モザンビークの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年の実質GDP成長率は2020年以来のマイナス成長。
  • 資源採掘産業からの需要増加でサービス貿易収支の赤字が拡大。
  • 対内直接投資は例年同様に天然ガス、石炭などの採掘業向けが大半。
  • 大規模天然ガス開発プロジェクトが4年半ぶりに再開。
  • 日本の天然ガス、石炭輸入が急増。

公開日:2026年9月30日

マクロ経済

政情不安の影響で2025年の経済はマイナス成長も回復基調

モザンビークの2025年の実質GDP成長率はマイナス0.5%と、新型コロナ禍に見舞われた2020年(マイナス1.2%)以来のマイナス成長を記録した。2024年10月に実施された大統領・国会議員選挙後に国内各所で発生した、与党に対する選挙不正疑惑などへの抗議活動が経済活動にダメージを与え、マイナス成長の主因となった(2025年3月17日付ビジネス短信参照)。2025年1月に発足したダニエル・チャポ政権は、選挙後の政情不安のキーパーソンである元大統領候補者との対話(2025年3月28日付ビジネス短信参照)などを通して情勢の安定を図り、事態は沈静化に向かった。これに伴い、通年ではマイナス成長となったものの、年間を通じて経済は回復傾向を示した。四半期ごとの成長率を見ると、2025年の第1~第3四半期は対前年同期比でマイナス成長(それぞれマイナス3.9%、マイナス0.1%、マイナス0.1%)だったものの、第4四半期には4.7%とプラスに転じた。

他方で、政府の財政赤字による歳出削減が影響し、経済回復は緩やかなものとなった。2020年以降、政府の公的債務は対GDP比100%前後で推移している(2026年3月3日付ビジネス短信参照)。これに加え、経済のマイナス成長で税収が減少し、政府は公共投資や行政運営費の削減に踏み切らざるを得ず、サービス業など内需向け産業の回復が遅れる要因となった。

インフレ率と対ドル為替レートは2025年通年で安定的に推移した。モザンビーク統計局が公表する各月のインフレ率(前年同月比)を見ると、最高が4.9%(9月)、最低が3.2%(12月)の幅で変動した。為替レートは年間を通して1ドル=63.9メティカル台で推移した。モザンビーク政府は、2026年の実質GDP成長率を2.8%、インフレ率を3.7%、為替レートも2025年と同様に1ドル=63.9メティカルと予測している。

貿易

石炭価格の低下や干ばつによる水力発電量減少で貿易赤字が拡大

2025年の財輸出は前年比5.1%減の77億9,400万ドル、財輸入は2.6%増の85億9,100万ドルだった。この結果、財貿易の赤字は 4.9倍の7億9,700万ドルに拡大した。

主要輸出品目のうち、石炭(構成比21.4%)と電力(5.6%)の輸出額が前年比でそれぞれ16.9%、36.7%減少した。石炭は国際価格の低下〔オーストラリア産で約20%、南アフリカ共和国(以下、南ア)産で約10%〕に加え、採掘設備の故障と輸送鉄道網で発生した事故による生産・物流上の障害で輸出額が減少した。電力輸出額の減少は、干ばつによりザンベジ川流域に立地する国内最大の水力発電所カホラ・バッサの貯水量が低下し、発電量が減少したことが主因である。。

一方、輸出額3位のアルミニウム製品は、モザンビーク最大の製造業者であるモザール(Mozal)の精錬所の設備故障が復旧し、生産能力が回復したことで、前年比20.0%増の15億4,400万ドル(構成比19.8%)となった。モザールが製造するアルミニウムは長きにわたりモザンビークの主要輸出品目となっていたが、同社は2025年12月に2026年3月以降の操業停止を発表した(2025年12月24日付ビジネス短信参照)。操業停止はアルミニウム製造に必要な南アからの電力供給契約の終了に伴うもので、2026年以降の貿易では、アルミニウム輸出のほか、電力輸入(2025年の輸入額2億3,700万ドル、構成比2.8%)やアルミニウム原料輸入(4,740万ドル、0.6%)などに影響が及ぶとみられる。

採掘産業のサービス需要増でサービス収支赤字は拡大

2025年のサービス貿易赤字は12億2,700万ドルで、赤字額は2024年の9億6,600万ドルから27.1%拡大した。石油、天然ガスなどの大規模採掘プロジェクトの実施に伴いサービス需要が拡大し、エンジニアリングなどの技術サービス収支赤字は前年比26.3%増の8億300万ドル、研究・開発サービス収支赤字は96.9%増の1億8,200万ドルとなった。

表1-1 モザンビークの主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:百万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
天然ガス 1,967 1,967 25.2 0.0
石炭 2,006 1,668 21.4 △ 16.9
アルミニウム製品 1,287 1,544 19.8 20.0
農業生産物 573 634 8.1 10.7
タバコ 217 258 3.3 18.9
野菜 167 245 3.1 46.8
カシューナッツ(未加工) 98 66 0.8 △ 32.8
電力 689 436 5.6 △ 36.7
重砂 468 392 5.0 △ 16.2
合計(その他含む) 8,211 7,794 100.0 △ 5.1

〔出所〕モザンビーク中央銀行

表1-2 モザンビークの主要品目別輸入(FOB)〔通関ベース〕(単位:百万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
機械 1,392 1,336 15.6 △ 4.0
燃料 1,198 1,142 13.3 △ 4.6
ディーゼル 799 772 9.0 △ 3.5
ガソリン 339 327 3.8 △ 3.7
建築資材(セメントを除く) 631 578 6.7 △ 8.4
食用油 220 412 4.8 87.2
コメ 441 359 4.2 △ 18.6
自動車 387 357 4.2 △ 7.8
小麦 212 273 3.2 28.8
合計(その他含む) 8,375 8,591 100.0 2.6

