サクセスストーリー

日本の物流を加速させるEXOTECのSkypodシステム

物流分野のオートメーション化を実現する高度なロボットシステム「Skypod」という革新的なソリューションを携え日本市場に参入したフランスのスタートアップ企業、EXOTEC。創業以来、ビジネスの規模は毎年ほぼ倍増しており、評価額は10億ドルを超えた。フランスにおける工業界初のユニコーン企業となるまでに成長した背景には、日本でのパートナーシップの存在がある。ユニクロとのパートナーシップ締結を足掛かりに日本に進出したEXOTECは、消費者や顧客の要求だけでなく業界の技術水準も非常に高い日本市場に適応し、ロジスティクスの自動化を検討する企業から注目を集めている。

EXOTEC NIHON代表取締役の立脇竜氏に、日本拠点をグループ最大の海外拠点にまで成長させた経緯や、海外の企業が日本の物流市場に進出する意義について聞いた。

設立年月
2020/01
進出先
東京都

  • ICT
  • フランス

掲載年月 : 2023/04

ロボティクスは日本の労働力不足の解決策になりうるか

ここ数十年、労働人口が減少し続けていることは日本の代表的な課題である。この課題は、新型コロナウイルスのパンデミックによってさらに悪化し、数多くの職場で、混雑を抑えるために労働者の削減や人員整理を余儀なくされた。こうした状況に対応するために、より少ない人員でより多くの仕事をこなし、反復作業の多い仕事や危険な仕事は機械に任せられるよう、多くの企業でオートメーション化(自動化)の需要が高まっている。このニーズに応えるため、世界中の多くのテック系企業が、人間と同じ作業を効率的かつ経済的に実行可能なロボットシステムの開発に取り組んできた。日本政府も、海外からの直接投資や、日本企業と海外のイノベーターとの協力関係を促進し、このような取り組みを積極的に支援している。

舞台裏のシステム効率化が、真の事業推進をもたらす

物流は、オートメーション化、通信技術、デジタル化(DX)の進化の恩恵を最も受けている分野の一つである。製造業や小売業は、特に注文処理や倉庫管理において、ミスなく、できるだけ早く処理するシステムを導入しており、商品の入荷、倉庫での在庫管理、注文、出荷までを常に正確に記録するうえで、そうしたシステムに頼っている。

物流は高い専門性が要求される分野であり、多くの企業がカスタマイズされたシステム開発を外部に依頼する。日本にはすでにこの分野で多数のリーディングカンパニーが存在するが、フランス発のスタートアップ企業EXOTECは、独自の洗練された次世代の倉庫ロボティクス「Skypodシステム」を用いた革新的な物流ソリューションを武器に、日本市場へ参入した。同社が従来のロボティクス・イノベーターと一線を画しているのは、クライアントに提供する完成度が非常に高いという点だ。「EXOTECは2015年にフランスで設立され、7年前からロボットの製造とロボットによる企業への倉庫自動化のソリューション提供を行ってきた」と、EXOTEC NIHON代表取締役の立脇竜氏は語る。「当社の技術は非常にユニークという評判だが、倉庫の自動化システムとしては完成度が高く、実用的で現実的なソリューションを顧客に提供している」。Skypodは既存のシステムと異なり、1つのシステムでB2BとB2Cの両方の注文を効率よく処理することのできるエンド・ツー・エンドのソリューションだ。さらに、顧客へのコンサルから導入、メンテナンスまでを一気通貫で担うことで、顧客のニーズに応えることができる。

EXOTEC NIHON代表取締役の立脇竜氏

Skypod-三次元ロボティクス・ソリューション

EXOTECの主力製品は、全自動三次元ロボット在庫管理・ピッキングソリューション「Skypodシステム」だ。立脇氏によると、「日本にはすでにネットショッピング等、消費者が使いやすい実用的な発注システムが日々進化している。EXOTECの倉庫管理システムはその進化に合わせてパフォーマンスが発揮できるように設計されている」という。Skypodシステムは、さまざまな在庫管理システムと簡単に接続できるため、フランスと日本のエンジニアがすぐにカスタマイズして連携させることが可能だ。

Skypod

また、EXOTECは、倉庫管理の全てがスムーズかつ効率的に動くように、革新的なソフトウエアシステムを開発した。「当社のハードウエアは素晴らしい技術だと自負しているが、それを制御するソフトウエアもまた非常に重要になる。注文は次々と入ってくるため、倉庫内では200台、300台のロボットが常に動き回ることになる。複数のロボットが同じ棚に登っても、ぶつかったり、バックしたりすることなく目的地までたどり着けるよう、ソフトウエアが最適な経路を計算し、ロボットを操縦している。このような高度なオペレーションを提供できる企業はそう多くはない」と立脇氏は語る。

コントロールセンター

Skypodシステムの主な強みとして、迅速なセットアップが可能なこと、注文が入った瞬間に稼働しピッキングステーションに直接商品を持っていけること、ラックとロボットを追加するだけで無限に拡張できること、そして24時間365日機能することなどが挙げられる。「Skypodは複雑なオムニチャネルやeコマースにも柔軟に対応できるように設計されており、オンライン顧客からの直接注文、店舗からの注文、配送先など、複数の選択肢を持つことができる」と立脇氏。電動ラックやシャトルを使った従来のシステムでは、本当の意味で自動化された高効率なパフォーマンスは実現できなかったが、Skypodでは、注文を送るとそれがそのままシステムに届き、2分以内に商品がピッキングされるのだという。

