業認定管理弁法』の関係規定として制定され、ハイテク企業の管理、認定機構及び認定プロセス、関連基準を細分化することを目的とする。
「管理弁法」、「重点分野」に基づき、「作業手引」で認定されるハイテク企業定義に従えば、「企業所得税法」第二十八条における「国が重点的に支援するハイテク分野」となる。新税法によれば、国が支援するハイテク企業は15%の優遇税率の享受ができるという。
「手続作業手引」は、中国政府の科学技術型企業の技術創造、技術開発、製品向上へ導く支援方針を反映している。中国政府に支援されるハイテク企業は税収優遇政策の享受、納税負担額最大限度の節約、科学研究活動の投入規模、企業創造への促進などにおいて有利になるであろう。本手引が日系企業に与えると思われる影響は以下のとおり。

  • 日系大企業は科学研究への投資を拡大することで市場をリードする優位性と税制優遇政策を確保することができるであろう。一方、小企業は、ハイテク企業の認定を受けるためには、研究開発活動費用や人材の確保、ハイテク製品(サービス)収入等の主要項目において基準を上回る必要があるので注意が必要である。
  • ハイテク企業を認定する前提として、核心的な自主知的財産権又は独占的な使用権を保有するか否かということがある。日系企業の多くは、日本の本社から非独占的な使用権等を譲渡されることに慣れているため、ハイテク企業認定の取得が難しくなる可能性がある。
  • 企業はハイテクへの投資を拡大すると同時に、優秀なハイテク人材を引き付けるような措置を講じる必要がある。
  • ハイテク企業認定に関する明確な基準とプロセスが規定されたこと、特に独立した第三者仲介機構、専門家の介入が規定されたことで、同認定の公平性、透明性が強化されるなど、広報活動等が得意でない日系企業にとっては、有利となる一面も備える。