〔出所〕モザンビーク中央銀行

対内直接投資

天然ガスプロジェクトに大きな進展

2025年の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は、前年比60.2%増の56億9,300万ドルだった。セクター別では総投資額の91.5%にあたる52億1,140万ドルが天然ガス、石炭などの採掘業に集中している。総投資額の88.7%にあたる50億4,870万ドルが「その他の資本」に該当し、そのうち48億6,990万ドルは天然ガス開発などのメガプロジェクトによって実施された。この傾向は、主として外資が主導する採掘業で、企業・企業グループが商業信用の発行や資金注入などを活発に行っていることを示す。特に、天然ガスプロジェクトでは2025年後半から2026年初頭にかけて大きな進展がみられた。イタリアのエネルギー大手エニ(Eni)が主導する、コーラル・ノース天然ガスプロジェクトは2025年10月に最終投資決定を発表した(2025年10月8日付ビジネス短信参照)。同じく、フランスのエネルギー大手トタルエナジーズ(TotalEnergies)が主導し、三井物産も参画するエリア1天然ガスプロジェクトのコンソーシアムは11月、治安情勢悪化のために2021年以来続いていた「不可抗力」を解除し、4年半ぶりにプロジェクトを再開させることを決定した(2025年12月8日付ビジネス短信参照)。コーラル・ノースは2028年に、エリア1は2029年に天然ガスの生産・輸出を開始する予定だ(2026年2月3日付ビジネス短信参照)。

国別投資額では、オランダが37.2%で1位となった。2位以下はイタリア(22.0%)、モーリシャス(20.0%)、南ア(15.1%)、中国(1.4%)と続いた。鉱業以外では、製造業(オランダ、南ア)、金融(オランダ)、不動産(イタリア)、卸・小売り(モーリシャス)などの分野で投資があった。

対日関係

モザンビーク産天然ガス、石炭の輸入が増加

2025年の日本の対モザンビーク輸出は前年比12.6%減の1億773万ドルとなった。構成比57.1%で最大の輸出品目である自動車などの輸送用機器が10.2%増の6,150万ドルと伸長した。他方、原料品(12.2%、25.6%減)、電気機器(7.1%、68.5%減)、原料別製品(5.2%、62.1%減)などの主要品目が減少したことを受け、輸出額は前年を下回った。

一方、輸入は前年比2.4倍の2億3,933万ドルと大きく伸びた。これは液化天然ガスと石炭の輸入額増加によるもので、液化天然ガスは 3.8倍の1億2,853万ドル(構成比53.7%)、石炭は 4.5倍の6,819万ドルとなった。

モザンビーク政府は、大阪・関西万博委員会(COGEMO)が中心となり、万博で日本の民間セクターとのビジネス交流を精力的に実施した。2025年6月のナショナルデーに合わせ、マリア・ベンビンダ・デルフィナ・レビ首相らが来日し、ビジネスフォーラムを開催(2025年6月18日付ビジネス短信参照)したほか、その後も各州の代表団が訪日し、企業訪問などを実施した。

表2-1 日本の対モザンビーク主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:千ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
輸送用機器 55,810 61,502 57.1 10.2
自動車 55,069 57,746 53.6 4.9
乗用車 32,696 35,606 33.1 8.9
バス・トラック 22,373 22,140 20.6 △ 1.0
原料品 17,625 13,117 12.2 △ 25.6
一般機械 1,280 9,574 8.9 648.0
荷役機械 123 7,986 7.4 6,392.7
電気機器 24,083 7,598 7.1 △ 68.5
原料別製品 14,910 5,647 5.2 △ 62.1
化学製品 2,956 4,890 4.5 65.4
合計(その他含む) 123,251 107,730 100.0 △ 12.6

〔出所〕 財務省貿易統計

表2-2 日本の対モザンビーク主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:千ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物性燃料 49,302 196,713 82.2 299.0
液化天然ガス 34,057 128,526 53.7 277.4
石炭 15,245 68,188 28.5 347.3
原料品 41,092 32,307 13.5 △ 21.4
非鉄金属鉱 11,781 11,584 4.8 △ 1.7
原料別製品 8,212 6,384 2.7 △ 22.3
非金属鉱物製品 6,255 5,480 2.3 △ 12.4
食料品 2,206 3,881 1.6 75.9
魚介類 1,700 1,321 0.6 △ 22.3
合計(その他含む) 100,903 239,327 100.0 137.2

〔出所〕 財務省貿易統計

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 5.5 2.1 △ 0.5
1人当たりGDP (米ドル) 617 653 623
消費者物価上昇率 (%) 7.0 3.2 4.4
失業率 (%) 6.7 6.7 6.6
貿易収支 (100万米ドル) △ 903 △ 164 △ 797
経常収支 (100万米ドル) △ 2,207 △ 2,493 △ 3,181
外貨準備高(ネット) (100万米ドル) 3,422 3,740 4,123
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 10,292 10,448 9,721
為替レート (1米ドルにつき、モザンビーク・メティカル、期中平均) 63.89 63.91 63.91

〔注〕
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)

〔出所〕
実質GDP成長率、1人当たりGDP、消費者物価上昇率:IMF
失業率:世界銀行
貿易収支、経常収支、外貨準備高、対外債務残高、為替レート:モザンビーク中央銀行