サクセスストーリー

DLTラボスが実現するサプライチェーンの効率化と社会の発展

DLT Labsは、2017年にカナダで設立され、ブロックチェーンソリューションによって、複雑なサプライチェーンの大規模データ管理の透明性向上など幅広い産業に貢献してきた。シンガポールに営業拠点、インドに研究開発拠点を置き、アフリカでの事業も行うなど、グローバルに事業を展開している。2018年には、日本市場への進出も果たした。日本では、ブロックチェーン技術がサプライチェーンのDX化を促進することに期待されており、政府も後押しする成長可能性の高い分野だ。

今回、DLT LabsのCCOであるFrancis Lalonde氏、同社の日本支社DLTラボスの Business Development Manager であるAndrew Neuman氏に、海外企業が日本のICT市場に進出する意義や、日本におけるブロックチェーン技術の可能性について聞いた。

設立年月
2018
進出先
東京都

  • ICT
  • カナダ

掲載年月 : 2023/05

ブロックチェーン:日本での可能性が高まる技術

日本が経済・社会全体のDXを推し進める中で、ブロックチェーンはビジネス構造を変革させる技術としてIoTやAIと並んで期待されている。ブロックチェーンというと暗号資産を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、ブロックチェーンを活用できる分野は金融に留まらない。ブロックチェーンは、過去から現在に至るまでの取引履歴がネットワーク上で1本の鎖のように保存される仕組みで、ネットワーク上で管理され、すべての取引がネットワークを介して永久に誰にでも見えるオープンな台帳のように機能する。透明性が高く、参加者全員が追跡可能で、改ざんが極めて困難なため、関係者間で共有するデータの信頼性に課題を抱える幅広い産業に適用することができる。

日本では、従業員や製品の安全性やデータの信頼性、環境や人権に配慮した製品・サービスへの関心が高まり、企業にとってサプライチェーンの透明性・信頼性を確保することの重要性はますます増している。しかし、複雑なサプライチェーンを持つ製品の場合、素材の安全性といった品質管理、労働実態など生産環境の管理の難易度は高い。

そのような状況において、サプライチェーン上のデータ管理にブロックチェーン技術を活用することで、複雑なデータ管理や煩雑なシステムのアップデートに悩まされている日本の幅広い産業の業務を効率化し、従来のシステム以上にデータの透明性を向上させた上で、商的流通の管理にイノベーションをもたらすことが期待されている。そのため、ブロックチェーンの技術は日本政府の後押しを受け、この分野での国内での投資が加速している。この商機を捉えた外資系企業の一つに、企業向けブロックチェーンソリューションの世界一のリーダー企業であるDLT Labsがある。

グローバルな成長と日本への進出

DLT Labsは、カナダのオンタリオ州に本拠を置く、産業向けにブロックチェーンの技術開発およびアプリケーション実装を提供する企業だ。2017年に設立され、現在は250名以上の従業員が在籍している。同社は、シンガポールに営業拠点、インドに研究開発拠点を置き、アフリカでの事業も行うなど、グローバルに事業を展開してきた。

同社にとって大きな転換点となったのが、2018年の日本進出だ。海外では既に大手企業へのブロックチェーンソリューションを提供してきたという確かな実績があった同社は、世界第3位の経済大国においても、情報追跡(トレーサビリティ)の強化を求めるニーズの高まりや、調達プロセスの透明性の向上、原材料や食品等のサプライチェーンにおけるデータの追跡等、産業が抱える課題を解決することを目指している。

また日本では、ビジネスのさまざまなワークフローにおいて、紙ベースで行う手動プロセスが残るという特徴も見られ、それらを自動化させたいというニーズも多い。既存のオンラインサービスではセキュリティ上の懸念があることから導入に慎重な企業や自治体もあるが、ブロックチェーン技術を活用することで、電子データの信頼性や安全性を確保できることから、DLT Labsのソリューションによって、日本のサプライチェーンのDX化が一層進むことが期待されている。