フランス発のユニコーン企業、日本上陸

EXOTECは比較的新しい会社であるにもかかわらず、ビジネスの規模は毎年ほぼ倍増している。すでに評価額は20億ドルを超え、ユニコーン企業の地位を獲得した。どの国のスタートアップ企業もさまざまな問題に直面しており、最初の1年で90%が失敗すると言われている。さらに、成功した企業のうちユニコーンに成長するのはわずか1000社に1社程度だ。 EXOTECは、フランスにおける工業界初のユニコーン企業であり、その成長には、日本でのパートナーシップの成功が大きく影響している。同社が2020年に日本に上陸するきっかけとなったのは、衣料小売り大手のUNIQLOとのパートナーシップ締結だった。その後2021年には、同社の倉庫でSkypodシステムが稼働を開始した。「日本市場に大きな可能性があることは、以前からわかっていた」と立脇氏。「しかし、良いスタート地点に立たなければ、海外企業が参入することは難しい。幸い、Skypodシステムの魅力に引かれて、UNIQLOを展開するファーストリテイリング社との取引を開始することができた。彼らも我々のシステムに非常に満足してくれている」

物流市場に関して、立脇氏はフランスなどと比較して日本には大きな違いがあることを指摘する。「日本市場は、他の先進国と比べると、まだ倉庫のピッキング自動化が進んでいるとは言えない。他の先進国に比べて人件費が安いため、多くの企業が倉庫の自動化に踏み切らず、人手に頼ってきたためだ。ネットスーパーやアパレル、eコマースなどの業界でも、人が歩いて倉庫内を回ってピッキングを行っていた。しかし、2015年から16年にかけて、労働人口の減少が本格的な人手不足を生み出し始め、必要な人材が集まらないことに気づく企業が増えてきた。eコマースが拡大する中、ビジネスを拡大するためには倉庫の自動化が必要不可欠となった。我々にとっては、それがまさにビジネス拡大のチャンスだったと言える。我々のソリューションに適した市場として積極的に参入し、その結果、日本はEXOTECグループの中でも最大の海外拠点となった」と立脇氏は言う。

EXOTECは、ロジスティクスの自動化を検討する企業から大きな注目を集めている。同社は、日本での急成長に対応するために準備を進めているところだ。「来年は100人くらいの人員が必要だと見込んでいる。今年も多くの案件を獲得することができたので、日本でのビジネスの将来は明るい」と立脇氏は語る。実際に、多くの企業からの打診を受けている状況にあるのだという。

また、日本での成功はEXOTEC社内でも誇りになっている。フランスにいるCEOのRomain Moulin氏は、現地メディアから「ロボット技術の代名詞とも言える日本で、なぜEXOTECはビジネスができるのか」とたびたび質問されるそうだ。「日本市場は難しい」と立脇氏は語る。「日本の消費者や顧客は、独自の要求を持ち、品質に対しての要求が非常に高い。また、オートメーション技術やロボット工学の水準も非常に高い。日本市場に適応し、そこから学ぶことで、それらの違いを取り込み、製品に生かすことができるだろうと考えている」。よく、”日本で売れるものは他の市場でも売れる”と言われるが、そうした環境で、同社が認知されつつあることは、非常に大きな意味がある。実際に、2022年12月6日に東京都内にて開催された事業説明会にて、新たに国内家電総合量販店大手のヨドバシカメラとのパートナーシップ締結を発表した。「ヨドバシカメラ様は実店舗に限らず、ウェブサイトでも商品購入のしやすさや配送スピードの速さなどで消費者から高い支持を得ている e コマースの雄であり、複雑なオムニチャネル物流においても威力を発揮する Skypod システムの利点を最大限に生かせると確信している」と立脇氏は手応えを示す。

現地の知識を味方につける:ジェトロの支援

日本への進出は、EUの他の地域に進出したときとは異なる多くの課題をEXOTECに突きつけた。「すぐにでも日本で業務を開始しなければならず時間がなかったので、フランス側からの最初の窓口として日本貿易振興機構(ジェトロ)に連絡し、規制や税制、サービスセンターの設置場所などの情報を提供してもらった」と立脇氏は振り返る。「当時はまだ日本人スタッフがいなかったにもかかわらず、とても親身に対応していただいた。一刻も早くビジネスを立ち上げたいときに、このような組織や何でも聞ける場所があるのは心強かった」。

そこで、日本貿易振興機構(ジェトロ)が、日本にはどのような規制があるか、日本のパートナーに最も重要視される要素は何か、といった重要な情報を提供し、支援を行った。また、ジェトロは、EXOTECに関連するイベントを紹介し、パートナー探しを後押しした。その他、入国審査や海外渡航が厳しく制限されていたパンデミック時、特に困難となったビザ取得に関するオンラインでのサポートや相談を実施するなど、不測の事態にも柔軟に対応し、企業支援を継続した。

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