DLT Labsによるサプライチェーンの大規模データ管理

ブロックチェーンを利用した分散型台帳ソリューションであるDL Asset Trackによって、DLT Labsがこれまで提供してきたソリューションの一つは、サプライチェーンマネジメントだ。情報、モノ、カネの流れを可視化してボトルネックを排除し、ビジネスをより効率化する。DL Asset Trackを用いることで、変更記録を付けずに削除したり変更したりすることはできず、入力したデータは変更不能なデータとして記録され、すべてのワークフローにおける信頼性を担保できる。DLT LabsのCCOであるFrancis Lalonde氏は、「DL Asset Trackのスマートコントラクトでは、スマートダイナミックデータで複雑なデータを消化することができる。他社にはない深さでのデータ管理が実現でき、分散型台帳と組み合わせることで、結果にかかわらず、双方間で合意したデータであるという信頼性を生み出すことができる」と語る。

さらに、DL Asset Trackは設定の柔軟性があることから、ユーザーはわずかなコーディングをするか、コーディングなしで独自のワークフローやスマートコントラクトを作成することが可能だ。また、追加の作業がほとんど発生しないため正確性も担保できる。スマートコントラクトは開発に時間がかかるとされている中で、この改善の意義は大きい。あるビジネスグループ内でのスモールスタートから企業全体への展開も容易であり、業務スコープ、取引量、ユーザー数に応じた取引価格を設定し、大きなコスト削減と効率化を目指してほんの数カ月でプロジェクトを開始することも可能だ。

児童労働の撲滅を目指すJICAの実証実験においてトレーサビリティシステムを提供

日本支社のDLTラボスは、日本国内におけるブロックチェーンソリューションの提供だけでなく、日本国外でのプロジェクトにも参加し、その認知度をグローバルに広げている。独立行政法人国際協力機構(JICA)が公募した「コートジボワールでのブロックチェーン技術を活用した児童労働防止に係る情報収集・確認調査」事業において、DLTラボスは2021年2月から1年間、調査に協力した。コートジボワールのGDPの10%を占めるカカオ産業では、貧困家庭の児童がカカオの生産に従事しているケースが多く見られる。その中でも児童による危険有害労働を抑制するため、このプロジェクトでは、児童に関わる現地の学校と農家、そして第三者の監視機関であるNGOの協力を得て、同社のブロックチェーン技術を用いて、カカオ農業に関わる児童を見守るシステムを構築した。ここでの経験は、ガーナにおける日本向けのカカオ生産におけるトレーサビリティの向上を目的とする日本の菓子製造大手の株式会社ロッテとの概念実証など、他のプロジェクトにおいても生かされている。

プロジェクトでのワークフローUI

DLT Labsが日本進出を決めた理由

日本市場への進出を決めた理由について、Lalonde氏は改めてこう振り返る。「日本は世界をリードする技術を持つ洗練された経済国であり、絶対に進出しなければならない市場だった。米国を除けば、おそらくナンバー2の市場だ。日本は技術的に非常に成熟しており、技術やその使い方に対する理解も深く、そのような特徴はどの国でも見られるものではない。日本進出は、私たちにとって理にかなった選択だった」と語る。国際ビジネスが一般化すると同時に複雑化する中で、物流管理に関する契約を成立させることは、あらゆる規模の企業にとって重要な優先事項となっており、同社が市場に参入する条件は整っていた。

ジェトロとともに、適切なパートナーを見つける

日本市場への参入は、設立間もないDLT Labsにとって簡単なことではなかった。ロッテのような多国籍企業はもちろんのこと、日本のクライアントと新たな関係を築き、求められる信頼度を高めるには、多大な労力と戦略的アプローチが必要になる。日本貿易振興機構(ジェトロ)は、ジェトロ・シカゴ事務所が北米の現地企業と日系企業のPRやビジネスマッチングのために開催しているテーマ別のピッチイベント「Jconnect Webinar Series」において、7回目のブロックチェーンの回にDLT Labsを登壇者として招へいした。さらに東京でのオフィス開設の際には、ジェトロ対日投資・ビジネスサポートセンターは、不動産紹介や、法規制に関する無償コンサルテーションを行い、補助金やインセンティブに関する有益な情報を提供した。DLTラボスのBusiness Development ManagerであるAndrew Neuman氏は、「支社設立の準備や日本での知名度を上げるためにジェトロの支援を受けたが、このようなサポートを受けることで、進出時に最も重要なクライアントに私たちのブロックチェーンソリューションの利点を理解してもらうというビジネスの根幹に集中することができた。今後も、ジェトロが主催するビジネスマッチングなどのイベントに参加していきたい」と語る。

Business Development Manager
Andrew Neuman氏

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